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浜田2008「弥生時代の重複住居からみる集落の動態」 [論文時評]

浜田 晋介 2008 「弥生時代の重複住居からみる集落の動態」『考古学研究』 第55巻 第1号:27-46.

切り合い遺構間の相互関係に関するブログ記事【2008-12-24】に関連して目を通したのだが、どうにも釈然としないものが残った。

「連続する細別土器型式を出土する重複する竪穴住居は、これまで集落の変遷過程のなかで連続して住居が造られた、と解釈してきた。しかし、この解釈は古い住居を直ちに埋め戻さない限り成立しない。そしてこれは現在まで未検証である。」(1.)

廃絶した住居がある。何らかの理由があって廃絶した訳である。そこに切り合って新たな住居が構築される。
「理論的には旧い住居が埋まっていなければ、新しい住居は建築できないはずである。」(28.)
なのに「連続して住居が造られた、と解釈してきた」そうである。
なぜわざわざ廃絶した住居の脇に、すぐさま新たな住居を構築しなければならないのか?
仮に隣接した場所に新たな住居を構築しなければならない理由があったとしても、なぜ旧住居の窪みをあえて埋め戻して、軟弱な地盤地に新たな住居を構築しなければならないのか?
周囲には、そんな面倒な手順を踏まずとも構築できる適地がいくらでもあるはずなのに。
訳の分からない事だらけである。

「重複した住居が時間をおかずに建替えが行われたか否かを検討するために」は、「竪穴住居に居住しなくなった(非居住)後、住居の上屋が存在していたかどうかを検討する」(28.)よりも、まずは切られた住居址覆土が人為的埋め戻しなのかそれとも自然堆積かを検討するべきではないだろうか。

しかし論を最後まで読んでも、どのような根拠があれば人為的な埋め戻しと認定するのかという根拠を確認することはできなかった。「連続して住居が造られた、と解釈してきた」人々は、どのような根拠をもって切られた住居覆土を人為的な埋め戻しと判断してきたのだろうか。
幾つかの「火災住居」の覆土断面から「壁際の三角堆積土」の存在が自然堆積の根拠とされているようだが、切られた住居覆土が「三角堆積土」を含むレンズ状堆積をしていれば、当然のことながら「連続して構築した結果である、と言う理解では解釈できないこと」(42.)は、明らかではないだろうか。

こうした議論が未だになされているということ自体が、隣接する縄紋集落研究を横目で眺めてきた身としては信じがたい。近くの弥生研究者にその辺りの事々を聞いてみたのだが、納得できる答えを得ることが出来なかった。時代別研究に自閉している「日本考古学」の弊害が露呈しているように思えて仕方がない。

「本稿は先に紹介した‘terminus post quem’<TPQ>および‘terminus ante quem’<TAQ>という考古時間の二つの原則(五十嵐2006)に基づいて、土器型式と遺構の位置関係が示す時間性の相互関係について、もう少し「つきつめて考え」、さらにはやや「立ち入った説明」をも試みたい。どのような「問題がないわけではない」すなわち「ある」のか、「遺構の編年の原則」を今一度確認しよう。」(五十嵐2008「考古時間論 -縄紋住居跡応用編-」『縄文研究の新地平(続)』:180-181.)


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TAKAGI

先に結論がある。そこに持っていくのにはこういう風に考えなければならなかった。ただそれだけの事ではないでしょうか。
by TAKAGI (2009-02-02 23:46) 

鬼の城

20年ぐらい前、縄紋時代中期の住居を堀りどの程度で「自然埋没」するのか。土地所有者が事業を一時凍結したので、了解をえて実施しました。林の中で人が土地に入れないよう、番線で括りました。

壁(遺構確認面)が20㎝あったのですが、3年たっても埋没できません。「三角堆積土」が3年たってもわずかにしかできませんし、住居中央部の覆土のなかは、落葉と腐葉土です。それも床から2・3cmです。

実際の縄紋時代ではその場所で継続して、定住があると考えましたので、定住がないこの「自然埋没」は実験としても的確性を欠けるものですから、あまり意味はないとおもいます(どうなるのかと言う疑問だけでした)。

それ以降この問題は思考停止状態です。なぜわざわざ切りあいが連続しているのか、それは集団の規制なのか、同一「炉」を使用する拡張と、「炉」の変遷を伴う拡張の違いなど、これも思考停止状態です。。

様々な住居論、集落論はそういう問題を抜きにして語られています。
by 鬼の城 (2009-02-03 11:42) 

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