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金丸2002「曲論の系譜」 [論文時評]

金丸 裕一 2002「曲論の系譜 -南京事件期における図書掠奪問題の検証-」『立命館言語文化研究』第14巻 第2号:123-138. 立命館大学国際言語文化研究所 編

「曲論」とは、「正しくないことを正しいかのように言い曲げる論」である。

「この小論では、近年の「南京大虐殺事件」(以下「南京事件」と略す)時期に頻発した、日本による掠奪問題をめぐる研究に焦点をあわせ、幾つかの新しい「神話」が創作される過程を詳細に検証してみたい。その際、考察の対象は文化財、とりわけ図書・雑誌に対する「掠奪」の問題に限定していく。」(123.)

筆者が1997年12月に台北で開催された「南京大屠殺六十周年国際学術シンポジウム」に出席して趙 建民の発表を聞いたことが、本論形成のきっかけであった。

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梶村1982「海がほけた」 [論文時評]

梶村 秀樹 1982「海がほけた -山口県長生炭坑遭難の記録-」『在日朝鮮人史研究』第10号、在日朝鮮人運動史研究会(1993『梶村秀樹著作集 第6巻 在日朝鮮人論』明石書店:108-126.所収)

「太平洋戦争の始まる直前の頃、山口県宇部市の長生炭坑(当時の吉敷郡西岐波村、床波駅の南0.4km、山口市と宇部市を結ぶ県道から0.5kmの地点)で大きな事故があった。長生炭坑も、沖の山、東見初等、宇部炭田の他の炭鉱と同様に海底炭鉱であったが、岩盤が崩れて海水が侵入し水没してしまったのである。何百人という規模の犠牲者を出し、しかもその大半は朝鮮人労働者であったと思われるが、当時事故の公表は一切禁じられ、その事実すら殆ど知られていない。
縁あって、この事故を直接体験し、九死に一生を得た李鍾天氏のお話を聞くことができた。」(108.)

地道な市民運動がなされている。
取材レポートが公開されている。

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木村2007「文化遺産イデオロギーの批判的検討」 [論文時評]

木村 至聖 2007「文化遺産イデオロギーの批判的検討 -近代西欧の廃墟へのまなざしを手がかりに-」『ソシオロジ』第51巻 第3号(158号)3-19.社会学研究会

「…文化遺産イデオロギーとは、本来様々な可能性に開かれているはずの「痕跡」から見知らぬもの、理解できないものといった異質性・他者性を排除し、そこから近代的社会秩序あるいは自己の同一性を維持するための肯定的価値づけのみを取り出していく「同一化思考」のことなのである。」(7.)

世界遺産選定にあたって「国の名誉に関わる」などと発言している人は、アウシュヴィッツ=ビルケナウなど「負の世界遺産」など想像できないだろう。
ある立場の人たちからすれば、こうした事柄は「自虐史観」による産物以外の何ものでもないだろうから。

どうしても「佐渡金山」を世界遺産に登録したいのならば、「花岡鉱山」と組み合わせた構成資産化が唯一の方策だろう。
「佐渡金山」については、新潟県相川町(現 佐渡市)1995『佐渡相川の歴史 通史編 近・現代』が基本文献である。

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