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黄壽永編1973『日帝期文化財被害資料』 [全方位書評]

待望の資料集の日本語訳がようやく完成!
『日帝期文化財被害資料』 考古美術資料第22集 韓国美術史学会刊 黄 壽永(ファン スヨン)編
(元韓国国立中央博物館長・東国大学校総長・日韓会談文化財小委員会首席代表、2011年2月1日逝去)
日本語版 李 洋秀(イー ヤンス)・李 素玲(イー ソリョン) 共訳・補編
「1959-1964年の日韓会談文化財返還交渉で代表委員を務め、日本に返還を強く主張した韓国美術史研究の第一人者が地をはうような収集活動と20年の歳月をついやして完成させた貴重な資料集」<李 亀烈著『失われた朝鮮文化』(新泉社刊)南 永昌解説から>。1973年にガリ版刷りで200部だけ限定発行された貴重な資料集を完全復刻、日本語に翻訳。21世紀に遺された文化財返還の課題を網羅した研究者必読の書がようやく読めるようになりました。引用された資料も検証、追補しました。(B5版・縦書・163頁)
・限定非売品ですが、送料込・カンパ一口1000円で希望者にお頒けしています。下記にお申込み下さい。 
Fax 03-3237-0287 Tel 03-3237-0217 E-mail:kcultural_property@yahoo.co.jp  〒102-0074 千代田区九段南2-2-7-601 韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議 郵便振替:00140-9-607811
(以上、案内チラシより)

「この冊子は、韓国美術史学会刊行の故黄壽永先生編集『考古美術資料 第22集』「日帝期文化財被害資料」(1973年1月25日発刊、限定200部印刷)を1968年11月15日韓国美術同人会発行の金 嬉庚(キム フィギョン)先生編『考古美術資料 第20集』「韓国塔婆研究資料」等も参照して、黄 壽永先生の遺族及び韓国美術史学会の許諾と協力を得て、今回初めて日本語に訳されたものである。
本来、参考文献等を表にして示すべきだが、この冊子自体が種々の資料等を引用した参考文献表の性格を持っている。
また原本には一部の絵図を除き、写真の挿入は一枚もない。そして元の文は日本語で書かれた資料、書籍、新聞、研究論文等の引用が大部分なので、翻訳、編集にあたっては、できる限り日本語の原典にあたり、元の文をそのまま引用するように努めた。また原本では元の文章が余りにも簡略に省略され、単語の羅列だけで前後関係の理解が難しい部分も少なくないので、元の文をより多く引用し、写真等も複写した。」(「はじめに」訳・編者から)

「こんにち、日本国内にある外国、とりわけ中国・朝鮮の文物が、どの様な経緯のもとで日本国内へ持ち込まれたものであるのか、正しい理解を示す人々は圧倒的に増えつつある。中・朝人民に向けられた帝国陸軍の銃剣の庇護のもとで、最も大切な民族のこころを、最も悪辣な強盗行為によって持ち込まれたものである事を。
過去の日本考古学の犯罪は、こんにちになっても決して許されないし、僕達はその負債を負わねばならない。僕達は、この親の負債を返すべく具体的準備をすすめたいと思う。この事は、実に帝国主義本国人民として、被侵略国人民に対するつぐないであり、そしてまた、最も重大な仕事の一つでもあるだろう。略奪文物は、近い将来必ずや各国人民に返還されねばならない。
僕達は、具体的な準備としてまず手始めに「韓国」で出版された、帝国陸軍と日本考古学の犯科帳―考古美術資料第22輯 黄寿永(ファンスヨン)編「日帝期文化財被害資料」1973年1月 韓国美術史学会刊―の訳出を連載する。」(岡本俊郎1977「略奪文物を各国人民に返還しよう!」『見晴台のおっちゃん奮闘記』1985所収:127-8.)

「これまでも「市民の会」で細々と続けられてきた翻訳作業を、参加できるみなさんと共にがんばってやってみよう、と思っています。
その本は、黄 寿永(ファン スヨン)編「日帝期文化財被害資料」といい、1973年、韓国美術史学会が発行したものです。現在「文化財」と日本で呼ばれているものが、ほとんど中国・朝鮮から略奪したものであることを思えば、これはいわば、帝国陸軍・日本考古学の「犯科帳」です。
この訳出が、略奪文物返還の具体的準備となるよう、始められた翻訳作業ですが、ひとりでも多くのみなさんと、継続してぜひやろうと思います。」(岡本俊朗1977「帝国陸軍・日本考古学の「犯科帳」翻訳に参加しませんか?」同上:130.)

1970年代に「在日朝鮮人への差別撤廃を!名古屋市民の会」で「細々と続けられてきた翻訳作業」がその後、中断し、それから40年の歳月が経過した後に、その志しが別の市民団体に引き継がれて、このたびようやく日本語版が完成した。日本語原本を編集してハングルに訳した原書をさらに原本を参照しつつ追補して訳出するという困難な作業である。将来的には未確認の総督府資料なども追補したハングル版も新たに出版される計画とのことである。今回の訳兼編者は、お二人とも在日の方で、岡本氏が「帝国主義本国人民の当然のつぐないであり、最も重大な仕事の一つ」とした作業において日本人が主体的な働きをなすことができず、さぞかし天国で怒られていることだろうと想われる。私も僅かな図書館資料の複写を訳者のもとへお送りするといった正に微々たるお手伝いしかできず、恐縮の限りであるが、今後この「資料集」を一つの起点として、「略奪文物を各国人民に返還しよう!」という呼びかけに答え、同じ志しを持つ各地の仲間と共に所在確認調査を進めていきたい。

「この資料を今後どのように駆使し、ここに載せられた内容が何を表すのかについて、黄先生はほとんど何も言及していない。それは「この冊子を手にした読者が決める領分である」という、黄先生からのメッセージが聞こえて来そうだ。
初版から39年の長い時間が経過しても、今なおこの資料集の持つ意味は限りなく重い。読まれた方は是非この冊子を手許において、これを基により研究を深めていただきたいと願うものである。」(李洋秀「訳者あとがき」:163.)


タグ:文化財返還
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コメント 2

カラス天狗

遅くなりましたが、「資料集」を手にしました。
確かに「重い」です。
by カラス天狗 (2012-03-28 11:38) 

伊皿木蟻化(五十嵐彰)

「わが国土が日帝に占領され、あらゆる文化の遺産が彼らによって蹂躙された今世紀初半の歴史は、悪夢のようにわれわれの脳裏から離れず、その痕跡はまた容易く癒されはしない」という痛切な思いと、「当(国際交流)委員会の目的と外れる事案であり、諸外国の例からも一学会が扱うべき事案ではなく国政レベルでの事案であることから、当委員会は検討する任ではない」という他人事のような認識との懸隔を直視し続けなければなりません。
by 伊皿木蟻化(五十嵐彰) (2012-03-29 12:55) 

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