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ヴィーナスの呪い [石器研究]

「ヴィーナス・ライン う″ぃーなす・らいん Venus line ヴィーナス曲線ともいう。礫群と石製遺物との出土深度の関係を分布曲線にあらわしたもの。神奈川県月見野遺跡群の調査で最初に注目された。礫群周辺の石製遺物の出土レベルを数量ごとに垂直分布図に表した場合、石製遺物は礫群の下面から5~10cm上に出土量のピークが認められるのに対し、礫群の下方では急速に減少する。こうした出土量と出土レベルの関係が図上では特徴的な曲線で示されるので「月見野ヴィーナス曲線」と呼称された。1つの生活面に残された石製遺物が特定のレベルに集中する現象は一般的なもので、複数の集中部の分離や生活面の判定に有効な手段となる。」
(絹川一徳2000「ヴィーナス・ライン」『旧石器考古学辞典』:11-12.)

 「ヴィーナス・ライン」で検索かけても、「信州ビーナスライン」とかエステ関連商品などしか引っ掛からないのだが・・・
これは、本当に正式のそして公認の「学術用語」(techinical term)なのだろうか?
個人的には、到底、承認し難いのだが・・・

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母岩識別研究の現状(続) [石器研究]

「まず、最初に、吉岡遺跡群の搬出入品リストをみておこう。区分されている36個体の「母岩別資料」は、類型A=7個体、類型B=9個体、類型C=20個体に類別できそうである(表2)」(安蒜2006「旧石器時代の集落構成と遺跡の連鎖」:p.72)

ということで、表2(p.73上段)に「吉岡遺跡群B区遺物群Ⅳ石器集中1の「母石別資料」(ママ)分類表」が掲載されている。

早速、作成元のデータ(「第6表 遺物群Ⅳ石器集中1の母岩別資料」(p.37)および「第9表 遺物群Ⅳの母岩別資料」(p.109)共に財団法人かながわ考古学財団2003.3『吉岡遺跡群Ⅹ』B区第2次調査(第一分冊 縄文時代初頭~旧石器時代、自然科学編)かながわ考古学財団 調査報告153)と比較検討してみる。

すると幾つかの事柄が明らかになる。

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母岩識別研究の現状 [石器研究]

「砂川遺跡の個体別資料分類表」という見慣れたそして有名な周知の表が再掲されていた(安蒜政雄2006「旧石器時代の集落構成と遺跡の連鎖 -環状ブロック群研究の一視点-」『旧石器研究』第2号:69-80)。
かつて様々な関連文献に記載されたあらゆる表・文章を切り貼りし、蛍光マーカーで色分けして、読解に励んだ馴染みのあるデータ(数字たち)である(五十嵐2002b「旧石器資料関係論」『東京都埋蔵文化財センター研究論集』第19号:33-72)。

「発掘した石器群を個体別資料ごとに分けて観察すると、何が遺跡に搬入され、何を遺跡から搬出したのかの内容と明細を示す、各遺跡の石器搬出入品リストが得られる。この搬出入品リストには、いうまでもなく、遺跡間を動いたヒトとモノの姿かたちが映し出されている。」(安蒜2006:p.69)

母岩別資料に石核が含まれれば砕片があろうとなかろうと「類型A」、砕片が1点でもあれば総点数が何点であろうと「類型B」、砕片がなければ総点数が何点であろうと「類型C」とされる区分を、「実体類型」とした。
そこには、「砕片」問題として提起した本質的な問題が潜んでいる(五十嵐2002b:p.50 ff)

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第9回 石器使用痕研究会 検討会 [石器研究]

たまたま部活もない4月1日土曜日の午後、ぽっかり時間が取れたので、以前から案内を頂いていた「石器使用痕の分析方法に関する共同研究」(石器使用痕研究会:於・都大)に突然オブザーバー参加させていただいた。

全国から石器の使用痕跡研究に関心のある研究者8名が集っておられた。石器と一口に言っても、当面の検討課題は、剥片石器の刃部と目される部位における痕跡、すなわち「刃こぼれ」の様相に関する基礎データの採取を探っているようだった。石器石材は、黒曜岩・頁岩・サヌカイトの3種類、被加工物は、乾燥した木、乾燥した皮、生のイネ科草本、水づけの角、乾燥した貝殻、土などである。それらを幾つかの操作法、切断(cutting,sawing)、掻き取り(scraping)などによる実験を行い、実験試料の刃部に生じた痕跡(破損、摩滅、光沢、線状痕、微小剥離痕)について観察する。その際の記述の共有化が課題となっている。

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石文研2005(続) [石器研究]

「石文研2005」【2005-10-03】に寄せられたコメントを読みながら、暫らく考えていた。

捏造問題に関心がある市民、あるいは捏造問題のその後を追及しているマスコミ関係者、あるいは捏造問題に対処する考古学研究者を研究対象にしている社会学研究者などが、日本の旧石器研究において中心的な役割を果たしている?研究者のグループが、捏造発覚後に初めての本格的論文集を出したと聞いて、早速『石器文化研究12』を入手した、とする。
ところが、捏造問題に関する文章は、「刊行にあたって」という代表3名連記の文章において、共同声明を発表するのがいかに大変だったかという簡単な経緯と、捏造問題から得られた教訓として「石器観察が基本という至極当たり前のこと」が半頁ほどにまとめられているだけであることを見出して、唖然とするに違いない。

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母岩識別批判(8) [石器研究]

最後に、実際の母岩識別の実態はどのようなものか、一つの事例を取り上げて、現状なりを確かめてみよう。

検討対象は、『菅原神社台地上遺跡』(1997)東京都埋蔵文化財センター調査報告第46集:第1分冊(先土器時代・縄文時代編)である。

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母岩識別批判(7) [石器研究]

母岩識別研究の問題の根は、深い。
そもそも、どのような方法で母岩識別という手法を対象データに適用していくかというレベルですら、合意が得られていない。
というよりは、合意が得られていない、という認識(問題意識)すら希薄である。

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母岩識別批判(6) [石器研究]

「この著作は決して何らかの『内的衝動』の所産ではない。その反対である。・・・
それにもかかわらず、他の仕事をなおざりにしてこのすっぱいりんごに食いつく決心が私にできるまでには、一年もかかった。それは、まさに、一度食いついた以上は、すっかりたべてしまわなければならないりんごだった。しかも、ひどくすっぱいだけではなく、ひどく歯ごたえのあるりんごだった。」(エンゲルス1956『反デューリング論Ⅰ』p.5)

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母岩識別批判(5) [石器研究]

当初「個体別資料分析」と呼ばれていた母岩識別研究について、その日本的独自性を述べるにあたって、「その方法論は、日本の霊長類学が用いてきた「サルの個体識別」と同様のものである」(五十嵐1992「関東地方における石器文化の変遷に対する感想」『石器文化研究』第4号:p.17)と述べたが、今や全くの誤り、見当違いであることが明らかになった。

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母岩識別批判(4) [石器研究]

ひとくちに「母岩識別」といっても様々なレベルがある。
「十把一絡げ」には、論じられない由縁である。

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