SSブログ

2018b「考古累重論」 [拙文自評]

2018-5-26「考古累重論 -<場>と<もの>の相互関係-」『日本考古学協会第84回総会 研究発表要旨』:50・51.

「考古学における層位論に関連する文章では、「下層が古く堆積し、上層は新しく堆積した」という地質学の「地層累重の法則」に言及して「下層の遺物は古く、上層の遺物は新しい」と述べられることがある。しかし前者の法則から本当に後者のような論述を導くことができるだろうか? そこには「日本考古学」独特の論理の飛躍あるいは逸脱があるように思われる。考古資料を、<場>と<もの>の相互関係として捉えてみたい。」(50.)

ということで、まず型式論における「一括遺物」を「単層の場合」と位置付けて「面と点の関係」を確認し、次に層位論における「累重関係」を「重層の場合」として「<場>と<もの>の関係」から、両者を統一的な視点から認識した場合に、現在の「日本考古学」の言説状況をどのように評価できるかについて考えた。

昨年本ブログにおいて提出した夏休みの宿題【2017-07-22】とその暫定的な回答【2017-07-29】について、もう少し考えを深めた結果である。

「型式論を述べる際に欠かせない要素である型式組列・共存関係あるいは一括遺物といった諸概念と、層位論を述べる際に欠かせない要素である累重関係は、本来密接不離な関係にある。「累重関係」こそは、考古学的方法論における型式論と層位論の双方に関わる重要で不可欠な考え方である。
しかし型式論について述べられる際には、単層の面と点の相互関係、特に製作時間と廃棄時間の識別が「一括遺物」として留意される一方で、層位論について述べられる際の単層が累重した状態である重層については単層で留意された考古資料の原理的な性格については考慮されることがない。層位論では「地層累重の法則」が述べられても、型式論で述べられる「一括遺物」について言及されることも、両者を関連づけることも稀である。」(51.)

最後に少し古い文章だが、有名な考古学者の文章を紹介しておく。

「石器時代文化編年に對して、各種の方法が考案されて居るが、その最も主要なものは層位學的方法である。数人の子供たちが遊んで居る。彼らの着て居る上着はめいめい少しづゝ異つて居る。一人が駆けて来て、彼の上着をぬいで地面に置く。次の子も自分の上着をぬいで、それを前の子が置いた上着の上に投げる。そしてほかの子供も、つぎつぎにこれに慣つた、とする。さてこの上着の堆積が、後で搔きまわされなかつたら、私達はこれ等を上から一枚づゝ順々に取つて調べて見れば、どの子が最初に、そしてどの子が最後に此処に来たか、その順番をたやすく知ることが出来よう。
層位學はこれと同じ簡単な理屈から出発する。人間が或る期間、一定の場所に住むと必ず彼等の生活の痕跡、家の跡、はきだめの跡、道具の断片等々、を其の地に残す。歳月がたつに従つて、その上に土が堆積して、それを埋めて了う。此様な人間の過去の生活遺物を含む層を、私達は文化層と呼んで居る。同一の場所に時代を異にして人間が居住すれば、そこに幾つかの文化層の重なりを残す。若しそれが後世の攪乱をうけなかつたら、この文化層を一層づゝ剥すことによつて、その堆積の順序を知り、そして更に各々の層中に包含される種々なる遺物を検出し、これを比較研究することによつて、各々の遺物の年代的序列と変遷とを求める事が出来る筈である。」(甲野 勇1947『図解 先史考古学入門』山岡書店:36-37.)

確かに「どの子が最初に、そしてどの子が最後に此処に来たか、その順番をたやすく知ることが出来よう」。
しかし「どの子の上着が最も古く(古着)、どの子の上着が最も新しい(新品)か」を堆積の順番から知ることが出来るだろうか?

詳しくは、5月27日(日)10時50分から明治大学リバティタワー2階 1021教室にて。


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。