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文化ジェノサイドと文化財 [研究集会]

文化ジェノサイドと文化財(前田 朗)

日時:2023年 6月 18日(日)10:00~12:00
場所:飯田橋駅前RAMLA 10階 東京ボランティア・市民活動センター 会議室A
主催:韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議

1.文化財略奪問題を、日本による朝鮮植民地支配全体の中に位置付ける。同時に世界史における出来事として位置づけ、国際的な返還運動と比較する。
2.朝鮮植民地支配と文化財問題を国際法のレンズを通して見直す。そのためにジェノサイド概念及び文化ジェノサイド概念を確認する。
3.文化ジェノサイド概念を参考に文化財問題を再検証するための視座を設定する。全体をコリアン文化ジェノサイドという視点で考える。
4.翻って、文化ジェノサイドのみならず生物学的物理的ジェノサイドも含めて、近現代日朝関係史をジェノサイドと植民地支配犯罪の視点から問う。(配布資料<報告の趣旨>より)

詳細は、前田2020-12「日本植民地主義をいかに把握するか(六) -文化ジェノサイドを考える-」『さようなら! 福沢 諭吉』第10号:2-25. 「同(七) -コリアン文化ジェノサイド再論-」『同』第11号:2-25.)を参照のこと。

講演者は、法学(国際刑法)および人権論の専門で、最近では名古屋市で開催された市民討論会における差別発言に関するコメントが紹介されている。

講演では、ラファエル・レムキン1944から、1948国連ジェノサイド条約、国際刑事裁判所規程、エドワード・ラック『文化ジェノサイドと文化遺産の保護』など文化ジェノサイドを巡る議論が紹介された。

そしてコリアン文化ジェノサイドが述べられる。
「第1に朝鮮半島における植民地支配下の文化ジェノサイド(植民地統治における文化政策の全体)、第2に植民地支配下の朝鮮半島から日本への文化財の略奪・移転・売買、第3に宗主国日本における朝鮮人管理政策、第4に解放後の在日朝鮮人に対する処遇である。朝鮮半島における植民地ジェノサイドの全体像を念頭に置きながら文化政治を一瞥すれば、それがコリアン文化ジェノサイドの一局面であったことは容易に理解できる。教育政策、言論出版政策、宗教政策の隅々に至るまで親日派の形成、すなわち「朝鮮人の帝国臣民化」=「日本人化」が追究された。
こうした背景の下で朝鮮文化の変質や略奪が進行したがゆえに、略奪文化財問題がコリアン文化ジェノサイド論の主たるフィールドとなるのである。」(配布資料:7.)

最近、ある法学者が記した文化財返還に関する論文を読んで、その余りの反動的な立ち位置に辟易として、法学界全体に対する不信感を抱きかけていた時に、こうしたジェノサイド論を知ることができて安堵した。

「大日本帝国の「臣民」から日本国の「国民」として「主権」の担い手になったはずの日本人は果たして、法=権利=運動の主体として何を成してきただろうか。本稿冒頭に紹介したように、関東大震災ジェノサイドに関する国会質問は100年目の出来事であった。
100年の空白 --このことを私たちはどう受け止めるべきだろうか。」(配布資料:8.)



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五十嵐彰

「収蔵時点で不法、不正な点がないことを確認しています。したがって(そのような)文化財は存在しないものと認識しています。」(東博を運営する国立文化財機構)『日本経済新聞』2023年6月30日「文化:略奪文化財のいま⑤」:38.
半世紀前に見えていなかった「傷」について、半世紀にわたる様々な成果を踏まえて改めて問われた際のコメントです。多くのひとの努力により様々な人たちの権利が回復しつつあるポストコロニアルな時代を迎えているにも関わらず、相変わらず「私には見えません」と表情はこわ張ったままです。
このまま行くと「本土決戦」「一億玉砕」です。
by 五十嵐彰 (2023-06-30 19:55) 

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