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大学入試問題(小論文) [総論]

九州大学 前期日程 共創学部 小論文 設問2

内容:文化財返還問題の論点整理および解決策の提案

「連合王国の首都ロンドンに所在する大英博物館や、アメリカ合衆国のニューヨークに所在するメトロポリタン美術館など世界の主要博物館の多くには、植民地主義の時代に、植民地に所在する遺跡や、植民地、また国内に住まう先住民コミュニティから様々な形で持ち去られたり持ち帰られたり、またそれらが植民地宗主国の間で譲渡取引されたりした様々な品々や記念物が収蔵されている。今日、これらの帰属を巡って様々な事象が問題化し、それらは「文化財返還問題」と総称される。この「文化財返還問題」に関する資料1~5、表、地図を参照し、以下の問いに答えなさい。」

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及川2022「「遺構」論の今」 [論文時評]

及川 良彦2022「「遺構」論の今 -「遺構」とは-」『セツルメント研究』第10号、セツルメント研究会:3-36.

コロナ以前の2019年12月に開催された研究集会「縄文研究の地平2019 -層位/分層、遺物ドット・接合からみた遺跡形成-」における報告が、口頭発表時の事例部分を前半として「遺構の研究略史と定義」という後半部分が加筆されて刊行された。

「…五十嵐は従来の「遺構」と「遺物」という考古学の概念、あるいは「遺構」+「遺物」=「遺跡」とする認識を再検討し、新たな概念である「部材」を導入し、さらに考古学的痕跡研究の枠組みを示している。現在最も踏み込んだ用語概念を組み上げつつある。」(28.)

こうした認識(実際は口頭発表では示されなかった後半部分も含めて)が層位や遺物ドットや接合といったやや異質な論題群の中でなされたというのが、3年前の現実であり3年後の現実である。
研究集会のそれぞれの発表は、何やら「寄せ集め」といったイメージが否めない。
本来は「遺構論」だけを取り上げても、十分に1日を費やすに足るテーマのはずである。
考古学という学問の中心的な概念である「遺構」を語り尽くす機会が訪れるのは、いったいいつのことだろうか。

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山本ほか2022『考古学概論』 [全方位書評]

山本 孝文・青木 敬・城倉 正祥・寺前 直人・浜田 晋介 2022『考古学概論 -初学者のための基礎理論-』ミネルヴァ書房

「本書は、考古学を学びはじめた初学者が主な読者となること(を?)前提としたもので、この分野に初めて接する人が、前提なしでその学問的内容を理解するのに適したテキストとして書かれたものである。学問としての考古学を学ぶ際に知っておくべき最低限の基礎理論の内容をまとめており、学習初年次の考古学の入門系授業に対応する内容が想定されている。」(山本:i)

70年代生まれの方が4人、50年代生まれの方が1人による総じて若い世代によって記された久々の教科書である。順に見ていこう。

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五十嵐2022a「多摩ニュータウンNo.234遺跡」 [拙文自評]

五十嵐 2022a「多摩ニュータウンNo.234遺跡」『たまのよこやま』第128号:6.

所内報(東京都埋蔵文化財センター報)の連載記事「1/964」に「何か書いて下さい」と頼まれて記した短文である。
連載の趣旨が、表題の下に記されている。

「多摩ニュータウン地域では、964ヶ所もの遺跡が確認されています。その中から調査担当者の記憶に深く残る遺跡について、リレー方式で振り返っていきます。」

ということで私が選択したのは1994年に調査した「No.234」という小さな「遺跡」である。
今回の私の担当で、リレーしてきて51番目になる「長寿番組」である。
シリーズの副題には、「多摩ニュータウンの発掘調査を振り返る」と記されている。
今まで記されてきた50回にわたる文章は、おそらくそれぞれの担当者が記憶に残る「遺跡」を一つの単位として、選択した「遺跡」の内容を記したものである。
しかし私の文章はそうした個別の「遺跡」の内容もさることながら、数字が与えられた「遺跡」の存立根拠そのものを問う内容となった。いや、そうならざるを得なかった。
長い間お世話になった組織に対する私なりの現役最後の「恩返し」である。

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