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日本考古学における方法 [全方位書評]

特集 日本考古学における方法 『考古学ジャーナル』第795号、2024年5月

・総論 泉 拓良:3-5.
・型式論 関根 達人:6-10.
・遺構・層位論の現在 岡田 憲一:11-15.
・機能論 佐藤 宏之:16-19.
・解釈・理論の展開 勅使河原 彰:20-25.

わくわく(期待)しながら読み始めて、がっかり(失望)して読み終わる。

これが、現在2024年における「日本考古学における方法」なのか?
これが、現在2024年における「日本考古学における方法」なのだろう。

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グレーバー&ウェングロウ2023『万物の黎明』 [全方位書評]

デヴィッド・グレーバー、デヴィッド・ウェングロウ(酒井 隆史 訳)2023『万物の黎明 -人類史を根本からくつがえす-』光文社(David Graeber and David Wengrow 2021 The Dawn of Everything. A New History of Humanity, Allen Lane.)

著者の一人グレーバーについては『アナーキスト人類学のための断章』と『グローバル正義のための考古学者たち』を紹介した。訳者の酒井氏については「未開と野蛮の民主主義」を紹介した。
成るべくしてなる、ある意味で最強のタッグである。

「私たちの祖先は、自由で平等な無邪気な存在(ルソー)か、凶暴で戦争好きな存在(ホッブズ)として扱われてきた。そして文明とは、本来の自由を犠牲にする(ルソー)か、あるいは人間の卑しい本能を手なずける(ホッブズ)ことによってのみ達成されると教えられてきた。実はこのような言説は、18世紀、アメリカ大陸の先住民の観察者や知識人たちによる、ヨーロッパ社会への強力な批判に対するバックラッシュとして初めて登場したものなのである。」(腰帯宣伝文より)

確かに私たちもルソーの『不平等起源論』やホッブズの『リヴァイアサン』を読みもせずただ教わり、何となく「そうなのかな」と考えていた。その矛盾する内容の意味については、深く考えることもせずに。
しかし、どうやらそれらは、西洋社会によって周到に考えられてきた「知的な簒奪」のようである。
これは、たしかに「人類史を根本からくつがえす」ことになろう。
西洋(ヨーロッパ社会)におけるルソーとホッブズの占める位置は、日本で考えるよりもはるかに大きなものがあるだろう。だからそれを転倒させるというのは、確かに「革命的」である。

デヴィッド・グレーバーはロンドン・スクール・オブ・エコノミクス人類学教授(2020年逝去)、デヴィッド・ウェングロウはロンドン大学考古学研究所比較考古学教授である。共に、かのチャイルドに関連する職である。

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『中華民国よりの掠奪文化財総目録』 [全方位書評]

外務省特殊財産局 訳 1949*『中華民国よりの掠奪文化財総目録』(中華民国政府教育部 1947あるいは1948*『中国戦時文物損失数量及估価目録』、1991「十五年戦争重要文献シリーズ 第3集」として不二出版より復刻)* 原書および訳本の刊行年は未だに確定していない。

「凡例
一、本目録所載の損失の基礎材料は本会の各区各省事務所が実地調査により得たもの及び公私の機関が個人が申請登記したものに付いて本会に於て厳格に審査した文物損失である。文物に属さないもの及び文物であっても証拠の乏しいものは審査の上、原送付者又は申請人に返戻し或は教育部統計処及び行政院賠償委員会に転送した。
ニ、本目録所載の損失見積価格は、本会が文物専門家及び書籍・骨董業者を招聘して協議決定したもので、何れも表失者の申出価格よりも多大の削減を加えられおり、且行政院の指示に従い各見積価格は戦前の標準に依った。
三、本会は文物の品名及び価値は各々異なり一々列記するは煩瑣に堪えないから、本目録には単に文物の類別及び損失見積価格を地域別に列記して査閲と統計に便ならしめた。
四、本目録は本会の文物損失登記処理弁法第四条に依り日本に賠償を命ずる様、政府に申請するものである。」(適宜言葉を補った)

前回記事「りやく奪財産関係件名一覧」の1949年2月8日に発せられた項目「九八」GHQ/SCAP第386号に添付された資料が本目録である。

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クーン2012『アナキスト サッカー マニュアル』 [全方位書評]

ガブリエル・クーン(甘糟 智子 訳)2012『アナキスト サッカー マニュアル -スタジアムに歓声を、革命にサッカーを-』現代企画室(Gabriel Kuhn 2011 Soccer vs. the State: Tackling Football and Radical Politics. PM Press, Oakland )

目指すところは、ベスト8などではなく、「第2考古学的フットボール」であり、かつ「フットボール的第2考古学」である。
そしてキーワードは、「失われない柔軟性」(148.)であり、「オープン・マインド」(274.)である。

