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「前・中期旧石器捏造から20年」 [捏造問題]

「前・中期旧石器捏造から20年」と題する特集(『考古学ジャーナル』第730号、2019年9月号)が刊行された。正確には「捏造発覚から20年」ということだろう。それにしても、あちこち、分からないことだらけである。

「まずは、座散乱木グループによる論争決着宣言を撤回する必要がある。」(安蒜 政雄「日本旧石器時代の論争と捏造」:1.)
誰が、どこで、どのように撤回するのだろうか? なんのために? 
そのようなことは、すでに周知の事柄ではないだろうか?

「その意味で、論争の争点は、中期の存否だ。」(同)
ほんとうにそうなのだろうか?

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端尾・南田(考闘委)1974-75「日本考古学協会の発足」 [論文時評]

端尾 渡・南田 宗嘉(全国考古学闘争委員会連合)1974-75「日本考古学協会の発足 -協会解体のススメ-」『プロレタリア考古』第11号(第1回:上 1974-4/1):2・3、第12号(第2回:中 1974-5/1):4、第13号(第3回:中 その2 1974-6/1):2・3、第14号(第4回:中 その3 1974-7/1):4、第17号(第5回:下 1975-3/1):4
*第1回記事(第11号)の末尾には「今回担当・端尾 渡・南田 宗嘉」とあるが、他の記事は無記名である。表題と副題の関係についても、類推に基づく。北郷 泰道2007「1970年代の考古学 -そして「全ての発掘を中止せよ」-」『考古学という現代史』の『プロレタリア考古』記事目録:225.では、「協会解体のススメ」が表題とされている。

「…彼らは共通して(梅原、藤田、駒井など)「東亜考古学」研究と「資料保存(?)」こそが「我国文化再建の礎となることを固く信じて疑わない」としていることである。すなわち”戦争と科学” ”科学者の戦争責任”など、全く考えることもなく、戦前、戦中への”侵略略奪発掘”の成果を自画自賛しているのである。結局のところ、新しい日本の文化の建設とは、”天皇制”には全く触れない考古学の市民的地位の向上と侵略略奪発掘の賛美、正当化のことであった。」(第13号:3.)

45年前の『プロレタリア考古』に、前回取り上げた「勅令第263号」について言及した箇所があるかどうかを確認するために、改めて通読したのだが見出せなかった。恐らくその存在を知らなかったのだろう。当事者たちが口を噤んでいたのならば、戦後生まれの彼ら/彼女たちが知らなかったのも無理はない。しかし物事の本質を捉えた本論の記述に、全く影響はない。むしろ現時点で「勅令第263号」を加味することによって、当時の指摘が更に強化されるだけであった。

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考古学者の教職追放(勅令第263号 別表第一 第六項) [学史]

「公職追放」とは、公共的な職務に特定の人物が従事することを禁止することをいう。特に教員や教育関係者として不適当な者を教職から排除した措置については「教職追放」と呼ぶ。財閥解体や農地改革と共に、戦後の民主化政策としてなされた。「公職追放」は、1945年10月に出されたGHQの指令に基づき、議員・公務員その他政界・財界・言論界の指導的地位から軍国主義者・国家主義者などを追放することで、軍国主義的・超国家的傾向を排除して民主主義的傾向を強化することを目的とした。「精神的な武装解除」ともされる。1952年4月の対日講和条約発効とともに自然消滅した。

考古学に関連する「教職追放」は、1946年5月6日に「勅令第263号」として公布され、翌7日『官報』第5790号に告示された。詳細は「閣令・文部省令・農林省令・運輸省令第1号」として「教職不適格者として指定を受けるべきものの範囲」が示された。「別表第一」には、適格審査委員会の判定に従う者として「一-1.侵略主義あるひは好戦的国家主義を鼓吹し、又はその宣伝に積極的に協力した者及び学説を以て大亜細亜政策、東亜新秩序その他これに類似した政策や、満洲事変、支那事変又は今次の大戦に理念的基礎を与へた者 一-2. 独裁主義又はナチ的あるひはファシスト的全体主義を鼓吹した者 一-3. 人種的理由によつて、他人は迫害し、又は排斥した者 一-4. 民族的優越感を鼓吹する目的で、神道思想を宣伝した者」などが示されている。
「日本考古学」として重要なのは、最後の第六項である。

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岡田2019「鳥居龍蔵の1923年度朝鮮石器時代調査」 [論文時評]

岡田 憲一 2019 「鳥居龍蔵の1923年度朝鮮石器時代調査」『考古学研究』第66巻 第1号:42-58.

2016年に公開されたガラス乾板資料および朝鮮総督府博物館の公文書によって、96年前の朝鮮半島調査を丹念に跡付けたものである。
その結論が、以下の文章である。

「日本列島に止まらず、周辺諸地域を踏破し、広大なスケールの議論を展開した鳥居龍蔵について、そのフィールドワーカーとしての学問的探究心やその成果を称賛したり、一方において、その調査が帝国主義に便乗したものであるとして糾弾したりすることは、一面では確かに正しいが、実のところ案外容易い。しかし、それをどのような側面から切り取り評価するにせよ、分断し得ない一個人としての彼の生き様そのものと、折々残された学問的成果を無視することがあってはならないと思う。幸いにも、韓国国内において鳥居の記録したガラス乾板資料の公開が進みつつある現在、われわれは、その資料を批判的かつ正確に受け継ぐことを始点として、現在ある資料、そして今後現われるであろう資料へと繋げ、新たな学問的希求をおこなっていくべきであると考える。」(52.)

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