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時津2007「考古学における嘘」 [捏造問題]

時津 裕子 2007「考古学における嘘」『現代のエスプリ』第481号:128-140.

「この事件(旧石器捏造事件:引用者)のなにが世間を驚かせたかといえば、ポイントは次の二点に集約されると思われる。
① 考古学(学問)に携わる者が世間を欺く嘘をついたこと
② その嘘を考古学者たちが見過ごしたこと、あるいは彼らがまんまと騙されたこと」(128.)

「嘘の臨床、嘘の現場」と題する特集号における「捏造と研究の倫理」という項目に収められた論考である。
①は言わば嘘をついた当事者、②はその嘘を見抜くことができず見過ごした多数者に関わることである。
第2考古学としては、当然のことながら後者の傍観者責任を問うこととなる。

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2000「興奮対談 秩父原人に出遭った日」 [捏造問題]

栗島 義明・藤村 新一2000「興奮対談 秩父原人に出遭った日」『正論』第333号:250-260.

【リード文】
埼玉県秩父市郊外の尾田蒔丘陵の小鹿坂遺跡から石器三十点とともに見つかった生活遺構は、約五十万年前(前期旧石器時代)の原人の住居跡の可能性が高い。そうだとすれば、有名な北京原人よりさらに年代をさかのぼる世界最古の、しかも原人は洞窟で生活していたという定説を覆す人類学史上の大発見だ。遺構を発掘した名コンビがその興奮を語る。

「  やりましたね。秩父で発掘調査を行うきっかけはどんなことから…
藤村 栗島さんは十年ぐらい前から秩父で調査を続けているのですが、以前、東北の遺跡の見学に来たとき、「手伝ってくれないか」と頼まれたんです。秩父には古くていい土があるという話でした。昨年五月、埼玉県埋蔵文化財調査事業団で東北の旧石器について話をする機会があり、「秩父に行こう」と誘われまして「まあいいかな」と思って、秩父に行ったんです。」(250.)

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タグ:発掘 捏造
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山口2000「気になる道具たち 石器」 [捏造問題]

山口 昌伴 2000「気になる道具たち 石器」『道具学会 News』第13号:1.(2007『道具学への招待』道具学叢書001、企画・編集 道具学叢書委員会:172-173.に収録)

考古学の隣接学問である道具学会を牽引した研究者による捏造事件発覚直後のコメントである。

「…危惧すべきは考古学マニアの陥りがちな「石器」への偏執に似た轍が、道具学にもおおいにありうる、という事である。考古学界から広く一般に及ぶ「石器への偏執」という背景があったればこそ、根はマジメだった考古学徒が「神の手」を借りてしまった。そうした「学問の対象」への偏執の弊害が、学問そのものの体質に及ぶ事が、道具の学においてもおおいに危惧されるものである。」

「神の手」を借りるに至ったのは、「神の手」を「借りる」側の事情も多分に作用していたはずである。

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「前・中期旧石器捏造から20年」 [捏造問題]

「前・中期旧石器捏造から20年」と題する特集(『考古学ジャーナル』第730号、2019年9月号)が刊行された。正確には「捏造発覚から20年」ということだろう。それにしても、あちこち、分からないことだらけである。

「まずは、座散乱木グループによる論争決着宣言を撤回する必要がある。」(安蒜 政雄「日本旧石器時代の論争と捏造」:1.)
誰が、どこで、どのように撤回するのだろうか? なんのために? 
そのようなことは、すでに周知の事柄ではないだろうか?

「その意味で、論争の争点は、中期の存否だ。」(同)
ほんとうにそうなのだろうか?

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矢島2018「旧石器遺跡捏造問題」 [捏造問題]

矢島 國雄 2018 「旧石器遺跡捏造問題」『日本考古学』第47号、設立70周年特集号 日本考古学と日本考古学協会1999~2018年:9-14.

「問題の発端は、2000年11月5日の毎日新聞の報道で、東北旧石器文化研究所(理事長:鎌田俊昭)が行っていた宮城県上高森の発掘調査における藤村新一の捏造現場のスクープだった。その後の検証調査で、藤村新一がかかわった座散乱木以来のほぼ全てにおいて捏造が行われていたことが確認された大事件であった。」(9.)

