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ビンフォード2021『過去を探求する』 [全方位書評]

ルイス R.ビンフォード(植木 武ほか訳)2021『過去を探求する -考古資料解読の方法と実践-』雄山閣(Lewis R. Binford 1983 IN PURSUIT OF THE PAST Decoding the Archaeological Record.
*1983年刊行のハードカバー版はThames and Hudson、2002年刊行のペーパーバック版はUniv. of California Press、本訳書には「2002年度版へのあとがき」も付されている。)

ビンフォード初の訳書、待望の刊行である。

「先日バスに乗っていると、乗り合わせた老紳士が私に職業を尋ねてきました。そこで筆者が、考古学者だと答えると、彼は「それは素晴らしい。運が良ければ、あなたは大成功できる」と、激励してくれたのです。そこで筆者は、考古学についての彼の見方と私の見方とがまったく違っていることを、その老紳士に説明し、納得してもらうまでにはちょっと時間が掛かりました。考古学者の仕事は「過去を掘り」、未発見の何かを発見した者が成功した人であり、全ての考古学者がこのような発見をしようと駆けずり回っているのだと、彼は考えていたようです。これは19世紀の古い科学の概念に相応しいものですが、筆者の知る限りでは、この考え方は今日行われている考古学の本質を言い当てたものではありません。本章では、考古学者は何故、単なる宝物の発見者ではないのか、その事を説明することにします。
多くの人々がそうであるように、バスに乗り合わせた老紳士も、考古学者は「過去の宝物を発見する」研究者だと思い違いをしているのです。そうではなく、考古資料は、現在のわれわれと共に存在するのです。」(19.)

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