SSブログ

文化ジェノサイドと文化財 [研究集会]

文化ジェノサイドと文化財(前田 朗)

日時:2023年 6月 18日(日)10:00~12:00
場所:飯田橋駅前RAMLA 10階 東京ボランティア・市民活動センター 会議室A
主催:韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議

1.文化財略奪問題を、日本による朝鮮植民地支配全体の中に位置付ける。同時に世界史における出来事として位置づけ、国際的な返還運動と比較する。
2.朝鮮植民地支配と文化財問題を国際法のレンズを通して見直す。そのためにジェノサイド概念及び文化ジェノサイド概念を確認する。
3.文化ジェノサイド概念を参考に文化財問題を再検証するための視座を設定する。全体をコリアン文化ジェノサイドという視点で考える。
4.翻って、文化ジェノサイドのみならず生物学的物理的ジェノサイドも含めて、近現代日朝関係史をジェノサイドと植民地支配犯罪の視点から問う。(配布資料<報告の趣旨>より)

詳細は、前田2020-12「日本植民地主義をいかに把握するか(六) -文化ジェノサイドを考える-」『さようなら! 福沢 諭吉』第10号:2-25. 「同(七) -コリアン文化ジェノサイド再論-」『同』第11号:2-25.)を参照のこと。

続きを読む


nice!(2)  コメント(1) 
共通テーマ:学問

竹岡2023『考古学研究法』 [全方位書評]

竹岡 俊樹 2023『考古学研究法 -分析から意味論へ-』雄山閣

「旧石器時代研究の基礎は、剥離という物理的現象を観察して、剥離面が人工か否かと、用いられた剥離技術を判別することである。
この「石器を見る」という作業は「方法」の問題ではない。地域も時代も石材の種類も関係がない。そして答えは1つしかない。それが判別できるようになるために研究者は努力している。答えがいくつもあるとすれば、それは研究者の訓練不足によるものである。(中略)
そしてこの「石器を見る」という基礎がなければ、その上に立つあらゆる研究が成り立たない。この基礎を形成することが旧石器時代研究者の努力の85%以上を占める。それがこの学問の宿命である。」(6.)

冒頭で、2009年に発掘されて2014年に考古誌が刊行された島根県砂原の「石器」について述べられている。
砂原の「石器」として示された2点について第1図のキャプションで「人工ではない」「人為ではない」とされている(5.)。
しかしあちら側の補論、例えば上峯 篤史2014「斑晶観察法による「前期旧石器」の再検討」『旧石器考古学』第79号については、本書で何の言及もない。全部ダメか、全部イイかだけではない、ある<もの>はいいが、ある<もの>はダメということもあるだろう。

本書では、こうしたこと(参照すべきことを参照しない)が多いような気がする。最近はやりの「土偶を読む」効果だろうか。
それとも、これも「訓練不足によるもの」なのだろうか。

島根県の砂原も最近目にすることがないが、山形県の富山も最近耳にすることがない(リンク記事参照。砂原は人為か自然かの議論、富山は前期旧石器か縄紋早期かの議論)。
富山は、「石器を見る」という基礎があるのかないのかを考える際に重要である。

続きを読む


タグ:砂原 富山 砂川
nice!(2)  コメント(2) 
共通テーマ:学問

五十嵐2023c「戦利品から略奪財産へ」 [拙文自評]

五十嵐2023c「戦利品から略奪財産へ -文化財返還という問題-」『歴史評論』第879号:60-71.

「「人の<もの>を奪ってはいけない」そして「奪った<もの>は返さなければならない」。これは、誰もが納得できる当たり前の道理である。しかし、こうした道理が通らない場合がある。それは、「人の<もの>を奪ってもよい」場合があるからである。それが「戦利品」である。道理を通すためには、道理が通らない場合とはどのようなことなのかを理解しなければならない。」(62.)

文化財返還とは結局はどれだけ「道理」を通すことができるかという問題、あるいはどこまでも「道理」を通すことに尽きる。
「戦利品」という考え方については、かつて簡単に述べたことがあったが、道理が通らない「戦利品」概念について一度はしっかりとまとめなくてはと考えていたところ、機会を与えて頂いた。

続きを読む


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

五十嵐2023b「近現代考古学と文化財返還運動」 [拙文自評]

五十嵐 2023b「近現代考古学と文化財返還運動 -<もの>と<場>そして自分との関係性-」『韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議年報』第12号:2-3.

最近続けて近現代考古学に関わる展示文化財返還に関わる研究集会に関係したので、両者の相互関係について考えた。

「第2考古学という枠組みの中でも、近現代考古学と文化財返還運動は、大きな領域を占めています。ここでは、一見すると接点がありそうでなさそうな二つの領域について考えます。」(2.)

日本の考古学者の中でも近現代考古学に関わる人は、数少ない。
そうした日本の考古学者の中でも文化財返還に関わる人は、さらに少ない。
だから両者に関わる人は、稀有な存在である(文化財級?)。
だから世にもまれな存在として、両者の関係性については考えておかなければならなかった。

続きを読む


nice!(2)  コメント(1) 
共通テーマ:学問