自らも深く関わった全国的な学会組織が、設立70周年を記念する事業の一環として「最も衝撃的な出来事」(谷川章雄2018「総説 -転換期を迎えた日本考古学と日本考古学協会-」:3.)として発覚後18年目に記された文章である。

「関係者との面談、特に藤村との面談を通じて座散乱木以来の全ての前中期旧石器遺跡が捏造の産物であることがはっきりする。」(12.)

「ほぼ全て」なのか「全て」なのか? その違いは、思っている以上に大きい。

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富山遺跡(曲解・変遷) [捏造問題]

「2002年の10月23日、筆者はパリの古人類研究所にド・リュムレイ教授を訪ね、久闊を謝すると共に日本旧石器研究についての意見を交換する機会をもつことができた(図6 ド・リュムレイ教授と芹沢)。旧石器時代遺跡の年代決定について、私の場合はまずその遺跡を基盤まで掘り下げて層序を確認し、地質学上の位置を専門家に決定してもらい、最後に物理学的方法による年代測定を依頼する。たとえば星野遺跡の場合などは、36年かかったことになるという筆者自身の経緯を聞いていただいたあとで、次のような質問をしたのであった。それは、最近、日本の若い研究者の中には、旧石器時代の遺跡の年代はタイポロジーだけで決定できるという考えをもつ者がいる。たとえば、山形県の富山遺跡の場合には、発見された石器の形がフランスのテラ・アマタ遺跡の石器と共通する特色をもっているから、富山遺跡の年代はテラ・アマタと同じく約30万年前と考えられると主張している。
しかしながら富山遺跡の石器出土層は層位による年代測定が困難であるといわれており、年代測定によってもまだ好結果は得られていない。それでもなお、石器のタイポロジーから年代を決定するという考え方についてどう思われるか、という筆者の質問に対して、しばらく教授は考えておられたが、テラ・アマタと日本の遺跡とは今でこそ航空機に乗れば12時間で行けるが、旧石器時代の人間がテラ・アマタから日本まで歩いて行ける筈はないし、中間地帯のことを考えても、そのような年代決定の方法は全くありえないことだ、と強い調子で答えられた。そしてそのあと、そのようなことを言っているのは一体誰か、と訊ねられた。個人名を出すつもりはなかったので返事をためらっていると、繰り返して3度聞かれたので、それは竹岡俊樹という人物だと答えた。すると教授は「その人の論文は読んだことがあります、しかしただそれだけのことです。」と首を左右に振りながら言われたのであった。」(芹沢 長介2003「前期旧石器研究40年」『考古学ジャーナル』第503号:13.)

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富山遺跡(研究史・研究姿勢) [捏造問題]

ある主題について研究を進める上で、手順というものがあるだろう。
ある<遺跡>について論じる場合にも、求められるやり方というものがあるだろう。

1998年に山形県埋蔵文化財センターは、『富山遺跡発掘調査報告書』を刊行した。
これは日本の旧石器時代遺跡について、公的機関が「前期旧石器時代でもそう新しくない段階」「実年代では約30万年前ころに相当する」(126.)と結論付けた数少ない報告である。
こうした評価を巡って、論争が行われている。

A:必須文献(富山遺跡を論じるうえで、目を通しておかなければならない文献)
まずは前期旧石器なのか縄紋なのか、真っ二つに分かれている富山遺跡を主題とした文章群を読まなければならない。特に、ある論に対する反論が提出されている場合には、どの部分がどのように論じられて、それがどのように反論されているかを確かめながら、順次論の展開を確認する必要がある。
*竹岡 俊樹1998「富山遺跡Ⅱ3G層出土の石器文化」『富山遺跡発掘調査報告書』付編:1-9.
*阿部 祥人2000「富山遺跡の「前期旧石器時代」説 批判」『山形考古』第6巻 第4号:23-32.
*竹岡 俊樹2001「石器真偽判定「前期旧石器」観察記」『SCIENCE OF HUMANITY BENSEI』第34号:148-175.
*阿部 祥人2004「富山遺跡の「前期旧石器時代」説をめぐって -竹岡俊樹氏の反論にこたえる-」『山下秀樹氏追悼考古論集』:9-14.
*竹岡 俊樹2005「山形県寒河江市 富山遺跡」『前期旧石器時代の型式学』学生社:8-44.
*竹岡 俊樹2014「批判の仕方 -富山遺跡について-」『考古学崩壊』勉誠出版:224-233.

