SSブログ

徐2010『植民地主義の暴力』 [全方位書評]

徐 京植 2010 『植民地主義の暴力 -「ことばの檻」から-』高文研

「「国民主義」とは、「国家主義」と区別して暫定的に用いる用語である。両者はいずれも英語に訳せばナショナリズムとなるが、いまから問題にしようとする「国民主義」は、いわゆる先進国(旧植民地宗主国)のマジョリティが無自覚のうちにもつ「自国民中心主義」を指す。「国民主義」は多くの場合、一般的な排他的ナショナリズムとは異なるように見え、当事者も自分自身をナショナリストとは考えていない。それどころか「国民主義者」は自分をナショナリズムに反対する普遍主義者であると主張することが多い。彼らは自らを市民権の主体であると考えている。
しかし、その一方で彼らは自らが享受している諸権利が、本来なら万人に保証される基本権であるにもかかわらず、近代国民国家においては、「国民」であることを条件に保証される一種の特権となっているという現実をなかなか認めようとしない。国民主義者は自らの特権には無自覚であり、その特権の歴史的由来には目をふさごうとする傾向をもつ。したがって国民主義者は「外国人」の無権利状態や自国による植民地支配の歴史的責任という問題については鈍感であるか、意図的に冷淡である。この点で、「国民主義」は、一定の条件のもとで排他的な「国家主義」とも共犯関係をむすぶことになる。」(64.)

続きを読む


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問