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2018b「考古累重論」 [拙文自評]

2018-5-26「考古累重論 -<場>と<もの>の相互関係-」『日本考古学協会第84回総会 研究発表要旨』:50・51.

「考古学における層位論に関連する文章では、「下層が古く堆積し、上層は新しく堆積した」という地質学の「地層累重の法則」に言及して「下層の遺物は古く、上層の遺物は新しい」と述べられることがある。しかし前者の法則から本当に後者のような論述を導くことができるだろうか? そこには「日本考古学」独特の論理の飛躍あるいは逸脱があるように思われる。考古資料を、<場>と<もの>の相互関係として捉えてみたい。」(50.)

ということで、まず型式論における「一括遺物」を「単層の場合」と位置付けて「面と点の関係」を確認し、次に層位論における「累重関係」を「重層の場合」として「<場>と<もの>の関係」から、両者を統一的な視点から認識した場合に、現在の「日本考古学」の言説状況をどのように評価できるかについて考えた。

昨年本ブログにおいて提出した夏休みの宿題【2017-07-22】とその暫定的な回答【2017-07-29】について、もう少し考えを深めた結果である。

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鞆谷2011『日本軍接収図書』 [全方位書評]

鞆谷 純一 2011 『日本軍接収図書 -中国占領地で接収した図書の行方-』大阪公立大学出版会

「本書は、2011年3月に受理された博士論文「第二次大戦中の中国における日本軍接収図書の研究」(大阪市立大学大学院創造都市研究科)を単行本化したものである。」(231.)

「第一の目的は、第二次大戦中の中国における日本軍接収図書の史実を明らかにすることである。
第二の目的は、史実を明らかにした上で、日本軍図書接収の目的について、筆者自身の検証結果を示すことである。(中略)
第三の目的は、国内の主な機関に搬入されていた接収図書の搬入経緯や、その後の扱い、敗戦後の返還状況を明らかにすることである。」(18.)

中国大陸における日本軍占領地における図書の接収・略奪(筆者は戦時期については「接収」を、戦後期については「略奪」という語を使い分けている)の状況が、華北・華中・華南・上海・香港・北部仏印を対象として詳細に記されている。植民地である台湾と満洲は対象外とされた。それは、1946年のGHQによる「略奪財産の没収と報告」という指令(SCAPIN885)の対象が、1937年7月7日以降であるからという(19.)。

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2018a「「生ける歴史」とは何か -渤海国半拉城址発掘を中心に-」 [拙文自評]

2018-5-1「「生ける歴史」とは何か -渤海国半拉城址発掘を中心に-」『韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議年報』第7号:8-10.

「「死せる歴史」ではない「生ける歴史」として過ぎ去った時代をどのように評価するのか、私たちの植民地支配に対する歴史的な責任が深く問われている。」(9.)

最近記した3本のブログ記事を元に、昨年亡くなられた先学に対する拙い献呈文とした。

偶然出会った対談記録、そこでは当時の満洲国の文化財担当者によって、関東軍が遺跡の発掘調査を秘密裡に強行したことが回顧されていた【2018-02-17】。回顧者は自らを「不逞な思想を持っていた」、「当時の軍は始末に負えなかった」と述べていた。早速本人の当時の著書を取り寄せたところ、そこには「軍によって文化財が保護されて時局に翼賛した」とか「満洲国の建国は歴史の必然である」といった、対談で述べられていたことと全く異なることが記されていた。

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