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ヴィーナスの呪い [石器研究]

「ヴィーナス・ライン う″ぃーなす・らいん Venus line ヴィーナス曲線ともいう。礫群と石製遺物との出土深度の関係を分布曲線にあらわしたもの。神奈川県月見野遺跡群の調査で最初に注目された。礫群周辺の石製遺物の出土レベルを数量ごとに垂直分布図に表した場合、石製遺物は礫群の下面から5~10cm上に出土量のピークが認められるのに対し、礫群の下方では急速に減少する。こうした出土量と出土レベルの関係が図上では特徴的な曲線で示されるので「月見野ヴィーナス曲線」と呼称された。1つの生活面に残された石製遺物が特定のレベルに集中する現象は一般的なもので、複数の集中部の分離や生活面の判定に有効な手段となる。」
(絹川一徳2000「ヴィーナス・ライン」『旧石器考古学辞典』:11-12.)

 「ヴィーナス・ライン」で検索かけても、「信州ビーナスライン」とかエステ関連商品などしか引っ掛からないのだが・・・
これは、本当に正式のそして公認の「学術用語」(techinical term)なのだろうか?
個人的には、到底、承認し難いのだが・・・

「すなわち、層位的に重複するいくつかの礫群がある場合、ひとつの礫群の下面以下とその下の礫群の上面までの間に出土する石器群は、一括資料として扱いうる蓋然性がきわめて高いことを、われわれは調査中の経験にもとづいて確かめることができた。例えば、層位的に20cmの上下関係を示す2つの礫群A・Bがあるとする。この間に発見された石器の出土数がもっとも多いレベルは、下位の礫群Bの下面から5~10cmくらいの位置で極大値を示し、礫群Aの下位にちかづくにつれて、急激に0にちかづくという。われわれはたわむれに「月見野ヴィーナス曲線」と呼んだような、グラフの曲線の極大が縦軸(層厚)の上から3分の2ほどの位置にあるカーブが、どの礫群間の包含層についても描くことができた。」(明治大学考古学研究室 月見野遺跡群調査団1969『神奈川県大和市月見野遺跡群調査概報』:31-32.)

「たわむれに」名付けた言葉が、いつのまにか一人歩きしていく。
「たわむれに」名付けた本人も、さぞかし驚いているだろう。

「遺物の量と出土した深さとの関係を表にしたものがヴィーナスラインである。最大量の遺物を含んでいた位置すなわち深さを頂点(極大値)とし、遺物量の減少に従って前後に深さが変化する状態を総合して曲線で表現する。」(麻生 優1985「層位論」『岩波講座 日本考古学1 研究の方法』101-102.)

「前後に深さが変化する状態」??
何かブカブカしていて歩きにくそうである。
「空気で読め」というやつらしい。

関連して述べれば、日本の旧石器研究の学史で、お決まりのように出てくる「月見野・野川以前・以後」という言葉。
月見野も野川も、概報しか出ていない(本報告が出ていない)。そうした考古誌(発掘調査報告)が研究史を分ける定点になる。こうした神経が、これまた理解できない。
やはり、「その程度」の研究史なのか。


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