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大型石棒の謎に迫る! [研究集会]

シンポジウム「大型石棒の謎に迫る! -緑川東遺跡調査から見えてきたこと-」

日時:2014年11月30日(日)13:00~16:00
場所:くにたち郷土文化館 講堂(東京都国立市谷保6231)
くにたち郷土文化館開館20周年秋季企画展「くにたち発掘」関連事業
基調報告「緑川東遺跡第4次発掘調査について」清水 周
パネリスト:和田 哲・黒尾 和久・建石 徹・長田 友也

今年初春に行われた同様のシンポジウムおよび夏に出版された緑川東遺跡の考古誌批評の際に提出した宿題の答えを聞きにいった訳である。
すなわち、敷石遺構から見つかった4本の大形石棒の並置は、遺構構築時なのか、それとも廃棄時なのかという解釈の導出根拠に関する問いである。

基調報告をされ、また図録を執筆された担当者は、「…一度は住居として使用した後、床の敷石を剥がし石棒を設置したとする見方もあります」とあくまでも中立的な立場を示されている(清水 周2014「緑川東遺跡」『くにたち発掘 -最近の発掘調査から-』くにたち郷土文化館:13.)。
ところが、同じ図録に寄稿されている研究者は、春のシンポジウムあるいは刊行された考古誌と同様に「見方もあります」の方の意見を維持されているようだ。

「…石棒は敷石遺構の床面から約10cm前後めり込んだ状態で出土しており、4本の石棒を並べるために敷石部分を取り除き、その後に浅く掘り下げ、石棒を並べた可能性が考えられています。
…4本の石棒は敷石遺構が構築された時期には並置していなかったことが考えられます。もっとも、敷石遺構の構築材として石棒が敷かれた可能性も考えられますが、4本もの完形石棒を敷き並べたとは考えにくく、また敷石の間隔に対して石棒と隣接する敷石の間隔が不規則であることなどからも、敷石遺構の構築材ではなかったものと考えられます。」(長田 友也2014「緑川東遺跡の敷石遺構出土の大型石棒について」『くにたち発掘』:39.)

前回の記事以来、「敷石部分を取り除き」「4本の石棒を並置した」根拠を尋ねていたのだが、今回も明確な返答は得られなかった。
敷石遺構構築時に「4本の石棒を敷き並べたとは考えにく」い根拠は不明だし、「石棒と隣接する敷石の間隔が不規則」というのも構築時並置説を棄却するほどの蓋然性を有するとは、それこそ「考えにくい」。
結局は、筆者も記されているように「緑川東遺跡例の出土状態からは、”敷石遺構内に4本の完形石棒を並置した”という点のみが指摘されるに留まります」(40.)というのが妥当な結論だと思うのだが、こうした結論と前述の「敷石部分を取り除き」や「敷石遺構の構築材ではなかった」がどのように整合性を有するのかが理解できなかった。

会場では、大型石棒の「使用」についての議論もなされていたが、これまた誰も確言はできないのではないか。機能や使用方法が分からないからこその「第2の道具」なのであって、立てて用いられたのか、寝かせて用いられたのか、それとも斜めにぶら下げて用いられたのか、そんなことは誰も見てきたようなことは言えないのではないか。
そもそも「第2の道具」である石棒の「使い方」をあーだのこーだの単一であることが前提のように議論すること自体が如何なものかと思うのだが。

結局、4本の大型石棒があのようにあそこに埋められた経緯はもとより、埋められたことそのものの意味について誰もはっきりとしたことは述べられなかった訳だが、ここで一つの仮説を提示しておこう。
それは、4本の大型石棒の先端が指し示す方向である。
「…敷石遺構の主軸方位が奥壁を南西方向にとることで、本遺跡の敷石住居が大部分北を中心に主軸を置くのと極めて対照的である。」(和田 哲2014「緑川東遺跡の敷石遺構と石棒」『くにたち発掘』:36.)

4本の大型石棒が並置された緑川東遺跡の敷石遺構から南西方向約500mには、河川敷幅約500mの多摩川が流れている。現在でも徒歩で渡渉しようとするならば、成人でもそれなりの覚悟が必要な1級河川である。縄文時代には現在よりも更に流量が豊富で、渡渉するのは大事業であったに違いない。4本の大型石棒の先端が指し示しているのは、こうした大河川を渡渉するのに何らかの利点があった渡河地点あるいはそうした地点をさらに超えたある種の神話や来歴・故地をも想起させる聖なる方角を指し示していたのではないか?
水銀朱やら外来系土器型式とも関わる話しである。
並んで置かれていることに大きな深い意味があるという一つの仮説である。


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コメント 3

FS3

渡河地点または聖なる方角を指し示していたという仮説を補強しうる類例などはあるでしょうか。
by FS3 (2014-12-04 21:46) 

伊皿木蟻化(五十嵐彰)

大型石棒4本が並置されていたということ自体が類例のないことだと思います。
by 伊皿木蟻化(五十嵐彰) (2014-12-05 05:08) 

FS3

ご教示ありがとうございました。
by FS3 (2014-12-06 23:02) 

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