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日本考古学における方法 [全方位書評]

特集 日本考古学における方法 『考古学ジャーナル』第795号、2024年5月

・総論 泉 拓良:3-5.
・型式論 関根 達人:6-10.
・遺構・層位論の現在 岡田 憲一:11-15.
・機能論 佐藤 宏之:16-19.
・解釈・理論の展開 勅使河原 彰:20-25.

わくわく(期待)しながら読み始めて、がっかり(失望)して読み終わる。

これが、現在2024年における「日本考古学における方法」なのか?
これが、現在2024年における「日本考古学における方法」なのだろう。

「おそらく、これまでの考古学の範囲を超えて、さらに考古学的方法はその利用が拡大すると筆者は考えている。」(泉:5.)

誰かのフレーズを借用すれば「考古学でしかないものは、考古学ですらない」ということになろうか。

「…先史遺物を対象とする空間セリエーションは、傾斜編年を考慮しないことが前提となる。」(関根:9.)

そもそもセリエーションとは一括(共存)における型式組成比を紡錘形に連ねることで、新旧型式変遷の共存(傾斜編年)を示したのではなかったか。

「…各遺構を構成する層単位の連続的な関係ばかりでなく、遺構間などの離散的な層序の関係性をも遺物の論理によって把握し、構造化する方法だととらえ直すことができる。」(岡田:12.)

重複関係を示さない離散遺構間の相互関係(遺構時間)の把握が集落研究の最大の問題である。
それを「遺物の論理によって把握し」とは、いったいどのような方法を意味しているのだろうか?
「遺構・層位論の現在」において「遺構時間と遺物時間の相互関係」はどのように認識されているのだろうか?

「かつての機能論は十分な裏付けのない思念的で全体論的な議論に終始していたが、これからの機能論は、特に化学分析の実例の蓄積といった証拠に基づく科学的な議論が積み重ねられることになると期待している。」(佐藤:19.)

40年前に刊行された同名の論考(岡村 道雄1985「機能論」『岩波講座 日本考古学1』:161-192.)からどれほど新たな知見が得られたのか、特に「馬場壇A遺跡20層上面」における脂肪酸分析や石器使用痕跡分析など「化学分析の実例の蓄積といった証拠に基づく科学的な議論」がどのように積み重ねられて現在に至っているのかという検証作業が欠かせないだろう。

「…日本考古学の時代区分である旧石器時代、縄文時代、弥生時代、古墳時代の四期区分は社会構成体の発展段階とその内部における経済構造の発展の画期という、歴史的内容をもった時代区分として再構成することが、十分に可能であるということである。」(勅使河原:24.)

「社会構成体と生産様式」については、「構造変動の政治経済学」(田村 隆2021『考古学者の思考法』収録)で論じられており、こうした方向性は先週紹介した『万物の黎明』(グレーバー&ウェングロウ2023)に連なるものであり、世界の動向はここで示されたような「社会構成体と生産様式」が単純な対応関係を示すとする硬直した認識の遥か先を行っている。

そもそも500~600頁ほどの論文集ならまだしも、たかだか25頁の枠組みの中で、「日本考古学における方法」などという大仰な特集タイトルを設けること自体に無理があるのではないだろうか。


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