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セリエーション [総論]

セリエーションとは、何だろうか?
代表的には、以下のような説明がなされている。

「<学習目標&ポイント>
身辺の流行現象を見ればわかるように、モノは突如出現するわけでもないし、それ以前からあった同種のモノに直ちに置き代わるわけでもない。新しいモノは次第にあるいは急速に台頭し、それに合わせて、古いモノは次第に姿を消す。こうしたモノの変遷を視覚的・数量的に示す手法がセリエーションである。アメリカ考古学で開発されたこの手法を、具体例を挙げて解説し、日本における応用例から、その方法論的可能性を示す。」(上原 真人 2009 「セリエーションとは何か」『考古学 -その方法と現状-』放送大学教材:129.)

そしてペトリ―氏のSD法(Sequence Dating)、ディーツ氏のストンハム墓地墓標、坪井・横山両氏の山城木津惣墓墓標、鈴木氏の近世六道銭分析と型どおりの説明がなされている。
こうした説明に何か欠けているものがありはしないだろうか?

セリエーションという手法について最近では「型式」と「様式」の相互関係を論じる文脈でも言及されていたし(宮里 修2017「考古年代学の基本単位が「型式」であることについて」『高知考古学研究』第1号:1-11.)、学生の所有する硬貨の発行年代を調べるという論考も現われた(小林 謙一2017「一括資料の組成比に関する予察」『理論考古学の実践 Ⅰ理論篇』同成社:305-322.)

しかし何かが抜け落ちているような気がしてならない。

それは、縦軸の配列指標が資料に記された製作時間でありスリット(一括性の100分比で表示される)の上下配列が固定している【墓標タイプ】(例えばストンハム墓地墓標や山城木津墓標)とスリットは廃棄の一括性であり各類型の滑らかな紡錘形を目的に縦軸の配列を自由に操作できる【先史土器タイプ】では、その構成原理が基本的に異なるのではないかという疑念である。
ところが、そうした事柄について記した考古学の概説書は、残念ながら見当たらない。
見い出した唯一の記述は、以下のものである。

「冨井 眞は、セリエーションに「二つの側面」があると説明する。「一つは、既に時間軸上の配置が決定した資料群に対する歴史解釈手段であり、いま一つは、時間軸上の配置を決定できない資料群に対する年代決定手段である」(冨井2012、31頁)。」(白川 綾2017「空間的セリエーションの実践 -北白川C式を素材として-」『日本考古学』第43号:4.)

ここで引用されている論文(冨井 眞2012『先史土器の型式学的編年の論理的前提と現実的活用』学位請求論文)については残念ながら未だに目にすることができていないが、セリエーションという手法の本質に触れた数少ない事例のように思われる。

こうした視点から検討するとセリエーション研究における顕著な事例として取上げられることの多い六道銭研究(鈴木 公雄1999『出土銭貨の研究』)は、銭貨型式の初鋳年代で区切られた型式時間単位内において初鋳銭貨の出現期カーブの円滑さを優先して配列するという、【墓標タイプ】と【先史土器タイプ】を両極とする中間的な様相を呈しているようである。

同じようなことは、先史土器を資料としつつスリット配列について廃棄単位(層序関係)を用いた場合(例えば岩田 安之2011「頻度のセリエーション、系統のセリエーション、流行のタイムラグ -青森県縄文時代前期後半期における土器の分析-」『考古学と陶磁史学』:200-218.)などについても言いうるだろう。

<もの>の型式的な変遷を説明する際に、事例として採用されたスウェーデンの鉄道客車の型式組列。
それと同じような感覚で受け止められたストンハム墓地墓標あるいは山城木津墓標の事例。
しかし両者の位相は、大きく異なるものと考えざるを得ない。
未だに解明すべき課題(学習目標&ポイント)は、数多い。


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