「南米ではサッカーの美しさという側面がもっとも重視された。南米の人々はイタリアの「カテナチオ」や英国の「キック アンド ラン」、ドイツの「カンプフガイスト(闘志)」といったヨーロッパのサッカーとは、身体的に異なるプレースタイルを大きな誇りとするようになった。世間から見ると、ヨーロッパ人はピッチに「仕事」に出かけるが、ラテンアメリカ人は「遊び」に出かけているようにも映る。あるライターは「一般的なイメージでは、ラテンアメリカのサッカーと同義語は、感動やエクスタシー、ファンタジー、自発性や直感、リズムや予測不可能性だ」と書いた。ブラジルの「フッチボール・アルテ(芸術的フットボール)」という考え方にこれが集約されていることは有名だ。左派もまた、そうした特徴の上にサッカーを理解している。アルゼンチンの有名な監督セサル・ルイス・メノッティは、「右派的サッカー」と「左派的サッカー」を区別した。彼によると「右派のサッカー」とは、「結果だけが物を言い、プレーヤーは勝利をもぎ取るためだけに給料をもらう傭兵へと堕落する」もので、「左派のサッカー」は「知性と創造性」を称え「ゲームが祭典であることを欲する。」」(56.)

一般には「南米 vs ヨーロッパ」という構図で捉えがちであるが、実は「ライト vs レフト」あるいは「国家主義 vs 民衆主義」という隠れた対立構図が示唆される。

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寺沢2014「様式論と編年の理論的前提」 [全方位書評]

寺沢 薫 2014「様式論と編年の理論的前提」『弥生時代の年代と交流 -弥生時代政治史研究-』吉川弘文館:100-120.

「「形式」「型式」「様式」の関係やその大別、細別の状況をもう少し具体的にみてみるために、この国のJRの車輛を例にとって説明してみよう。図19は年次を追ったJRの電車とディーゼル動車の変遷を示したものである(久保田 博1979『新しい日本の鉄道』保育社)。横軸には昭和の年号が、縦軸にはそれぞれの車輛の用途が書かれている。(中略) 次にそれぞれの形式を年次を追ってたどっていくと、数字や記号が羅列されているだろう。これが型式に相当すると考えればよい。たとえば、電車という形式の通勤形式の直流形では、昭和31年までには72型電車が使われていたが、32年には101型電車にチェンジされ、昭和37年には新たに103型電車が製造されだしたといった具合だ。そのそれぞれを型式と考えれば、横方向に延びる型式組列と、その分岐・融合のありさまをみることができよう。」(107-109.)

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ボダルト=ベイリー2015『犬将軍』 [全方位書評]

ベアトリス・M・ボダルト=ベイリー(早川 朝子 訳)2015『犬将軍 -綱吉は名君か暴君か-』柏書房(Beatrice M. Bodart-Bailey 2006 THE DOG SHOGUN The Personality and Policies of Tokugawa Tsunayoshi. Univ. of Hawaii Press.)

地表から4m弱の堀の底に立つと、目の前に法面仰角35°、法面長5.7mのローム面が迫って来る。西側法面の真ん中には、千川上水から水を引き入れた導水溝がぽっかりと口を開けている。
閑静な住宅街の地下に眠る周囲1.8kmに及ぶ巨大な御殿堀。水を湛え、要所には櫓が聳える。今では想像もつかない。1698年に構築されて、1713年には埋め戻された。僅か15年ほどの光景であった。

「綱吉の政策が武士にとっては苦痛を与えるものであったことを考慮するならば、史料を読む際には、その性格や書かれた目的についての慎重な考察がなされなくてはならない。このことは十分に厳格な姿勢でもって常に行われてきたとは言えず、そのことに筆者は、綱吉の人格と統治を分析する上で、さらに別の盲点があることを認めている。史料の大半は武士が武士のために書いたもので占められていて、それらは武士の考え方を擁護し反映するものであり、全体主義的な政府の政治的都合により、選択的に保管され編纂されてきたのである。(中略)
武士である筆記者により、「国全体」を苦境に陥れたとして批判された数々の政策は、人口のはるかに多くの部分を占めた庶民にとってはしばしば有益だったのである。」(17.)

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ホッダー2023『絡まり合うモノと人間』 [全方位書評]

イアン・ホッダー(三木 健裕 訳)2023『絡まり合うモノと人間 -関係性の考古学にむけて-』同成社
IAN HODDER 2012 ENTANGLED: An Archaeology of the Relationships between Humans and Things. WILEY-BLACKWELL.

