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第10回 宣言記念日(日本考古学協会2015) [雑]

本ブログも一つの節目を迎えた。
10年の間には、いろいろなことがあった。
そんなことごとについても、ボチボチ回顧していく時期なのかも知れない。
10年経って、何が変わって、何が変わっていないのか。

「…その他の案件として田中和彦理事から文化財に関する諸問題検討会報告の発議があり、議長はこれを認め説明を求めた。田中理事から、一昨年の総会で会員から海外から日本に持ち込まれた文化財の問題について質問があり、文化財を広い視野で捉えて検討する「文化財に関する諸問題検討会」を立ち上げたことが報告された。」(日本考古学協会2015「一般社団法人日本考古学協会第81回(2015年度)総会(抄録)」『日本考古学協会会報』第185号:6.)

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ミシンと洋傘 [雑]

「ミシンと洋傘」と聞いて「ピン!」と来る人は、第2考古学的なセンスがあるとみていいだろう。 

若干24歳で夭折した当時無名の詩人ロートレアモン(本名イジドール・リュシアン・デュカス:1846-1870)が残した摩訶不思議な語句「解剖台の上でのミシンと洋傘の偶然の出会い」(『マルドロールの歌(第六の歌)』)。
この言葉が、シュルレアリスム画家マックス・エルンスト(1891-1976)を経由して、レヴィ=ストロース(1908-2009)の構造主義生成に大きな働きをなした。

「一見したところ対立的な性質をもった二ないしそれ以上の要素を、さらにそれらと対立的な性質をもった平面の上で近づけること」(マックス・エルンスト1934『シュルレアリスムとは何か』)

「そもそも、次のような問い方をすることもできたはずです。「ミシンとは一体何であるか」、「傘とは一体何であるか」、「解剖台とは一体何を言うのか」。
そして、このような問いを個別に発しているかぎり、そこからは何もでてこないでしょう。
唯一の鍵は、個別に検討するかわりに、そうした事物間の関係を考察することであり、したがって関係の体系を、それも変形を前提とした関係の体系を理解しようとすることなのです。
(中略) 
要するに、どのような場合にも、事物ではなくて事物間の関係を考察することによってこそ、分析の端緒が開けるのでした。」(クロード・レヴィ=ストロース1979「構造主義再考」『構造・神話・労働』大橋保夫編、みすず書房:51-53.)

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2015:寒中見舞 [雑]

「さて、厳密に解すると、一つの道具だけが孤立して存在していることは決してなく、一つの道具は常にある道具全体に属しているのである。例えば油絵具は画筆、パレット、ペインティングオイル、油壺、画布、画架などのももろもろの道具全体の中で初めて油絵具として役立つことができるのである。そして道具とは、「何々するための(手段となる)あるもの」なのであるが、この「何々するため」Unzuという「手段性」には、「(何々するために)有用である」、「(何々するために)寄与する」、「(何々するために)役立つ」、「(何々するために)手ごろである」といったさまざまな在り方が属していて、これらのさまざまな手段性の在り方が「道具全体性」Zengganzheitを構成しているのである。
この「何々するため」という道具の存在性格を具体的に見ると、たとえば、ハンマーは釘を打つため、釘は板を固定するため、板は舟を作るため、……というように、Aという道具は他のBという道具へと差し向けられることによって、そのBという道具を指し示し、その指示されたBという道具もまた別のCという道具へと差し向けられることによって、そのCという道具を指し示すといった形で順次に他の道具を指示してゆくという一種の波及現象が認められる。このように、「何々をするため」という構造のうちにはあるものの他のあるものへの「指示」Verweisungが含まれており、こうした「指示」の連関もまた道具全体性をともに構成しているのである。
ある道具は道具全体性への帰属性にもとづいて存在しているがゆえに、個々の道具に先立ってすでにある一つの道具全体性が出会われているのでなければ、いかなる道具といえども、それが何をするためのものであるのかを明確に捉えることはできないのである。たとえば野球をまったく知らない人にとっては、ボールやバットが何をするための道具であるか正確にはわからないであろう。」(岡本 宏正2011「現存在の予備的な基礎的分析(その1)」『ハイデガー「存在と時間」入門』渡邊二郎編、講談社学術文庫:95-97.)

