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先行デザイン宣言 [痕跡研究]

未来は見えない
けれど
過去は見える

デザインとは この歴史の非対称性を引き受けることだ

線はすでに引かれている
差しもどせ デザインを
振りだせ 物を

わけ知り顔にたたずむ 物たち
無言の 先住民たち
今 君たちを見つけだす
何万年もだまされ続けてきたけれど

物を生み出したのは 物だ
先行するのは 物 その形態
すべての理由(わけ)は形態が知っている

機能は形態を持たない
形態にこそ 問いと答えがあるからだ
ゆえに 機能は形態に従う

形態は時間に方向を与え
つまり未来と過去の順番を定める

わたしたちは
それを手にする方法を「先行デザイン」と名づけ
その開発と展開に 世界への希望を託す

2004年11月11日「先行デザイン宣言」『10+1』第37号、INAX出版:65.

「まだ見ぬ参加者たちへ
先行デザイン会議開催のお知らせ
世界の混迷はますます深まるばかりです。このような世の中においてもなお信じるに足るべきものがあることは、幸いです。それはすでにできてしまった<先行物>です。計画道路を曲げる古墳、タウンプランニングを左右する条里制、これはいずれも優秀な先行物です。
このたびそのような先行物が多く存在する近畿圏にて、これらのモノモノとより深くつき合うデザイン手法を構築しようと、2つの組織「都市連鎖研究体」と「環境ノイズエレメント」とがデザイン会議を行なうことになりました。きわめて具体的な場所を扱っていますが、すべてに普遍的な問いが潜んでいます。どうぞよろしくご検討のうえ、ご参加賜りますようお願い申し上げます。」

ということで、「環境ノイズチーム」13人と「都市連鎖研究体」13人が4日間にわたる「先行デザイン会議」を開催した上で、発表された「先行デザイン宣言」。
そこに漲るのは、新たな発想で、新たな領域を作り出そうとする若々しいエネルギーである。
第2考古学会議が目指しているものそのものなのだが、こうした精神こそが現在の「日本考古学」に最も欠如していると思わざるを得ない。

「かたちというものは、必ずしも意識的に守られるものではない。知らず知らずのうちに残存してしまうものである。地形にせよ、人工物にせよ、人間は目の前にある事物と常に向き合っている。それらはつねに意味を見出され、機能が付与され続けている。しかし、時間の経過のなかで、その意味は忘却され、あるいは変化していずれは消え去り、ただかたちのみが機能を超えて継承されていく。今、目の前にある都市とは、先行して存在する事物が、時間のなかで折り重なるようにして積み上がったものにほかならない。それは意味あるいは機能の集積としてよりも、かたちの集積として存在している。」(清水 重敦2004「先行デザイン論」『10+1』第37号:67.)

都市史研究としての都市空間史研究から、場所論、都市類型化論、都市建築史、そして都市連鎖分析から都市空間の二重構造論へ。
「形態には必ず因果関係がある。」(149.)

「かたちの堆積として存在する都市において、形態は機能とは別個に存在するものとして認識すべきである。ゆえに都市空間は、コンテクストという一見具体的でありながらその実曖昧な概念によってではなく、かたちそのものに限定して読解されるべきであろう。われわれは、事物のかたちを機能から理解する方向性ではなく、そのかたちがいかなる転用可能性を持つか、言い換えればいかなる資材性を持つか、という視点を導入した。また並行して、必ずしも特異ではない、類型化された都市形態に対し、その成立と変容の根源を追い求めることとした。後者の視点は、都市形態を類型化する都市史の一般的方法論と類似する面を持つ。だが、場所論にせよ、コンテクスチャリズムにせよ、場所の特異性を一枚ずつ剥ぎ取っていく手法では、かたちの成立プロセスへと迫っていくのには限界がある。それに対し、われわれが提示しようとしたのは、都市形態を理解するために、その背後に、都市形態成立の根源を読み解いていくという手法である。かたちの資材性、かたちの成立と変容のプロセスという視点は、形態が存在し続けることの仕組みを説明してくれる。すると、このようにとらえることも可能となろう。かたちこそが、歴史を決定してきたのだと。」(同:69.)

ここで述べられている「都市」という用語は、全て「遺跡」に置き換えることができる。
何せ、向こうは目に見える都市空間の深層構造に目を向け、レイヤーの重なり合いの先に、先行デザインを見出しているのである。大地に埋没した人間活動の痕跡を掘り出し、再構成している考古学が、そうした動向に感応しないはずがない。それなのに「日本考古学」の大勢は、<もの>を時空間軸に配列することに多くのエネルギーを注いで止まない。


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