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遺跡問題2023 [遺跡問題]

「港区では、近世(江戸時代)の遺跡については、遺跡の特徴を最も良く示す名称(例えば、遺構等の最も残存状態が良好な時期の遺跡該当地居住者あるいは占有者名、遺跡該当地の土地利用を最も端的に示している名称等)を冠し、遺跡名称としている。また中世以前の遺跡については、遺跡所在地を示す最も適当な地名等を冠し、遺跡名称としている。本遺跡周辺は江戸時代に愛宕下大名小路等と呼ばれ、大名・幕臣屋敷が集中していたことから「愛宕下武家屋敷群」として括り、個々の調査地点に既述の方針に従って遺跡名称を付すこととした。本遺跡は、検出遺構・出土遺物の主体が、陸奥一関藩田村家の屋敷に関連するものであることから、「愛宕下武家屋敷群ー陸奥一関藩田村家屋敷跡遺跡」とした。遺跡番号は「TM181-4」である。」(『愛宕下武家屋敷群 -陸奥一関藩田村家屋敷跡遺跡- 発掘調査報告書』2017「凡例 1.遺跡名称」)

2005年に地中から「X字」状に組んだ地中梁の端部に斜めに樹立する櫓基礎が出現して度肝を抜かれた思い出の地である。

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遺跡情報交換標準の研究 [遺跡問題]

独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所 企画調整部 文化財情報研究室(森本 晋 編集)2019『遺跡情報交換標準の研究 第5版』

「遺跡にはひとつ、ふたつと数えやすいものと、そうでないものとがある。数えると言う行為そのものが正しい行為かどうかはここではひとまず置いておくとしても、比較的計数しやすい遺跡として古墳や窯がある一方、集落などでは計数が困難な場合がある。古墳は1基1基を独立した存在として扱うことが多いのに、方形周溝墓はまとめてひとつの遺跡とすることが多い。盛土を有する墓という形態は類似しているが、現地表面で認識しやすいかどうかや研究史から扱いに差があるのであろう。
旧石器時代、縄文時代の墓は単独で検出されない限り周辺の遺構と合わせて1件の遺跡として扱う。
弥生時代の墓は墳丘の有無だけではなく、立地などから独立性が高いものを1件として取り扱い、その他のものは周辺の遺構と合わせて1件の遺跡とする。
古墳の計数は通常、墳丘をひとつの単位としており、主体部ごとに別の遺跡とすることはない。問題が生じるのは、埋葬が墳丘外に行われる場合である。周溝内であれば、周溝のその部分がどの古墳に属するのかを決定して、独立して扱わない。単独で墓が形成されている場合は、対象となる墓や周囲の古墳などをカバーする古墳群ないし遺跡を定義し、その要素として扱う。古墳群を定義するとそれは後述の「集合」の扱いであるから、遺跡を定義したときとは構造が異なる。古墳群内の要素たる個別の遺跡として、古墳以外の要素を暗黙で意味すると解釈するのも一案である。横穴は個々の横穴を1件の遺跡として扱う。
奈良時代以降の墓については、独立して形成されているものは1件の遺跡とし、集合しているものは全体を1件の遺跡として扱う。やぐらについても横穴と同様にできるだけひとつひとつの単位を1件の遺跡として扱うべきであろう。」(6-7.)

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<遺跡>問答 [遺跡問題]

A:考古誌、一般には発掘した成果を報告する刊行物なので「報告書」と呼ばれている書物なんだけど、その多くの書名は「〇〇遺跡」となっているのは、なぜなんだろう?
B:そんなアホなことを考えているのは、あんたぐらいだろう。
A:そうだろうか?
B:そうだよ。当たり前だろ。「遺跡」とされているところを掘って、出てきた物を報告しているんだから、「〇〇遺跡」の報告書なんだよ。

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境<遺跡>問題 [遺跡問題]

富山県朝日町の翡翠や蛇紋岩を用いた石器の製作工程を明らかにした「境遺跡」ではない。
正確には「行政境界を含むあるいは接する<遺跡>問題」となろうか。
第2考古学の主要な部分を占める<遺跡>問題の一分野である。

私の数少ない発掘調査経験の中でも、そうした事柄に接触したことが2度ほどあった。
であるからして、全ての「遺跡」と称されている「包蔵地」における境<遺跡>の占める割合は1割(10%)とまではいかなくても、1分(1%)ぐらいは占めているのではないだろうか?

