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15 存在している不在(1) [近現代考古学]

Chapter15 Presencing absence.(V.Buchli & G.Lucas):171-174.

本論集の結論ともなるべき章である。

本論集で示された様々な主題は、あるものは剰余でありまた忘却でありそして隠蔽されているものを物質化し前進させるという行為を通じて、最近の過去に存在する不在(presencing absence in the recent past)が有する批判的な結論に焦点を合わせていた。こうした考古学的作業によって、より保守的な考古学行為あるいは近現代を対象とする他の学問的営為とは異なった側面が明らかになった。

どういうことか?

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14 異化作用としての考古学 [近現代考古学]

Chapter14 The archaeology of alienation. A late twentieth-century British council house.(V.Buchli & G.Lucas):158-167.

1997年、廃絶した公営住宅への2日間の立ち入りが許可されたことから、本プロジェクトが開始された。現在と2000年前の人々について相互に比較するとき、周縁化と異化のプロセス(the process of marginalisation and alienation)がどのように立ち現われるかを検討するために。

第1部:発掘(The excavation)、第2部:脈絡(Context)という構成である。
発掘としては、間取り・廃棄物の記録、微細資料の回収、壁面装飾の記録などがなされる。回収された遺物は、所属する性・年齢などによって分類され、どこからどのような遺物が回収されたかが記載される。
そこから、どのような人たちがそこで暮らしていたのか、そして何故立ち去ったのかという疑問に答えようとする。

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13 イギリスにおける法考古学 [近現代考古学]

Chapter13 Forensic archaeology in the UK. Questions of socio-intellectual context and socio-political responsibility.(M.Cox):145-157.

M.コックス氏は、イギリス・ボーナマス大学保存科学教室所属である。

法考古学(forensic archaeology)とは、何か?
それは、考古学の技術・考え方を犯罪捜査(criminalistics)に生かすことである。法人類学(forensic anthropology)などと共に、法科学(forensic science)の一角を担う。

犯罪、特に殺人事件などの重大な犯罪は、それこそカインとアベルの時代から行われてきた。だから、過去における犯罪を復元するのに考古学の技術が応用されるのは当たり前である。ところが、現代の犯罪捜査においてはどうだろうか?

日本の考古学で警察に接すると言えば、人骨が出てきて事件性がないと判断する時か、不発弾が出てきて爆発物処理班を呼ぶ時か、あるいは調査が終わって「埋蔵物発見届」を近くの警察署に届ける時ぐらいであろう。いずれも考古学の調査に伴って付随的に発生する出来事の処理の一端に関与するという程度で、考古学という学問が主体的に警察業務に関わるということはまずない。

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再埋葬問題(追補) [近現代考古学]

「インディアン諸族の運動は、最近では「再埋葬問題」となって表面化している。これは、考古学的調査によって出土した遺骨を地中に戻すことを義務づける法制化を主張するものであって、特に形質人類学者にとっては致命的な脅威となりうるので、先鋭な問題となってきている。筆者も出席する機会を得た86年度アメリカ考古学会(於ニューオリンズ)では、全体会議のシンポジウムが開かれて、数百人の研究者を前にして伝統衣装に身を包んだインディアン団体代表が、「われわれは、博物館の薄暗い収蔵庫で、ビニール袋に包まれることを拒否する」と発言していた。
再埋葬問題は88年度のSAAでも分科会のテーマとなり、各州政府・連邦機関の政策が討議されている。オクラホマ(87年)やウィスコンシンをはじめ数州では、すでに埋葬遺跡の取扱いについての州法が制定された。これらは必ずしも即時再埋葬を強制するものではないが、適切な取扱いのための審議を義務づけている。

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12 科学と人権 [近現代考古学]

Chapter12 Science and human rights: Truth, justice, reparation and reconciliation, a long way in Third World countries. (M.Doretti & L.Fondebrider):138-144.

M.ドレッティ、L.フォンドブリデール両氏ともアルゼンチン法人類学チーム(EAAF)所属である。

1960年代以降、第3世界における独裁的軍事政権下において、暴力的な様々な人権抑圧が行われた。政治的施策として誘拐・拷問・暗殺などによって数千人もの人々が行方不明となった。
ブラジル・ペルー・中米などにおける「死の軍団」(death squads)、エルサルバドル・グアテマラにおける「焦土政策」(scorched land policies)、アルゼンチンを含む中南米における「強制行方不明者」(forced disappearance of persons)。

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11 第二次世界大戦の考古学 [近現代考古学]

Chapter11 Archaeology of World War 2 :The Lancaster bomber of Fleville(Meurthe-et-Moselle, France)Jean-Pierre Legendre.

