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五十嵐2012「型式組列原理再考」 [拙文自評]

五十嵐 彰 2012 「型式組列原理再考」『縄文研究の新地平(続々) -縄文集落調査の現在・過去・未来-』小林 謙一・黒尾 和久・セツルメント研究会編、考古学リーダー21、六一書房:223-234.

「細かいことに熱中する等個人的な傾向が強いメンバーが多いこともあり、一つのテーマにこだわりがちな事が多いが、個別のテーマは総体として先史を含む人類社会解明へ向けての方途であり、物質文化研究の統合化が第一の目標である。そのためにも、五十嵐氏には井戸尻編年の位置づけを含め、集落調査史から遺物研究・編年研究への横断的な視点として、型式論への提言を頂いた。今後の方向性の一つとして模索していきたい。」(小林謙一「序 -縄文集落研究の新地平の15年を巡って-」:6.) 

「即物的で細かい話題提供が中心になりがちな「新地平グループ」であるが、「私たちに要請されているのは、諸型式の組合せから物質文化の同定という方向性を志向する<もの>の製作時間に基づく<もの>組列に対して、<もの>の廃棄時間に関わる<場>組列の関係を明らかにしていくことであり、このことは<場>と<もの>の相互関係を明らかにする考古学という学問の根本問題である」というまとめは、示唆にとみ、納得がいく。」(黒尾和久「結 -縄文集落研究の足場-」:238-9.)

どうも「細かい」に対応する構図が示されているようであるが、当人としては少し「的外れ」との思いがしないでもない。

「ここから、「型式組列」の「平行性(Parallelismus)」(同:31)へと至る論理階梯についても、若干引っかかる部分もあるのだが、その解明については、後日に先送りされた課題としておく。」(「考古時間論(補遺)」【2006-09-05】)とした6年前の「課題」が、ようやく提出できた。
しかし、前途はいまだに茫漠としている。私も含めて。
心掛けていることは、あらゆる考古言説について、述べられていることが、遺物時間なのか、それとも遺構時間についてなのか、さらにはその中の製作時間なのか、それとも廃棄時間についてなのかをその都度、しつこいほど自問しながら考えていくということである。

「集落を土器で編年すると、どうしてもある程度幅を持った、例えば30年とか40年、50年、私の年代測定での推定結果ですけども、それでいうと、一つの型式が、20年から7,80年くらいの型式継続期間があると仮定しておきますと、1型式時期の中で重複住居跡例がいくつもあります。要するに加曽利E3式期の集落と言ったって、その土器が出ている住居跡を集めたら、明らかに一緒に建っていない住居跡が同じ土器型式時期の住居グループにあるのですね。これまでの集落研究は極端に言うとそれでよしとする、それ以上分からないからそれでやるという前提だったと思うのですよ。だけども、分かれる住居群は分かれると言った方がいいでしょう、と。」(小林「縄文時代住居調査学史」:36.)

この場合の「加曽利E3式期」とは、どのような「時間」なのか。
遺物製作時間ではないだろう。遺物製作時間から推定された遺構製作時間なのか。そこに遺物製作時間から推定された遺構廃棄時間は含まれていないのか、いるのか。

「埋甕と覆土中層からの出土土器はともに加曽利E2式なのですが、覆土出土の土器には頸部無文帯が無くなっている個体が認められる。ここに型式学的な時期差を想定できそうだ。また覆土から曽利Ⅱ式は出土しているが、連弧文土器は出土しない。23号住の埋没時期は、連弧文土器の出現以前だと考えられるわけです。」(黒尾「多摩における縄文中期集落調査の展望」:93-94.)

この場合の「加曽利E2式」は遺物製作時間であろうが、「23号住」の遺構製作時間は「加曽利E2式」、遺構廃棄時間は「曽利Ⅱ式」とすることができるだろうか。このように遺物製作時間によって示される推定される遺構製作時間と遺構廃棄時間が遺物製作時間の示す新旧関係と対応している「正順関係」は、どの程度あるのか。そして対応しない「逆順関係」は?

「全く「答えは簡単」ではないのです。古生物のべレムナイトやグロビゲリナで言えることが、考古学では何処まで言えて、何処から言えないのか。勝坂-加曾利なのか、E3-E4なのか、10c-11bなのか、それとも「ミなと藤左衛門」-「泉州麻生」なのか。」(「中西1974」【2006-08-22】のコメントに対するコメントから)

「今日は話ができませんでしたが、旧石器時代の調査をやっている人たちとも、そういった議論ができるかなと思っていますが、旧石器の研究者の方々はなかなか議論にのってきてくれない。」(小林「討論の記録」:153.)

かつて、同一層位内の遺構間の1類接合と、累重する層位間での2類接合の意味の違いについて考えたことがあった(「考古学的時間性」【2008-12-17】)。「<もの>の廃棄時間に関わる<場>組列の関係」とも関わる問題なのだが、4年経過しても一向に議論が深まらない。「土器の細別時期と住居の存続時間に対する認識の齟齬」に留まらない、縄文とか旧石器とかではない(横断的な視点?から)「考古時間」について、根底からそして集中的に問い直す必要がある。


タグ:考古時間
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