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埋蔵と包蔵はどう違うのか(下) [遺跡問題]

「九十二条第一項では埋蔵文化財について、「土地に埋蔵されている文化財(以下、埋蔵文化財という)」と記し、分類をせず包括的に扱っている。土木工事に伴う届出を規定している九十三条第一項では、「貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地」と若干の例示を加えている。」(高橋一夫2007「埋蔵文化財としての遺跡」『考古学ハンドブック』:34.)

こうした文章で読者に伝えようと意図していることは、何なのだろうか。
「埋蔵文化財」すなわち「土地に埋蔵されている文化財」である(92条)。
「包蔵地」すなわち「埋蔵文化財を包蔵する土地」である(93条)。
両者を掛け合わせると
「包蔵地」すなわち「土地に埋蔵されている文化財を包蔵する土地」である。
まず「土地」があって次に「埋蔵」されている「文化財」があってさらにこれを「包蔵」する「土地」がある。
上から読んでも、下から読んでもといった「山本山」みたいな文章である。
そして判らないのは「埋蔵」と「包蔵」の違いである。

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埋蔵と包蔵はどう違うのか(上) [遺跡問題]

「埋蔵文化財は、大局すれば遺跡と遺物とに分けられる。
遺跡は、過去の人々の痕跡をなしている土地および土地と一体をなしている諸地物を指し、遺物は、過去の人々の所産のうち通常土地から切り離して、いわば動産として扱われるものである。しかし、遺跡と遺物の区分はそれほど本来的なものではなく、遺跡の中には遺物がいっしょに存在しているのが通常であるし、遺跡と考えられるものも調査による解体等によって個々の遺物に姿や性質を変えてしまうものもある。
通常の用法としての「遺跡」という言葉は、これらの文化財(法第二条にいう遺跡や有形文化財)が所在している土地を指して使われることが多いのであるが、文化財保護法の埋蔵文化財の章においては、「遺跡」は、むしろ通常の用法における「遺構」に近いものを指している。」(和田勝彦1979「文化財保護制度概説」『文化財保護の実務(上)』柏書房:第三 文化財保護法 第五章 埋蔵文化財 一 埋蔵文化財およびその保護制度の沿革 (一)埋蔵文化財の性格:137.)

「文化財保護法の埋蔵文化財の章においては、「遺跡」は、むしろ通常の用法における「遺構」に近いものを指している」という文章のみを切り取って読めば「ギョッ」とするが(文化財保護法の「遺跡」には「遺物」は含まれないのか?とか)、全体を読めば何のことはない、「埋蔵文化財」は土地と一体である「遺跡」と動産である「遺物」からなり、この「遺跡」を「通常の用法における「遺構」」に置き換えれば、埋蔵文化財は「遺物」と「遺構」からなり、これは通常の用法における「遺跡」に相当する訳である。何やらトンチ話しのようである。

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「包蔵地」という用語 [遺跡問題]

『日本考古学事典』(田中・佐原編2002)というのがある。
「包蔵地」という用語を引いてみよう。
「包蔵地 →埋蔵文化財」(805.)
「埋蔵文化財」という項目で「包蔵地」に関係する箇所を見てみる。
「文保法では「埋蔵文化財を包蔵する土地」を埋蔵文化財包蔵地(以下、包蔵地という)と呼んでいる。これは考古学でいう*遺跡にほぼあたる。」(田中2002:824.)
それでは「遺跡」の箇所では、どうだろうか。
「文化財保護法の埋蔵文化財包蔵地は考古学でいう遺跡にほぼ相当するが、その史跡は遺跡に加えて当初の機能をなお保持している寺院・家屋・墓地などをあわせたものであり、また、同法にある遺跡は考古学でいう遺構に近い意味になる。」(田中2002:35.)

