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韓国国立中央博物館における核安保首脳会議配偶者晩餐会 [総論]

2012年3月26・27日、ソウルで核安保首脳会議(2012 Seoul Nuclear Security Summit)が53ヶ国および4国際機関の首脳ないしは首脳級首席代表が出席して開催された。26日に国立中央博物館で開催された首脳・首脳級首席代表配偶者晩餐会に関する議論が新聞紙上で紹介されている。

「筆者は私たちの文化遺産が収蔵庫や密閉された場所に保存されているだけであることを絶対に望まない。むしろ積極的に活用して我が国の人々だけでなく、全世界の人々が韓国文化の特徴と東北アジア文化の多様性を享有することを願うばかりだ。ただし文化遺産の活用と享有は万人に平等に提供されなければならないという普遍的享有権(文化権)が土台にあるべきであり、身分や経済力によって享有権が制限を受けてはならないということだ。」(ファン・ビョンウ韓国文化遺産政策研究所長)

「世界50余ヶ国の首脳が参加した今回の国際会議は、外国の主要言論に韓国文化を紹介できる重要な機会だったために我が国歴史文化の代表的機関である国立中央博物館が積極的に立ち上がり今回の配偶者行事を行ったのだ。外国首脳配偶者の影響力を考慮する時、国内最高の文化機関としての主導的な役割が必要だった。」(イ・ウォンボク国立中央博物館学芸研究室長)

ファン氏は、第1に温度・湿度などに敏感な国宝級文化財が特殊な身分の人々の晩餐会のムードを盛り上げるために用いられたということ、第2にどうしても国立博物館で晩餐会を開催しなくてはならないのなら、わざわざ企画展示室を改造しなくても他にホールなどいくらでも相応しい場所は有りうるという。博物館で晩餐会を開催すること自体が問題なのではなく、何のために「どのように活用するのかが重要だ」と述べる。

対してイ氏の論点は、展示品については安全管理を徹底させており問題はなく、なぜ会場として企画展示室を選んだかについては「品格ある文化外交の一環」としてより相応しいと考えたためとする。世界の主要な博物館は近年館内において各種行事が活発に行われる「複合文化空間」を指向していることを指摘する。「世界首脳の配偶者たちと関連した行事はマーケティング中でも最上のマーケティングであり、このような機会は最大限十分に活用する必要がある」という。

どちらの言い分がより正当性を有しているだろうか?
要点は、博物館などの文化施設、それも公的施設の存在意義、何のために設置されているのか、誰のためにあるのかといった本質に関わる。
私は、国立中央博物館が普段から、例えば抽選で選ばれた応募者に対して企画展示室で晩餐会を行う「複合文化空間指向行事」を毎週月曜日に行っており、2012年3月26日はたまたま首脳配偶者たちのためにその場が用いられた、というのならば、何の問題も生じなかったと思う。
しかしイ氏は一般観覧客が利用する常設展示館は今回会場となった企画展示室とは離れていて、一般観覧客には全く不便が無かったことを述べるのみである。そして今回の行事によって「世界首脳の配偶者たちがきらびやかな私たちの文化遺産を通じて私たちの歴史・文化に対する理解の幅を広げることができた機会として理解して下さるように願う」のである。
それならば、何もあえて食事をしながらではなくても、彼ら/彼女たちの「歴史・文化に対する理解の幅を広げること」は充分可能であったと思われるし、ファン氏の言うように「一般観覧客には(展示ホールで)飲み物も飲ませないようにしておきながら」、ある特定の人々に対してのみ「品格ある文化外交」を展開するのは、どう考えても「王侯・貴族たちの展示室」感覚としか言いようがない。

全く他人事ではない。
過日、東京駅において開業時の外観に復旧させる改修工事が最終段階を迎えている旨の新聞報道があった。
是非とも、丸の内駅舎の中央出入口を一般庶民も利用できるようにしてもらいたい。


タグ:博物館
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