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7・27講演学習会「返還考古学という視座から」 [研究集会]

7・27講演学習会「返還考古学という視座から」(五十嵐 彰)

日時:2019年 7月 27日(土)13時半~17時
場所:豊島区南大塚地域文化創造館 2階 第2会議室(豊島区南大塚2-36-1)
共催:ピリカ全国実関東グループ・東大のアイヌ民族遺骨を返還させる会

「安倍政権は、2020年4月24日の白老「民族共生象徴空間」・「慰霊・研究施設」開設をもって遺骨返還運動を封じ込め、「アイヌ政策」を完了しようとしています。アイヌ民族の権利が何ひとつ明記されていない「アイヌ新法」(4月19日成立)も、様々な条件をつけた文科省発表の「遺骨の地域返還ガイドライン」(4月26日発表)も、アイヌ民族の要求に真に答えたものではありません。
私たちはこの間、東大が略奪したアイヌ民族遺骨のコタン(郷里)への返還を要求して、東大に対する申し入れ、集会・デモ、学習会に取り組んできました。今回は、日本の考古学研究の実態・問題点、特に遺骨返還についての問題点を学習して、今後の遺骨返還運動に活かしていきたいと思います。」(案内チラシより)

「…もともと人類学者らにはアイヌ民族は「劣等」だとする差別観がまずあって、その差別観を証明するために研究をし、それに見合う結論を引き出す、そしてその結論にもとづいてまた研究する、この繰り返しで差別を拡大し、日本民衆の差別感をうち固める、そのために人類学研究はあるのだと。」(三木 ひかる2017「遺骨が告発する「明治150年」 -アイヌ民族の遺骨が告発する国家の民族抹殺政策と大学・学問の研究奉仕-」『アイヌ民族の遺骨は告発するⅡ -コタンの破壊と植民地支配-』遺骨をコタンに返せ! 4大学合同全国集会報告集:9.)

「遺骨の返還とは、まず遺族にとって、人権の進展にとって大切なものですが、歴史の総括にとっても重要なものです。遺骨収奪が行われた歴史背景を凝視しなければならないということです。18世紀末に欧州で自然-形質人類学が誕生していきますが、これは欧米を「文明圏」、それ以外の地域を「未開」視し、そこの人々・文化の解明を指向したものであります。それゆえ既に「差別性」が包含され、人間の優劣をその形質(形態、体質、血液型など)で判断するというものでした。そして19世紀末から帝国主義が勃興し、その国家は自国民を動員するための「帝国意識」<帝国の植民地支配を当然化し支える意識>に形質人類学が利用され、その結果、対象とされた人骨・文物の収奪に猛威が振るわれたわけです。但し現代では形質人類学の、先のような考えの差別・非科学性は誤りであると確認されています。結論を言えば”収奪遺骨の放置は帝国主義の未精算”だ、という認識が必要であります。ですから遺骨返還は歴史の過ちを克服していく作業でもあるのです。そしてこの「帝国主義の清算」こそは、今後の日本が変わっていく重要課題なのであります。」(林 炳澤(イム・ピョンテク)2017「東学農民軍リーダーの遺骨返還の取組みから」前掲書:19.)

「北海道内で遺跡調査などの際に発掘されたアイヌ民族の遺骨が、アイヌのルーツを調べるDNA研究に使われていたことが(2017年2月)26日、関係者への取材で分かった。北海道アイヌ協会が、遺骨を保管する札幌医大(札幌市)と覚書を交わし、研究も了承。ただ発掘地域のアイヌは、覚書や研究について知らされていないと反発している。」(『琉球新報』2017年2月27日)

日本人の遺骨を日本人のルーツを調べるDNA研究に使用するために、医科大学と県知事や市長が交わした覚書に基づいて、遺族には通知しないといったことが有り得るだろうか?
これは、開発行為によって和人とアイヌ民族の墓地が見つかった場合に、和人の遺骨や副葬品は直ちに関係者に通知して改葬したのに対して、アイヌの遺骨は医学部に、副葬品は文学部に送られたというかつての差別的な取り扱いと同質ではないのか?

「過ぎ去った他者を知ることが、自己認識の契機となる。そのことを通じて、初めて自己を表現することが可能となる。どのような過去を排除するのか、どのような過去を対象とするのか。存在しなかったことにされているのは、どのような痕跡で、それはなぜなのか。私たちが繰り返し執着しているのは、どのような痕跡で、それはなぜ好まれているのか。過去からの呼びかけに対する応答の在り方に、表現者の思考と感性の質が現われる。単にナイーブに遥かな過去を明らかにすることを自己目的とするのではなく、あるいは「日本考古学の特色である精密な技術をより精密にし、より精緻な機能的推論を積み重ねること」(横山1985:14)といった従来の研究指針を強化する方向にではなく、研究主体である自らと研究対象である他者との相互関係から「日本考古学」という社会的行為を読み直さなければならない。」(五十嵐2008「「日本考古学」の意味機構」『考古学という可能性』:30.)

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