これら論争当事者の文献は、いずれも富山遺跡の評価を定めるうえで欠かせないものであり、「どうでもよかった」などといって済ませられる性格のものではないだろう。ましてや論争の当事者にとっては。

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富山遺跡(承前・年代測定) [捏造問題]

竹岡俊樹2014『考古学崩壊』の「批判の仕方 -富山遺跡について-」(224-233.)と題された箇所は、阿部祥人2004「富山遺跡の「前期旧石器時代」説をめぐって -竹岡俊樹氏の反論にこたえる-」と題する自らに向けて発せられたメッセージを読むことなく執筆されたことが、本人によって明らかにされた。その理由は、「阿部氏の批判などどうでもよかった」というものである。学問研究をなす者としての基本的な姿勢に問題を感じる。
また同書中の「阿部は実際の資料を見ていない」(竹岡2014:232.)という文章は、実は「石器を見る力のない者が実際に石器を見てもそれは見たことにはならない」ということを意味するらしい。あきれ果てた。これでは、氏を相手に「まっとうな議論や論争がなされたことがない」(232.)というのも頷ける。

第4章「捏造発覚後の研究者たちの意見」(121-123.)では、岡村道雄2001「日本列島の前期・中期旧石器研究の展望」『検証 日本の前期旧石器』春成秀爾編、学生社:45-62.がやや詳しく紹介されている。所謂「岡村8条件」である。なお竹岡2014:123.では、更に「砕片の出土」が加わり「9条件」となっている。

「岡村がシンポジウムでこの発表をした、2001年1月(本の出版は5月)当時では、岡村の反論は説得力を持ち、多くの研究者たちが納得した。しかし、結局、藤村が石器を埋めた円形の分布の範囲内だけからナウマン象などの動物由来の脂肪酸が検出され、その分布の中心に炉があったことになる。岡村が根拠としたこれらの「科学」とは何だったのだろうか。」(竹岡2014:123-124.)

こうした文章に引き続いて記されているのが、「使用痕」、「脂肪酸分析」、そして問題の「年代測定」についてである。

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捏造(プラシーボ) [捏造問題]

「芹沢 杉原先生がこういうものを疑うのは金木でこりているのです。(笑)
 杉原 いや、いいこり方をしたと思っています。
 芹沢 「羹(あつもの)にこりて膾(なます)を吹く」です。(笑)
 加藤 たしかに金木は私たちにいろいろなことを教えてくれます。
 杉原 わりあいに初歩の段階でぶつかったものですから。
 芹沢 それ以来、もうこういうことをやらないのです。(笑)」
(『シンポジウム 日本旧石器時代の考古学』1977、学生社:193.)

今から37年前の1974年6月に交わされた会話である。短いやり取りの中で3回も出てくる(笑)という表現記号から、発言者の心理状態、発言した際の微妙なニュアンス、発言を投げかけられた側の表情までもが目に浮かぶ、ある意味で極めてモニュメンタルな一場面である。

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最古の心性 [捏造問題]

本日は、発覚9周年の記念日である。

振り返るべき定点は、本ブログでも何度か言及した(【2005-10-01、2007-10-15】)岡村リスト(岡村1987「前期旧石器研究の到達点」)である。
私たちに課題として残されているのが非藤村資料18石器群の扱いなのだが、さて現状での位置づけは?

「現在の日本列島には「捏造遺跡」を除いても、後期旧石器時代を遡る可能性を有する遺跡が20ヵ所程度確認・報告されている。それらの様相について、現段階で判明している限りの情報にもとづき、暫定的に配列したのが表1である。いずれの遺跡も確定的な位置づけを有しているわけではないが、可能性を積極的に評価している。」(佐藤宏之2006「遺跡立地からみた日本列島の中期/後期旧石器時代の生業の変化」『生業の考古学』同成社:17.)

岡村リストと20年後の佐藤リストを比較検討することに、何らかの意義を認めることができるだろう。

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タグ:前期旧石器
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