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太田1998『トランスポジションの思想』 [全方位書評]

太田 好信 1998『トランスポジションの思想 -文化人類学の再想像-』世界思想社

20年ほど前、近現代考古学や<遺跡>問題について思い悩んでいた時分に、大いに刺激を受けた書物である。今、改めて読み直して、改めて刺激を受ける。私にとって「好著」とは、自分の抱えている問題に新たな示唆を与えてくれる書物である。深みまで降りていける手助けとなるような、新たな思考を触発するような。

「アイヌの人々から発せられた批判の一つは、民族の誇りを保持しつつ、現代日本社会で生きる希望を否定する語りが、アイヌ研究には「客観的」研究という名目に隠れて存在したことである。まず、アイヌ研究の未来は、そのようなアイヌの人々の主張と連動する学問となる必要があろう。アイヌの人々の抵抗に共感し、そのような活動を支援する研究、少なくとも、研究の社会的な意義をつねに考察する学問として成立する必要があろう。」(132.)

アイヌの人からの問題提起を受けて「私たちの資料入手の全てが遺法であったとは思わない」と開き直りともとれる発言とは相容れない言説である。

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