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鈴木2003『好古家たちの19世紀』 [全方位書評]

鈴木 廣之 2003『好古家たちの19世紀 -幕末明治における<物>のアルケオロジー-』シリーズ 近代美術のゆくえ、吉川弘文館

「ここで採る正反対の方法とは、ひとことでいえば、非連続の要素のなかに未発の可能性を探り出そうとする行き方だといえる。つまり、現在ある秩序に接ぎ木されずに断絶し、埋もれ去り捨て去られた要素や価値、あるいは挫折した試みの方に多くの注目を向けることだ。敗北した試みのなかには、その時代が直面していた課題がより鮮明に見出せるだろう。失敗した試技の方がハードルの位置と高さを検証しやすいからだ。
このようにして、埋もれたままの要素や価値を探り出し、忘れられたままの試みを掘り起こす作業を粘り強く進めれば、類別され階層化された古い物の世界が重なり合い、堆積するようすが見えてくるように思う。そして、それらの地層に試錐することは、その世界の一つひとつがもっていた課題と可能性を掘り起こし見出すことになるだろう。このような作業は、現在ある秩序に普遍的な価値を見出すのではなく、反対に、それが歴史的なものであることを明らかにし、その秩序が構造的に抱えている捩れや歪みを見とおすことになるだろう。」(22.)

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