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「外国人研究者がみた日本考古学」 [研究集会]

第2回 4学会合同公開講演会 「外国人研究者がみた日本考古学」
日時:2009年1月17日(土) 13時~17時
場所:明治大学駿河台校舎リバティタワー1階1011教室
主催:日本考古学協会・日本西アジア考古学会・日本中国考古学会・東南アジア考古学会

「開催趣旨
 日本考古学の学問的成果は海外にどのように発信されているのでしょうか。
 また、外国人研究者は日本考古学の世界をどのようにみているのでしょうか。
 第2回4学会合同公開講演会は、日本在住の外国人研究者の方々に外国人研究者からみた日本考古学の現状を日本語でご講演いただきます。」

「アメリカ考古学と日本考古学を考える」 佐々木 憲一
「中国人研究者のみた日本考古学 -漢墓研究と東アジア-」 黄 暁芬
「日本陶磁器研究の国際化を考える」 ニコル・ルーマニエール

「日本考古学の現状」が語られるという触れ込みなので、それなりの期待を抱いて出かけた訳なのだが・・・

「アメリカ考古学」には、グリーンランドは含まれるが、ハワイ諸島は含まれないことを確認した。
少なくとも、単なる地理的対象と当該社会が営まれる範囲とは、明確に識別されるべきことを痛感した。

しかしいまだに「発掘の精度が極めて高い」、「遺物実測(つまり観察)に多大な労力と時間をかけるため、細かい特徴を把握、抽出可能」といったことが「日本考古学の方法論」の筆頭に挙げられるというのはどうだろうか。そればかりではない、もっと様々な要素があるはずだ、いや大きな皮肉を込めて述べられているのだ等々。それにしても80年代の発掘調査で使用されていたという旧式トランシットと同じような旧態依然という印象を否めない。

同じ<もの>(墳墓・陶磁器)を見ていても、<もの>の見方にこれだけの差があるのかと思わされる発表だった。一方は豊富な文物の紹介に大半の時間が費やされ「日本考古学の現状」についての提言を聞き取ることはできなかった。もう一方は自分の研究対象に対する愛着を述べつつ如何に相互交流が重要であるか、それも専門家内部に留まることなく一般市民に対してどれだけ語っていくことができるかという視線である。

大英博物館の日本ギャラリーのテーマは、「先史から現代まで」(from Prehistory to the Present)だそうである。現在の伝統工芸美術品がいかに過去の作品から影響を受け、伝統を受け継いでいるか、「先史から現代まで」を一貫して展示することで示す試みである。
旧石器から縄紋・弥生・古墳・古代で断ち切られてしまう「日本考古学」の概説書、近現代考古学を排除することで成立している「日本考古学の現状」に対する静かでインパクトのあるアンチ・テーゼとして受け止めた。

情報の相互交流という点では、デジタル・ネットワーク、特にウェブの重要性を強調していたのにも共感した。現在、主催団体の一つで問題となっている「所蔵図書処分問題」、そこに提案されている「デジタル化の提言」あるいは「デジタル・アンケートの実施」について、関係者はどのように受け止められただろうか。

主催者挨拶そして講演発表者の経歴紹介にかなりの時間が費やされ、発表時間も膨らんだために本来25分の質疑応答が僅か5分に短縮され、100人ほどの会場からは誰一人として挙手がなく、学界最長老が指名され、次に内部関係者が総論的な感想と謝辞を述べて「無事」に終了するという、こうした会の在り方こそが「日本考古学の現状」である。


タグ:日本考古学
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アヨアン・イゴカー

>100人ほどの会場からは誰一人として挙手がなく、学界最長老が指名され、次に内部関係者が総論的な感想と謝辞を述べて「無事」に終了

公開講演会だから仕方ないのかもしれませんが、もっと緊張感のある講演会であって良さそうです。
ところで、五十嵐先生も質問されたのでしょうか?(興味本位の質問です。)
by アヨアン・イゴカー (2009-01-24 21:38) 

五十嵐彰(伊皿木蟻化)

100人ほどの会場からは(私を含めて)誰一人として挙手がなく、
by 五十嵐彰(伊皿木蟻化) (2009-01-24 22:09) 

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