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考古時間論(総括2) [痕跡研究]

単純なことなのだが、今まで余り考えられてこなかった事柄がある。
あるいは、議論の対象にはならなかった、正面から問題として取り上げられることが少なかった事柄がある。

第1には、包む-包まれる関係に関する認識。
第2には、プラス痕跡とマイナス痕跡の差異。
第3には、重複痕跡(パリンプセスト)の事例。

ものたちの世界、すなわち考古資料では、この3種の様相が、複雑に絡み合いながら、痕跡形成の前後(新旧)関係が発生している。私たちは、日常の作業としてこうした痕跡関係(空間的構造)を一つ一つ解きほぐしながら、それぞれの痕跡形成の時間的諸関係を明らかにしている(佐原1985:117)。
そうした道筋の根拠を示すのが、「考古時間論」である。

まず「鈴木・林テーゼ」として位置づけた考古時間論の第1問題(包む-包まれる関係)について考える。
以下では、包まれるもの(遺物)に関わる時間表記を英小文字(t)で、包むもの(層)に関わる時間表記を英大文字(T)で表わすことにしよう。

包まれるもの(例えば遺物)の時間(製作・使用を包括する)[t1]は、常に包むもの(層、より正確には面)の(形成)時間(包まれるものに即して言えば廃棄時間)[T1]より先行する〔t1 → T1〕。
包まれるものは、常に包むもの以前に存在しなければならない。言い換えれば、包むものが包まれるものの先(前)に来ることは有り得ない。なぜなら、包んでしまえば(面が形成されれば)、その中(面の下)に入ることはできないから。もし出来るとしたら、それは「侵入」あるいは「混在」という別種の問題となる。

ある層(包むもの)の年代は、ある層に含まれる遺物(包まれるもの)の最も新しい年代を境(terminus)にして、「その時、ないしはそれ以降」を示す。
すなわち、“terminus post quem” <TPQ>である。

包むものと包まれるもの、層(面)と遺物、包含層(境界面)と包含物。


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