J.P.レジェンドレ氏は、フランス、ロレーヌ地方の考古学保護技官のようである。

1997年7月23日、フランス北東部ドイツ国境に隣接するムル=テ=モゼール県の県庁所在地ナンシー近郊のフレヴィーユで、道路構築中に大量の金属片が検出された。すぐさま交通が遮断され、爆弾処理班が駆けつけたが、見出されたのは金属片ばかりであった。付近の聞き取り調査および詳細な発掘調査がなされ、金属片に記されたロット番号などから、当該物件はイングランド、リンカーンシャーのノースキリングホームを基地とする第550飛行中隊所属のランカスター爆撃機「RA502」であることが特定された。

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10 証拠物件 [近現代考古学]

Chapte10 Bodies of evidence:(121-125)、V.Buchli & G.Lucas

1849年ハーバード大学医学部教授が多額の借金を負った相手を殺害し、その証拠物件として焼却炉から頭蓋骨片と入れ歯が検出され、同僚である医学者チームが残留物を検証することで事件を解決に導いた。これが「法人類学」(forensic anthropology)最初の事例と言われる。そこから「犯罪における死体」(the corpus delicti, the body of the crime)という鍵概念が導き出された。

そう、菊池氏が言うように(菊池1985「総論 -考古学の研究-」【06-02-10】参照)、あるいは鈴木氏が言うように(鈴木1984「考古学とはどんな学問か」【06-02-07】参照)、考古学の研究方法は、犯罪捜査における鑑識の方法と対比しうる。と言うよりも、今ではもはや先史的考古学に対するアナロジーという意味ではなく、犯罪捜査そのものが考古学における一分野である法考古学(forensic archaeology)として確立している。

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9 黒人小作農と白人学友会 [近現代考古学]

Chapter9 Black sharecroppers and white frat boys: living communities and the appropriation of their archaeological pasts.(L.Wilkie)108-118.

ウィルキーは、カリフォルニア大学バークレーの人類学部所属である。

今日の社会は、20世紀初頭における私たちの経験、すなわち人種主義、経済的社会的不平等と分かち難く結びついている。20世紀初頭の近い過去の考古学は、正に「私たちの考古学」なのである。

ということで、ルイジアナにおけるアフリカ系アメリカ人小作農共同体であるリバーレイク大規模農場およびカリフォルニア大学における大学学友組織という対極的な二つの事例が述べられる。

ともにインタヴューの在り方、オーラル・インフォメーションと考古記録との対応関係などに記載の重点が置かれ、これでも考古学に関連する論文なのか、と思わざるを得ない内容なのだが、その背景には、歴史考古学あるいは近現代考古学に関する北米での厚い堆積がある。

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8 1913-14年コロラド炭鉱事件の考古学 [近現代考古学]

Chapter8 Archaeology of the Colorado Coal Field War 1913-1914.(The Ludlow Collective)94-107.

ラドロー集団とは、アメリカ・ニューヨーク州立大学ビンガムトン校をはじめ、デンバー大学、フォート・ルイス・カレッジなどコロラド炭鉱事件プロジェクトに参加している共同体名のようである。

1914年4月20日、コロラド州ラドローの炭鉱採掘現場に発生した大規模な争議行動に対して、コロラド州政府軍(Colorado National Guard)が機銃掃射を行い、女性2人・子供11人を含む20人が殺された。世に言う「ラドローの虐殺」(”Ludlow Massacre”)である。単なる争議(strike)ではなく、戦争(war)と称される所以である。

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7 新生・南アフリカにおける記念の政治学 [近現代考古学]

Chapter7 The politics of remembrance in the new South Africa.(D.Hart and S.Winter)84-93.

ハートは南アフリカ遺産資源庁(SAHRA)、ウィンターはエーツ&ウィンター商会?の所属である。

1994年に全人種が参加した総選挙が実施され、ネルソン=マンデラが大統領に就任した。同時に文化遺産管理のために全国記念物協議会(the National Monuments Council : NMC)が設立され、旧来の国指定記念物(National Monuments)を見直すことになった。
古い政治体制が設定した基準によって選定された文化財が、新たな政治体制に変容することで、文化財選定基準自体がどのように変化したのか。そこには主要なイデオロギーを反映した文化財登録の有様が映し出される。

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