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「返還する」とはどういうことなのか?(報告) [研究集会]

「返還する」とはどういうことなのか?
  -特に朝鮮半島由来の文化財をめぐって-

 高麗博物館開館20周年記念講演会

日時:2022年 2月 19日(土)14:00-16:00
場所:高麗博物館(東京都 新宿区 大久保1-12-1 第2韓国広場ビル7階)
主催:同上

以下は、当日会場で配布した資料(一部改変)。

「文化財」と呼ばれている「もの」は、文化の記録であると同時に、野蛮の記録でもある。
文化財自体が野蛮から自由ではないように、文化財が人の手から手へと次々と渡ってきた伝達の過程も、野蛮から自由ではない。(ヴァルター・ベンヤミン1940「歴史哲学テーゼⅦ」)

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宮本編2015『遼東半島上馬石貝塚の研究』 [考古誌批評]

宮本 一夫 編 2015『遼東半島上馬石貝塚の研究』九州大学出版会

「第1回の日本学術振興会の調査は1941(昭和16)年3月末から4月中旬にかけて行われた。隊長は梅原末治(京都帝国大学教授)であり、隊員は長谷部言人(東京帝国大学理学部教授)、八幡一郎(東京帝国大学理学部講師)、島田貞彦(旅順博物館嘱託)、森修(旅順博物館嘱託)、澄田正一(京都帝国大学大学院生)、澤俊一(朝鮮総督府学務部嘱託)からなる(図版26)。」(宮本「発掘調査の経過」3.)

1941年3月から4月にかけて遼寧省で日本の考古学者たちが発掘調査をしていた。
1941年当時、中国戦線の状況はどのようであったのか?
歴史の授業で余り教わった記憶もないので、少し記しておこう。

1月-2月:予南作戦(河南省南部)日本第11軍第3師団ほか vs 中国第5戦区第31集団軍ほか
3月-4月:錦江作戦(江西省)日本第11軍第33師団ほか vs 中国第9戦区第19集団軍ほか
5月:江北作戦(湖北省)日本第11軍第3師団ほか vs 中国第5戦区22・55集団軍
5月-6月:中原会戦(山西省南部)日本北支那方面軍第1軍 vs 中国第1戦区第5集団軍ほか

要は、中国大陸のあちこちで日本軍と中国軍の熾烈な戦闘が繰り広げられていたということである。
この間3年前から始まった重慶に対する爆撃も頻繁に行われていた。
そして12月には真珠湾攻撃に至り、中国戦線は泥沼化の様相を呈するに至る。
そうした中での発掘調査である。

「昭和三年一月一日以降において、日本軍によって占領された連合国の領土内で日本軍の庇護の下に、学術上の探検あるひは発掘事業を指揮し又はこれに参加した者」は「教職不適格者として指定を受けるべきものの範囲」の「審査委員会の審査判定に従う者」として示されていた(1946年「勅令第263号」『官報』第5790号)。

しかし本書には、そうした経緯は一切記されていない。

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「返還する」とはどういうことなのか?(予告) [研究集会]

「返還する」とはどういうことなのか? -特に朝鮮半島由来の文化財をめぐって-

日時:2022年 2月 19日(土)14:00-16:00
場所:高麗博物館(新宿区 大久保1-12-1 第2韓国広場ビル7階)
開催形態:参加費 1000円 会場20~25名 オンライン100名
主催:認定NPO法人 高麗博物館(03-5272-3510)
申し込み:電話あるいはホームページから

「共生社会の実現をめざして -わたしたちの31年-」と題された開館20周年記念企画展(2021.12.8~2022.3.6)に合わせた3回の講演会の2回目という位置づけである。

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タグ:文化財返還
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池田2000「物神化する文化」 [論文時評]

池田 光穂 2000 「物神化する文化 -文化遺産のグローバルな流通について-」『三田社会学』第5号:17-28.

「事物の社会分析は、社会的な想起とは何であるか、想起にもとづく個体の行動はいかなるふうに社会に影響をもたらすのか、ということを我々に教えてくれる。事物は審美的な観想の対象となることをやめて、我々の記憶に直截的に訴えかける政治的な事物として立ち現れる。本稿では、遺跡や考古学遺物そのもの、あるいはそれらの文化表象の地球規模での流通という経験的現象を検討することを通して、事物が歴史的に与えられてきた価値というものが社会的合意を得られなくなってきた現代的状況について把握し、かつその理由を探求する。」(18.)

「事物の社会分析」は、第2考古学にとって中心的課題である。
中南米をフィールドとする文化人類学者の意見を見てみよう。

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