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鏡像(リフレクション) [雑]

「五十嵐彰は、砂川遺跡出土石器資料を対象とした、母岩識別に基づく研究成果を取り上げて、再検討し、母岩の類型区分の解釈において論理的な矛盾があることを明らかにした(「石器資料の製作と搬入」『史学』81-4)。五十嵐がこれまでに明らかにしてきたように、砂川遺跡で実践された母岩識別に基づく研究の方法は様々な問題を抱えている。ただし、それでもなお、遺跡に残された石器資料から遺跡内外における石器製作のあり方を復元するという研究の着眼点自体は重要であるように思われる。五十嵐の一連の議論を踏まえつつ、研究方法を改善し洗練させることが求められる。」(山岡 拓也2014「旧石器時代研究の動向」『日本考古学年報65(2012年度版)』日本考古学協会:19.)

第1文・第2文には何の問題もない。問題は、第3文の「ただし、それでもなお」という接続詞以降の文意である。
一般的に「ただし」も「それでもなお」もほぼ同じ「留保」といった意味を表わすので、そうした語句を連ねるというのは、余程そこに筆者の思いが込められていると考えざるを得ない。

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第9回 宣言記念日 [雑]

「題して「遺物 -その基礎的構造-」といふ。又「遺物とは何ぞや」といふもよろしからう。いふ處は何等新なる知識の展開ではない。従つて、それはよく「判りきつた」と思はれるものであつて、まことに考古學なる學に従ふものは既に「知られたるもの」としてこの問題を通過させてゐるといふのが事実であらう。私がただこの「既に判りきつたもの」の判りきつた姿を描出したいと思ふにすぎない。それは又「判りきらないもの」をかへつて示すものともなるのであるから。且つ、私のとつては、考古學の學的存在の問題にも触れるものとしてこれへの関心の緒としたいからである。」
(中村 清兄1938「遺物 -その基礎的構造-」『史林』第23巻 第3号:147.)

「当たり前のことだが、誰も言わないことを言う」
まことに「第2的」な意見表明である。
筆者は京都帝国大学文学部卒、その後農学部に転じ、さらに家業の扇研究を深めたという異色の研究者である(「水野講師・考古学専攻二回生歓迎会」1937という写真(『考古学京都学派』口絵1)では、濱田耕作・水野清一両氏のすぐ後ろ、小林行雄氏の隣に写っている。)

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タグ:第2的
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天に唾を吐いた人々の末裔として [雑]

以下は8月10日付け由木キリスト教会週報に掲載された文章を一部改変したものである。

「主に在りて忠信なる兄弟たちよ。我らは未だ面識の機会なく、互に伝統と生活の習慣とを異にしてゐるが、かかる諸々の相違にかかはらず我らを一つに結ぶ鞏固なる紐帯が二つあると思ふ。其の一つは、我らの共同の敵に対する共同の戦ひといふ運命的課題である。彼ら敵国人は白人種の優越性といふ聖書にる思想の上に立つて、諸君の国と土地との収益を壟断し、口に人道と平和とを唱へつつ我らを人種的差別待遇の下に繋ぎ留め、東亜の諸民族に向つて王者の如く君臨せんと欲し、皮膚の色の差別を以て人間そのものの相違ででもあるかのやうに妄断し、かくして我ら東洋人を自己の安逸と享楽とのために頤使し奴隷化せんと欲し、遂に東亜をして自国の領土的延長たらしめやうとする非望を敢てした。確かに彼らは我らよりも一日早く主イエスの福音を知つたのであり、我らも初め信仰に召されたのは彼らの福音宣教に負ふものであることを素直に認むるにかではないが、その彼らが今日飽くなき貪りと支配慾との誘惑に打ち負かされ、聖なる福音から脱落してさまざまの誇と驕慢とに陥り、如何に貪婪と偽善と不信仰とを作り出したかを眼のあたり見て、全く戦慄を覚えざるを得ない。かくの如き形態を採るに至つた敵米英の基督教は、自己を絶対者の如く偶像化し、嘗て使徒がまともに其の攻撃に終始したユダヤ的基督者と同一の型につたのである。「汝ユダヤ人と称へられ、盲人の手引、暗黒にをる者の光明、愚なる者の守役、幼児の教師なりと自ら信ずる者よ。何ゆゑ人を教へて己を教へぬか。れと宣べて自らむか。姦淫する勿れと言ひて姦淫するか。偶像をみて宮の物を奪ふか」(ロマ書21722)。

