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考古時間論(総括4) [痕跡研究]

そして考古時間論の第3問題(重複痕跡)である。

プラス痕跡、すなわち地質学での「堆積」という重複痕跡が、「累重」である。
マイナス痕跡、すなわち「侵食」という重複痕跡が、「切り合い」である。

地質学では、「累重」という用語に、堆積重複も侵食重複も含めて用いる場合が多く、考古学においてもハリスのように「切り合い」原則を特に重視しない見方もある。日本考古学においては、「累重」という用語が「累重法則」に関連した文脈でプラス痕跡にのみ限定されて用いられ、さらには編年的な手法として「切り合い」現象が別個に着目されてきた、という学史的経緯がある。そのため、ここではプラス痕跡の「累重」に対比させて、マイナス痕跡の「切り合い」を位置づけることが適切と考える。

プラス痕跡の重複、すなわち<地層累重関係>において、層と層の境界面(層理)の形成は、層の堆積と同時になされている。
マイナス痕跡の重複、すなわち<切り合い関係>においては、マイナス痕跡の形成、すなわち面形成の後に、マイナス痕跡を埋める堆積、すなわちプラス痕跡によるマイナス痕跡の充填・埋没、次にマイナス痕跡およびそれを埋めるプラス痕跡である堆積(覆土)を切るようにして新たなマイナス痕跡の形成(面の形成)、そして再びマイナス痕跡を埋める堆積というサイクルを繰り返す。

「包む-包まれる関係」に着目して述べれば、プラス痕跡(堆積)においても、マイナス痕跡(侵食)においても、包まれるもの(遺物)は同じであるが、包むものの様相が異なる。両者ともに、同じプラス痕跡(堆積)である層に「包まれている」ことには変わりないものの、マイナス痕跡の場合には、「包まれている」プラス痕跡の堆積層の更に外側にマイナス痕跡の「面に包まれている」ということである。そもそも「包まれている」という事象自体が、層堆積(プラス痕跡)そのものなのである。

「考古時間論(3)」【2006-7-18】で示した事例に即して述べれば、包まれているものが遺物で、包んでいた新聞紙がマイナス痕跡である「垂直遺構境界面」に、あるものが新聞紙に包まれた(あるものを包んだ)という事象そのものがプラス痕跡である層堆積に相当する。


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