LYDON & RIZVI 2010 HANDBOOK OF POSTCOLONIAL ARCHAEOLOGY [全方位書評]
ジェーン・ライドン&ウズマ・リズヴィ編 2010 『ポストコロニアル考古学ハンドブック』
世界考古学会議(WAC)ハンドブックシリーズ第3巻 レフト・コースト出版1.はじめに:ポスト植民地主義と考古学
ジェーン・ライドン(モナシュ大・オーストラリア)、ウズマ・リズヴィ(プラット研究所・アメリカ)
第1章:植民地に対する考古学的批判:グローバルな方向性
2.植民地主義とヨーロッパ考古学
アルフレッド・ゴンザレス(スペイン系科学研究協議会)
3.オリエント考古学:帝国的過去、ポストコロニアルな現在そして脱植民地的将来の可能性
ベンジャミン・ポーター(カリフォルニア大)
4.我らの語りを語る:アニシナベ族の観点から、考古学的実践の植民地化と脱植民地化
ソーニャ・アタレー(インディアナ大)
5.南アジア考古学における植民地的遺産
ディリップ・チャクラバルティ(ケンブリッジ大)
6.非植民地化と植民地化という植民地経験:主に日本から見た東アジアの事例
溝口 孝司(九州大)
7.日本の神話的故郷の遺跡再興:朝鮮半島における植民地考古学調査と遺産ツーリズム
裵 炯逸(カリフォルニア大)
8.植民地とポスト植民地であるソビエト(USSR)の考古学
(故)パベル・ドルハノフ(ニュー・キャッスル大)
コメント
9.ポスト植民地考古学の主体と科学
アニア・ルムバ(ペンシルべニア大)
10. 考古学は21世紀に入った
トーマス・パターソン(カリフォルニア大)
第2章:植民地主義の考古学的語り
11. 新たな考古学的物語を書く:北アメリカの先住民
ステファン・シリマン(マサチューセッツ大)
12. 歴史的オーストラリア先住民の考古学
アリステア・パターソン(西オーストラリア大)
13. 解放そして自由:アフリカ系離散民のポストコロニアルな考古学の構築
テレサ・シングルトン(シュラキース大)
14. アイルランド考古学におけるポスト植民地主義との出会い
チャールズ・オーサー・ジュニア(イリノイ州立大)
15. ポストコロニアルな諸考古学に対するアフリカ的な見方
ピーター・シュミット(フロリダ大)&カレガ・ムネネ(合州国国際大・ナイロビ)
コメント
16. インドにおける考古学調査とポストコロニアル考古学の科学
アシシュ・チャーダ(エール大)
17. 植民地の影
ヒューゴ・ベナビデス(フォーダム大)
第3章:過去に関する表明/再措定:回復、返還そして倫理
18. アメリカにおける返還:NAGPARAの現状
ジョン・デーク(スタンフォード大)&エイミー・ロネトリー(カリフォルニア大)
19. 返還:オーストラリアの見方
マイケル・グリーン(オタゴ大)&フィル・ゴードン(オーストラリア博物館)
20. 先住という権利、考古学、法に関するオーストラリアと国際的な視野
ピーター・ベス(オーストラリア国立大)
21. 文化財:国際主義、倫理そして法
アレクサンダー・バウアー(ニューヨーク市立大)
22. 世界を見る新たな博物館学的方法:レバノン博物館における脱植民地化した考古学
リナ・タハン(リーズ首都大)
コメント
23. グローバルな返還論議と新しい「普遍的な博物館」
マグナス・フィスケージョ(コーネル大)
24. 考古学と文化遺産(ヘリテージ)における「エミック」と「エティック」の有効性
ジュスト・フォンテーン(エジンバラ)
第4章:コロニアルそしてポストコロニアルなアイデンティティ
25. ジェンダーとセクシュアリティ
ルイーズ・ストロベック(ランド大・スウェーデン)
26. 文化的アイデンティティとコロニアル、ポストコロニアルな諸考古学
サラ・クラウシャー(ウェスレアン大)
27. 階級アイデンティティとポスト植民地主義
ゲイビン・ルーカス(アイスランド大)
28. 人種と階級
ポール・マリンズ(インディアナ大)
コメント
29. 彼女の声を見出した考古学者:コロニアルそしてポストコロニアルなアイデンティティに関するコメント
ホイットニー・バトル-バティスト(マサチューセッツ大)
30. 新世紀における考古学、祖先の遺体、アメリカ先住民のアイデンティティ:コロニアルそしてポストコロニアルなアイデンティティに対するコメント
ジョン・ノーダー(ミシガン州立大)
第5章:戦略と実践:ポストコロニアル批判の履行
31. ユカタン半島のXcalakdzonotにおける共同体遺産とパートナーシップ
フェルナンド・アームストロング(スミス大)&フリオ・グティエレス
32. オーストラリア北東部トーレス海峡におけるパートナーシップ考古学と先住民祖先の契約
リアム・ブラディ(モナシュ大・オーストラリア)&ジョー・クラウチ(同)
33. 文化的インターフェイスにおける考古学的実践
マーティン・ナカタ(シドニー技術大)&ブルーノ・ディビッド(モナシュ大)
34. 民族誌的介入
リン・メスケル(スタンフォード大)
35. 植民地主義、葛藤、連帯性:ガラス瓶の中のパブリック考古学のメッセージ
サンドラ・シャム(カソリック大)
コメント
36. 大衆が関心を寄せる人類学:活動と結び付いた契約調査のためのモデル
ペギー・リーブス(ペンシルべニア大)
37. 文化資源管理、パブリック考古学、擁護
キャロル・マクデビッド(共同体考古学調査研究所)&フレッド・マギー(フレッド・マギー社)
38. おわりに:ポスト植民地主義と考古学
ウズマ・リズヴィ&ジェーン・ライドン
文化財返還と「日本考古学」という観点から、少しずつ読み進めている。
そうした意味で、#6と#7の視点の違いに注目している。
そこには、第3章(#18~#24)における視点が、それぞれどのように受け止められているのかということが反映しているだろう。
一般社団法人日本考古学協会2010年度理事会が議案第30号において表明した姿勢が、「世界考古学」という見地から問われている訳である。
「日本考古学」は、全国の考古学研究室あるいは大学博物館の収蔵庫に眠る<モノ>たちからの問い掛けに対して、どのような応答責任(リスポンシビリティ)を果たすのか、あるいは素知らぬ顔をし続けるのか。
WAC招致とも関連して、差し迫った問題である。
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