こうした理解、すなわち「考古学でいう遺跡を文化財保護法という法律用語(行政用語)では包蔵地と呼んでいる」というのが、「包蔵地」という用語の一般的な用法だと思い込んでいた。
ところが、ある人から「包蔵地」という用語の異なる用法を教わった。

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<遺跡>の存立基盤とは [遺跡問題]

近くの小学校で行われた「作品展」なるイベントに出かけたことがあった。会場の一角には、「遺跡」と題された作品群があった。概ね崩れかけた家屋やピラミッドのようなものに砂やら泥をこすりつけたようなイメージで構成されていた。これが私たちの抱いている一般的な<遺跡>イメージなのであろう。ある複雑な思いをもって、そうした作品を鑑賞することになった。

何故か。
それは、私たちが<遺跡>問題を通じて、「<遺跡>の本質的な無根拠さ」を確認してしまったからである。
そしてその結果として、私たちの<遺跡>に関する「常識は効力」を失ってしまっているからである。

それでは、そうした<遺跡>なるものは、いったいどのような存在なのだろうか?
そして、今後どのようなものとしてイメージされていくのだろうか?

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<遺跡>問題の社会学的根拠 [遺跡問題]

「そうだとすれば、われわれは別の方法に賭けてみよう。<性>を再生産する正当化―フィードバックというループを、内部から瓦解させること。具体的には、次々に持ちだされる正当化の根拠に対して、どうしてそれが根拠になるのかを、あくまでも問い続けるのだ。 (中略)
男が稼ぎ、女が家庭を守るべしとされているのはなぜか。
それは、そう決まっているからだ。
それじゃ説明にならない、そうした規範の根拠を問うているのだ。
それは……それが伝統であり、男女の生まれつきの性質に適ったやり方だからだ。
ならばさらに問う、なぜ伝統に従わなければならないのか、生まれつきの性質に従わなければならないのか。
それは……それはあたりまえのことではないのか。そんなことに疑問を持つ方がおかしい……。
これはもはや問いに対する不十分な解答でさえなく、問いそのものの否定にすぎない。
日常世界に流通する常識の根拠を問い続ける思考は、いずれそのような壁にぶつかるはずである。そのように、次々に重ねられる問いに対して、常識の擁護者たちがもはやそれ以上の答えを返せなくなるとき……そのとき、はじめは堅固にみえた行為の正当化の根拠は、実はそれ自体が人々のつくりだした観念にすぎないこと―そのような意味での根拠を<根拠>と書くことにしよう―があらわになるだろう。」(加藤秀一1996『性現象論』:12-13.)

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<遺跡>問題現況 [遺跡問題]

「線引きのことは、文化庁の通達による指導で出てきましたけれども、しっかりとした根拠なしでやることはできない。根拠なしでやるのは行政の実行段階でのまずさということになります。埋蔵文化財の性質・宿命として、埋まっているから普段は見えないので調べないとその範囲がよく分からないという包蔵地と既に範囲などがよく分かっている包蔵地が出てしまいます。その場合でも分からないから適当に線を引いておけばいいということは今後はますます許されなくなっていくでしょう。情報公開もそうだろうし、アカウンタビリティ、説明責任もそうです。「どういう根拠でこの線をこう引いたの?」と聞かれたら答えなければいけない。「私の考古学的な知見によれば、ここで遺構が出たらここまで続くはずである」とか「台地はここまで行ってるんだから、ここで遺構がでたら、この台地の外れまで入れるのが考古学の常識だ」ということが説明責任として許されるかどうか。たぶんそんな主観的な根拠ではダメです。」(和田勝彦2006「周知の埋蔵文化財包蔵地の特定について」『埋蔵文化財行政研究会 研究発表論集』第10集:15)

「考古学の常識」とは、「ここで遺構が出たら、あそこまで続くはずだ」といった事柄だけではないはずである。

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