B5版より少し小さいサイズで252ページの原書が、訳本ではA5版で413ページとなっている。
考古学という学問世界の広がりを知るには、最適の一書である。
言い換えれば、自分が今まで考古学だと思い信じ込んできた領域が、いかに狭い世界であったかと思い知ることになる。

「エンタングルメントは人間とモノの間で生じる、正と負の依存の弁証法である。
人間とモノのエンタングルメントにおいて中心となるのは、モノが有する時間性であり、そうした時間性を調整し、順序立てることである。物事は、ある一定の順序で行う必要がある。
エンタングルメントとは、抽象的観念と身体を介した共鳴が混ざり合った存在、すなわち人間の精神と肉体、そしてモノの世界の間で起こった反響である。
エンタングルメントは人間とあらゆるモノの間に生じる。しかし物質としてのモノがたどる物理的プロセスが、罠に陥った状態、粘着性、現実に起こっている無秩序な状態を生み出すことになる。
社会的生活が営まれる物質的条件ではなく、異種混淆なエンタングルメント内の緊張した関係性(罠に陥った状態)こそが、変化の方向性を決定づける。
人間とモノの依存関係は不安定かつ不規則である(人間とモノには生命力があるため)。それによってほどけるというプロセス(触媒作用)が起こり、そのプロセス中では創発現象が生じるとともに、解決法を定めようと探索がなされる。

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『世界史のなかの文化財返還』 [全方位書評]

森本 和男・纐纈 厚・五十嵐 彰 2023『世界史のなかの文化財返還 -未決の植民地主義を超えるために-』中国文化財返還運動を進める会 ブックレット【2】(2023年11月11日 発行 500円)

1 文化財返還の世界の現状(森本 和男:2-35.)
2 帝国日本の生成過程と文化財収奪(纐纈 厚:36-45.)
3 「戦利品」という考え方(五十嵐 彰:46-49.)

「2023年4月22日「中国文化財返還運動を進める会」は、東京都内で「中国からの略奪文化財返還を求める!4・22大集会」を開催しました。このたび、当日の集会内容を元にして、ブックレットとして刊行しました。
当日の集会は、「韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議」世話人の森本和男さんと、本会共同代表の纐纈厚の講演、このお二人に本会共同代表の五十嵐 彰を交えたシンポジウムというプログラムで進められました。今回ブックレットにまとめるにあたり、森本さんには講演を元に時間の制約で充分展開できなかった点も含めて、全面的に改稿した文章をお願いしました。また、シンポジウムでの五十嵐コメントについては、同趣旨の既発表の文章を収録しました(原載・『思想運動』第1067号・2021年8月1日)。」(1.)

ブックレットの入手を希望される方は、以下までご連絡ください。
info@ichinoselaw.com あるいは https://cbunkazaihenkan.com/ の申し込みフォーム。
郵便振替:00120-7-636180(口座名 中国文化財返還運動を進める会)

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2021『採掘 - 採取 ロジスティックス』 [全方位書評]

2021『採掘 - 採取 ロジスティクス -批判地理学の最前線-』(『思想』第1162号、岩波書店)

・過度な採取主義の行方 -資本の構成的外部をめぐる政治-(土佐 弘之)
・採掘 - 採取、ロジスティクス -現代資本主義批判のために-(北川 眞也、箱田 徹)
・多数多様な採取フロンティア -現代資本主義を掘り起こす-
      (サンドロ・メッザードラ、ブレッド・ニールソン [箱田 徹 訳])
・身体 - 領土 -戦場としての身体-(ベロニカ・ガーゴ [石田 智恵 訳])
・採掘主義と家父長制 -現代ラテンアメリカのフェミニズム-(廣瀬 純)
・ロジスティクスによる空間の生産 -インフラストラクチャー、労働、対抗ロジスティクス-
      (北川 眞也、原口 剛)
・ロジスティクスと採掘主義、あるいは「釜ヶ崎=地中海的な空間」をめぐって
      (S. メッザードラ [聞き手・訳 原口、北川])

非常に刺激的な内容である。

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八幡ほか1971『座談会 現代の考古学』 [全方位書評]

伊藤 信雄・大場 磐雄・鏡山 猛・斎藤 忠・杉原 荘介・八幡 一郎 1971『座談会 現代の考古学』学生社

「この座談会を通じて感じられることは、私を含めて明治大正に生れた考古学者の限界のギリギリの線が出されたという点である。われわれは万能でなく、しかも過去の殻を背負っている。出席者はすべて戦前の考古学の洗礼を受け、破局的な戦時を生抜いて、戦後斯学のために縦横の活躍をし、今日の考古学に一つ一つ礎を据えることに貢献した学者たちである。」(八幡 一郎「はしがき」2.)

今は亡き「学生社」。もはや絶版なのだろうか。
私の本棚にある古本の裏表紙には、「100円」のシールが貼られている。

戦後四半世紀を経た、今から半世紀前の「現代の考古学」が語られている。学史である。
「はしがき」の記載年月は、1971年7月である。
1969年10月25日の平安博物館での出来事以来の闘争を契機に、関東考古学連絡協議会が1971年2月から1972年6月まで『全国通信』を発行していた最中である。

「限界のギリギリの線」が、「破局的な戦時を生抜いて、戦後斯学のために縦横の活躍をし」という自画自賛であったとしたら、問う側と問われる側の対話が成り立つはずもないわけである。
誰も「万能」であるなどとは思っていない。ただ「誠実」であれと思っていたはずである。

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タグ:考闘委 学史
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