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応答(補足) [雑]

ある学会に対して会員からなされた問題提起が「政治的であること」を理由に忌避されるという事態は、世界の考古学会では滅多にない行動様式と思われる。なぜなら現代社会において、個人レベルでは成しえないような課題を取り扱う役割こそが学会という組織に期待されているからである。だとしたら学会が取り扱う課題は、多かれ少なかれ「政治的」なものとならざるを得ないだろうし、むしろ積極的にそうした課題に取り組むことこそが、現代における学会活動として社会的に求められているのである。

陵墓問題しかり、資格問題しかり。
あるいは世界的な研究動向については、世界考古学会議(WAC)におけるセッション・テーマあるいは刊行物である"Archaeologies”の題目を一覧するだけで容易に確認することができるだろう。

別件であるが、協会所蔵図書の海外放出問題に関連して、所蔵図書が海外に存在することをもって「国際交流」とか「国際化」とする言説も散見されるが、真の国際化とは自国にのみ限定される特殊な課題に自閉することなく、世界的に共有される研究課題(例えば植民地主義の清算など)に対して積極的に関与することを言うのだと思う。

そうした意味で今回の「議案第30号」という日本考古学協会理事会が示した対応は、同一組織内における扱いですらダブルスタンダード(二重基準)であり、世界的に見たら極めて「日本的」な対応を世界に示したものと言えよう。

更に言えば「政治的問題が絡むこと」を筆頭理由に挙げて、提起された問題解決に向けて積極的に取り組むことを避ける判断を下した今回の理事会対応それ自体が、極めて「政治的」なものであるということに当事者が気が付いていない(あるいは自覚している気配が感じられない)ことに、事態の深刻さがうかがえる(気が付いていたならば、恥ずかしくてそうした理由を記すことはなかっただろう)。
今後は、現実を直視できない要因を解き明かす作業がなされていくことになるだろう。


タグ:文化財返還
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伊皿木蟻化(五十嵐彰)

「私は、歴史に対して誠実に向き合いたいと思います。」(8月10日発表、首相談話)
私も、歴史に対して誠実に向き合いたいと思います。
しかし残念なことに、日本考古学協会6月理事会議事録「議案第30号」という文章からは、そうした「歴史に対する誠実さ」というものを感じ取ることができません。
「歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みることに素直でありたいと思います。」
by 伊皿木蟻化(五十嵐彰) (2010-08-10 21:30) 

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