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縄文文化の食と居住 [研究集会]

中央大学大学院文学研究科 学術シンポジウム
縄文文化の食と居住 -考古学と関連科学の研究成果から-」

日時:2013年9月28日(土) 10時~16時30分
場所:中央大学 多摩キャンパス 3号館3114教室
主催:中央大学大学院文学研究科 共催:人文科学研究所

講演
「食の多様性と文化の長期持続性 -縄文から学ぶ-」(羽生淳子)
「民俗例による竪穴住居の寿命と食生活」(武藤康弘)
「縄文文化の土地・資源利用の相対化」(高瀬克範)
コメント
「縄文深鍋のススコゲからみた台所構造」(小林正史)
「炭素同位体分析による居住期間・住居の寿命と生業」(小林謙一)
質疑・討論

趣旨: 考古学は発掘によって遺跡や遺物を用いて過去の生活を明らかにする学問であるが、考古資料はそれだけでは歴史を物語るすべを持たない。考古学者は、民族学・民俗学・文化人類学の成果による援用や近年発達が著しい自然科学分析、さらに使用痕研究や実験考古学といった様々なアプローチによって学際的に研究を進めることで、過去の社会を明らかにしようとしている。今回は、日本列島に1万2千年以上の長きにわたって展開していた縄文文化の「食・住」を題材に、一線の研究者が一堂に会して多面的に掘り下げる。特に生業や環境との関わり合いを中心に、縄文時代最盛期の食糧資源の獲得と居住形態の多様性の復元を試みたい。

一言で言えば、この「とりとめの無さ」は一体何なのだろうかということ、そのことをずっと考えていた。
確かに「一線の研究者」が「多面的に掘り下げ」ていた。そしてそれぞれの発表は、確かに発表者の個性が遺憾なく発揮された興味深いものばかりだった。
しかしこのシンポジウムに参加した人々は、歴史生態学や狩猟採集民の居住パターンからトチノミ食の調理方法、ウィグル・マッチングに至る発表を聞いて、「縄文文化の食と居住」あるいは「食糧資源の獲得と居住形態の多様性」について、何かまとまったイメージを抱くことができたのだろうか。
本来は、それぞれが独立したシンポジウムを構成しうるような研究主題のように思われる。
コメントと題された発表にしても、どの発表に対するコメントなのか、最後まで理解が困難であった。
いろいろな経緯があって、こうした主題が選ばれ発表者が構成されたのであろう。

従来のこうした研究集会とは、異なる何かがある。
例えば旧石器時代の生活【2013-02-20】あるいは縄紋時代の環状集落【2013-02-27】といった従来型の研究集会とは異なる何かが。
それは、今回の発表者たちが、従来の伝統的な研究とは一線を画した独自の研究を推進してきた、推進している人々で構成されているという点にある。
だから、そうした人々の共通点は、大きな意味での「縄文」とか「食と居住」という雑駁なタームでしか括れないし、全体印象としての「とりとめの無さ」はそうした意味で必然でもあったのだ。

こうした研究発表を取りまとまる質疑・討論の困難さは、容易に想定できる。
実際になされた質疑・討論にしても、研究者からの質疑として、縄紋後晩期の人口減少の評価あるいは縄紋時代の時期区分問題といったある意味で従来から延々となされてきた伝統的な主題を巡って初めて発表者間での話しが噛み合ったという点で、あるいは一般の方からの質疑として近現代考古学に対する疑問という本来の集会の主題とは全くかけ離れた質問が出されたという点からしても、こうしたオムニバス型研究集会の抱える困難さが象徴的に示されていたように思われた。


タグ:縄紋
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