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中国文化財返還運動を進める会11・11集会 [研究集会]

中国文化財返還運動を進める会 11・11集会
日時:2023年11月11日(土)14:00~17:00
場所:日比谷図書文化館 4階 スタジオプラス(小ホール)千代田区日比谷公園1-4

「私たちは、行きたいと思う所には、自由に行けると考えています。見たいと思う<もの>も、自由に見ることができると考えています。しかし、実は自由に行くことができない場所があり、自由に見ることができない<もの>があります。その内の一つが、皇居であり、皇居にある「唐碑」あるいは「鴻臚井碑」と呼ばれている中国由来の巨大な自然石に文字を刻んだ文化財です。日露戦争後に旅順から皇居に運ばれました。
「鴻臚井碑」は、現在「国有財産」とされていますが、国の主権者である国民も、国民の代表者である国会議員も見ることができません。
日本が対外戦争の度ごとに得た「戦利品」は、選りすぐりの逸品(ベスト オブ ベスト)が天皇に献上されて、皇居の「御府」と呼ばれる収蔵庫に収められました。「鴻臚井碑」も、その一つです。
なぜこのような<もの>が、このような場所にあるのでしょうか?
今回の講演では、こうした疑問を解くために、「御府」について『天皇の戦争宝庫』と題して一書をまとめられた井上 亮さんにお願いいたしました。」(集会案内チラシより)

講演:「知られざる皇居の慰霊施設『御府』」井上 亮(日本経済新聞社)
「昭和天皇の戦争責任は、デリケートな問題だった。天皇を戦争責任から切り離すため、天皇=平和主義者というイメージ作りが行われていく。「軍国主義的遺物」である御府が皇居のなかに残留していることは不都合なことだった。明治以降の戦利品・記念品を含めて、すべては消去されねばならなかったのだ。」(井上2017『天皇の戦争宝庫 -知られざる皇居の靖国「御府」-』ちくま新書1271:209.)

しかし「すべて」が消去された訳ではなかった。消去されずに現存している<もの>の一つが「鴻臚井碑」である(同書:98.)。すなわち「鴻臚井碑」はいまなお残留していること自体が「不都合なこと」であるはずである。所蔵者にとって「不都合な」はずの<もの>を返して欲しいと求めている人たちに「不都合な」<もの>を返すことができないのはなぜだろうか? いつから「不都合な」はずの<もの>は、「不都合」でない<もの>に変容したのだろうか? そしてその変容の要因は?

質疑応答
会場参加者からの質問用紙に基づく応答と共に、オンラインで視聴した中国(北京・上海・大連・旅順・海城)からの質問をスマホから読み取り、日本語に訳して、応答をさらに中国語に訳して伝えるという作業が繰り返された。

訪中報告:「訪問団の概略について」新 孝一(進める会 理事)
     「三学寺狛犬をめぐって」東海林 次男(進める会 共同代表)
2023年8月12日から18日にかけて「進める会」有志7名によってなされた現地(海城・瀋陽・旅順・大連)調査と市民交流および帰国後に新たに判明した事柄などの報告がなされた。

中国からのアピール
・劉 勇(大連唐鴻臚井碑刻石記念館 副館長)
「世界の潮流に順応し、率先して文化財の返還に取り組むことこそが、日本政府に求められるべき姿です。」

・孫 彦華(旅順唐鴻臚井刻石記念館 館長)
「法律論から見ると、第二次世界大戦の戦勝国の国民として、中国人は、中国の国宝であるこの石碑が戦利品として日本の皇居に隠されることを受け入れません。そして私たちは日本政府と皇居に強く求めます。この国宝をもとの場所、旅順に返還してほしいです。」

・姫 巍(大連市民唐鴻臚井刻石追討714志願会 発起人)
「来年は、石碑設立1310年の記念日です。我々「大連市民714有志の会」はさらに努力し、日本の500人の議員に唐碑返還を呼びかける手紙を出すこと、映画とテレビドラマを撮影すること、芸術文化製作展を開催することなど、様々な活動を行い返還活動を推進していきます。」

・姜 学東(遼寧省海城市善医堂石獅子追討後援会 常務副秘書長)
「海城市三学寺の文化財である石獅子を一日も早く戻すように日本政府に強く呼びかけます。なぜならば市民が、市民こそが歴史の創造者であり、石獅子が中国海城の所有であることは国際法に公認されている争えない事実だからです。いわゆる「仁者は擾らず」とは、仁者の政府は公共心を持ち、私欲を捨て、得失を患わずにすれば、大同世界に達することができるとのことです。歴史を直視できない民族は、先を見通すことができず、反省できない人間は他人から尊重されることはないでしょう。剣を溶かして、犂にすれば、過去を水に流すことができるが、過ちを認めないのは、横暴でしかありません。」

・童 増(中国民間対日賠償請求連合会 会長)
「今から見ると、これまで両国の有識者の間で築いた架け橋と友情は、中国で着実に広まっています。今後もお互いに協力し、多くの分野で日本側と連携し、特に中国から奪われた文化財の返還を求める運動に力を入れて必ず実現できると信じています。」

研究集会直前に中国側現地の関係者からのアピール要請を受けて、殆ど徹夜に近い作業を経て、それぞれ3分の動画編集と日本語字幕、A4版9枚の日本語文配布資料が作成された。動画と配布資料を通じて、改めて現地の人たちの熱い思いを知ることができた。
それに対して、中国からの思いを込めた要請文に対して一片の応答すらせずに無視を決め込んでいる「鴻臚井碑」の管理組織(宮内庁)との落差はどうだろうか。

「歴史を直視できない民族は、先を見通すことができない」と言われて、返す言葉がない。
一つ一つ石を積み上げるしかない。


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