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五十嵐2021a「石核とは何か」 [拙文自評]

五十嵐 2021a「石核とは何か -砂川モデルを問う-」『東京の遺跡』第118号:3-5.

「私たちが日常的に「石核」と呼んでいる存在形態は、石器資料の中でどのような位置を占めているのだろうか? こうした問いを深めることは、石器資料論の核心である。
「石核とは何か」を問うことは、日本の旧石器時代研究における砂川モデルの方法論的意義を問うことになる。」(3.)

「石核とは何か」
何とストレートな、そしてある意味で大上段な、しかし今まで誰も発することのなかった問いなのだろう。
誰もが言及しない極めて当たり前の事柄を、筋道立てて論じることが、今、求められている。
「石核が問題の核心である」(The core is the core of the problem)とは、我ながら驚くべき結論である。

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織田1990『システム論とフェミニズム』 [全方位書評]

織田 元子1990『システム論とフェミニズム』勁草書房

「実際問題としては、現代の男女関係を理解するのに、女性抑圧の起源までふまえて理解する必要はない。
「男が悪い、いや、女が悪い」という形で循環論に陥ったなら、個々の事例で議論するのをやめて、それらを包囲している大きな現実に、つまり、父権制社会とそのイデオロギーというコンテクストの位置から事態を眺めればよいのである。」(112.)

会議の休憩時間に喫煙所で子飼いの子分から聞かされた組織運営の愚痴を知り合いに話しているぶんには、これほど大きな問題にはならなかっただろう。
しかしプレスが入った公の場において、国際的なイベントを開催する一国を代表する組織の長が、自分の組織の女性は場をわきまえているが、他の女性はわきまえずに長々と発言すると非難する。
女は男よりも劣るというあからさまな価値観の表明である。
これでは、場をわきまえずに発言しているのは誰であるか明白であろう。

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全2017「「韓国文化財」形成過程に関する史的考察」 [全方位書評]

全 東園(ジョン ドンウォン)2017「「韓国文化財」形成過程に関する史的考察 -植民地期「朝鮮文化財」研究の成立と言説空間の形成-」博士学位論文(東京外国語大学)

序論
第1章:近代日本「学知」の朝鮮侵出
 第1節 東京帝国大学の海外学術調査と朝鮮半島
 第2節 八木奘三郎の「大韓帝国」調査 -「朝鮮文化財」調査の開始-
第2章:関野貞の「朝鮮文化財史」研究
 第1節 関野貞の学問的背景
 第2節 関野貞による「朝鮮美術(史)」研究の内容 -活字化された書物の分析を通して-
第3章:植民地期朝鮮における「朝鮮文化財」言説空間
 第1節 併合前、「朝鮮文化財」言説領域
 第2節 併合後、朝鮮総督府の行政空間における「朝鮮文化財」
第4章:植民地期朝鮮「博物館」という言説空間
 第1節 植民地期朝鮮における博物館の記録 -「李王家博物館」という言説空間-
 第2節 「朝鮮文化財」言説空間の拡大 -朝鮮総督府博物館の誕生-
 第3節 朝鮮総督府博物館の経営主体と所蔵品に関する考察
結論

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