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江戸遺跡研究会2006大会(下) [雑]

第2考古学的には、こうしたネットワークを形成する「水道(上下水道)遺構」(木樋・竹樋・井戸・石組溝・浄水場・ダム・マンホールなどなど)の存在性格が極めて興味深い。
木樋・竹樋などの「溝状(網状)遺構」と、柱穴・地下室・墓穴といった「穴ぼこ遺構」との違いは何か?

それは何よりも、前者の連続性(ネットワーク性)と後者の独立性(単独性)にある。これは、ある意味で決定的な違いである。
ある限定された調査区はもとより、一定の屋敷地とか街区といった単位あるいは私たちの都合で括られた<遺跡>範囲をはるかに越えて、延々と、玉川上水について言えば40㌔上流まで連なる一体性なしには存在し得ない遺構なのである。全体を考慮することなく、部分のみを取り上げても意味をなさない。
連続性という観点からは、道路遺構などの交通関連遺構と同じ構造である。横浜停車場あっての新橋停車場であり、新橋停車場だけでは意味をなさないのである。

であるから、「ネットワーク性遺構」(こんな言葉は今まで存在しないが、ここで初めて使ってみよう。水道・電線・ガス管・道路・線路、はたまた光ファイバーに至るまで、ある物質・エネルギー・情報などを伝送するシステムを維持する物的痕跡とする)を考えると、すぐさま破綻をきたすのが、ある一定の領域を想定してきた従来の<遺跡>概念なのである。

「日本橋一丁目遺跡」と「日本橋二丁目遺跡」の相互関係、そして「神田上水遺跡」あるいは「汐留遺跡」。
ネットワーク性遺構の様々な重複、重なり、錯綜、絡み合いを念頭においたとき、ネットワーク性遺構がこうした様々な<遺跡>をはるかに包含してしまうことが判るだろう。
このように意味合いもレベルも異なる様々な<遺跡>を、私たちはどのように位置付けたら良いのだろうか? 
そして、どのように位置付けるべきなのか?

そう言えば、実家のすぐ近くを玉川上水が流れていて、子供の頃はよくアメリカ・ザリガニを採って遊んでいたっけ。何と、そこが現在調査している愛宕下から出てきた木樋と一体のネットワーク性遺構の一部だったのだ! 今は跡形もなく埋め立てられて、中央高速道路という名前の現代のライフラインを支える物流幹線となっているが。


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