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剥片相対性特殊論 [石器研究]

かつて「剥離則」として二つの原則を提示したことがあった(五十嵐2004e「剥片剥離原理」『石器づくりの実験考古学』)。
剥離第1則:ポジ面を有する石器単位である剥片とネガ面を有する石器単位である石核は、同時に生成する。
剥離第2則:重複して接合する剥片の生成には、時間差が存在する。

そして話しは、基本接合式、階層則、不在則と続く。
5年前の発表後に行われた懇親会の席上では、熱力学の法則に匹敵するものとして、大見得を切ったのだが。

今、改めて考えてみても、そこには「剥片剥離」という一見何でもない考古事象に起因する、実は極めて特殊な性格が示されているように思われるのである。
剥片という<もの>は、剥片剥離によって生じる剥離面で構成されている。剥片を構成する剥離面は、常に表面→裏面である(剥片構成面の相互関係)。剥片という<もの>は、常に旧(表面)と新(裏面)という時間的前後関係を有する面によって構成されている。

常に新・旧という面によって明瞭に構成されている<もの>。
剥片という<もの>以外にこうした<もの>があるだろうか。

<もの>は、様々なプロセスを経て製作される。切ったり、削ったり、捏ねたり、くっつけたり、貼り付けたり、穴を開けたり、塗ったり・・・
だから、それぞれをばらして、元あった姿に戻そうと思っても、そうそう容易くはいかない。
それが、可能になるのが、石器、そして剥片なのである。
プリミテイィブといえばプリミティブ、究極の単純形である。
だからこそ、そこに物事の理(ことわり)が示されている。
シンプル イズ ベスト!

だから1類接合(剥片剥離面接合)は、他の器物の一般的な接合(2類接合:折損面接合)とは性質が全く異なる、極めて特異で世にも稀な在り方なのである。
剥片と剥片をくっつける。何とも他愛無い事柄である。
しかしそこには、それだけで、くっついた剥片それぞれがこの世に生み出された前後関係が明瞭に、これ以上の確かさがないという確度で示しうるのである。

結論:剥片という<もの>は、世にある一般的な<もの>たちと違って、決定的に特殊である。


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