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視界不良、未だ霧は晴れず。 [雑]

五里霧中」と称したのは、 今年の3月のことだった。

日本考古学協会 4月理事会(2014年4月26日) 議事録
報告第302号 会員要望「不法に収奪された考古学資料の取り扱い」について
田中理事から、第79回総会時に会員から要望のあった他国由来の考古学資料の取り扱いについて、情報収集を行うための勉強会の開催を検討している、との説明があった。理事改選時のため詳細は次の理事会での継続審議事項とし、総務担当理事が中心となり勉強会を行う方向性で承認した。

日本考古学協会 6月理事会(2014年6月28日) 議事録
議案第198号 会員要望「不法に収奪された考古学資料の取り扱い」について
田中理事から、第79回総会時に会員から要望のあった他国由来の考古学資料の取り扱いについて、これまでの経緯が説明され、勉強会で情報収集を行っていくことが報告され、了承した。

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有言実行・五里霧中 [雑]

1.文化財返還問題
「報告第246号 会員からの要望について
大竹理事から、第79回総会時の継続審議である会員からの要望について、提案した五十嵐彰会員と、田中理事と大竹理事が懇談を行った旨が報告され、次回以降の理事会で議案として取り上げ審議することを了承した。」(「2013年9月理事会議事録」『会報』第180号:34.)

2013年10月18日「10月理事会議事録」『会報』第180号に、関連議案は見当たらず。
2014年1月25日「1月理事会議事録」『会報』第181号に、関連議案は見当たらず。

「なお、審議事項(総会決議案を含む)の提出期限は4月21日(月)必着です。提出された案件については理事会の検討を経た上で、下記議題の審議<5>その他で審議することになります。」(第80回(2014年度)総会議題」『会報』第181号:1.)

4月までには、何らかの対応がなされることを願っているのだが。

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第3ラウンド・3者会談・3段論法 [雑]

第1ラウンドは、2010年5月22日の第76回総会における席上発言による提案に始まり、それに対して同年6月理事会での「議案第30号」、9月理事会での「報告第67号」として応答がなされた。
本年に入ってからも北海道大学での発表、第7回世界考古学会議での返還セッションの紹介などを通じて問題を提起した。
第2ラウンドは、こうした経緯の末、2013年4月に理事会宛に改めて審議事項として提出することでスタートした。それに対して4月理事会で「議案第143号」として総会審議却下の方針が示された。
ここから本件は、新たな局面を呈し始める。日本考古学協会の「4・27宣言」と称したものである。
5月25日には総会前の理事会宛に、「議案第143号に関するメモ」と題する自らの意見を提出した。
しかしこうした努力も空しく、総会での理事会報告では議案第143号に則った発言がなされ、こちらからの疑問については継続審議・検討事項として質疑は打ち切られた。

昨日9月24日(火)には、「議案第155号」で示されたように担当理事2名と「直接話し合う機会」を得ることができた。
第3ラウンドのスタートである。

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第8回 宣言記念日 [雑]

先週の新聞に太平洋戦争中に日本兵の遺体から持ち帰ったという寄せ書きのある「日の丸」を返したいという元アメリカ兵の話しが掲載されていた。
こうした話しは、この季節によくある逸話で以前にも目にした記憶がある。
今までは自分とは関係のない、どこか遠い所の話しのように感じていた。
ところが今回は、こうしたストーリーが全く新たな意味をもって迫ってくるという経験をすることになった。

「敵兵とはいえ、なぜ遺品を盗んだのか。
そう問うと、ケネスさんは少し沈黙した後、「部隊の皆がそうしていた。罪悪感はなかった。戦場で「記念品」を持ち帰ることは、軍の習慣だった」と答えた。
「記念品」は戦後ずっと倉庫にしまったままだった。だが数ヶ月前、考えが変わった。通っている教会で主婦カリーナ・デルバッレさん(48)と戦争の話題になった。「大事な人の形見を待っている遺族がいる。すぐに返すべきだ」と諭された。自らが犯した罪に気づき、胸が痛んだ。
「遺族が見つかれば、謝罪したい。遺品を返さない限り、私の中で戦争は終わらない」。」
朝日新聞 2013年8月14日

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