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考古時間論(総括1) [痕跡研究]

「発掘の場の考古学研究者は、複数の遺構相互、複数の遺物相互の垂直的位置関係(層位関係と切り合い関係)、すなわち、相互の年代関係に気をくばると同時に、それら相互の水平的位置関係にたえず注意をはらっている。」(佐原 真1985「分布論」『岩波講座 日本考古学1 研究の方法』:117)

「気をくばる」あるいは「注意をはらっている」だけでは、足りない何かがある。
あるいは、どのような内実に向けて、どのように「気をくばる」のかといった事柄についてこそ、議論を深めなければならない。

考古学が、すなわち私たちが複数のものたちを通して、その時間的前後関係を判断する(例えば、これはあれより古いとか、あれはこれより後にできたとか、すなわち「相対年代」を構築する)際に、使える手段/手法は、大きく次の3種類しかないのではないか。

1:ものとものとを比較する。すなわち、型式(typology)。
2:ものの場の状態で判断する。すなわち、層位(stratigraphy)。
3:ものとものとをくっつける。すなわち、接合(refitting)。

型式と層位の相互関係については、多くの人が論じてきたし、私も少し考えた(五十嵐2002a「型式と層位の相克」)。
接合事象については、未開拓の領域であることを示し(五十嵐1998d「考古資料の接合」、2000c「接合」)、特に石器資料については、剥片が形成される時間認識あるいは不在認識について考えた(五十嵐2004e「剥片剥離原理」)。石器接合と出土状況(五十嵐2003b「砂川F/A問題」)、あるいは<場>と<もの>の相互関係について考えた(五十嵐2004f「痕跡連鎖構造」)。
層位論と呼ばれている領域については、今まで見てきたように「切り合い」という事象を通じて遺構論あるいは遺物論とも密接な係わり合いがある、というよりそれらを包括するような事柄であることが見通せてきた。

こうした従来の私たちが無意識的に依拠してきた認識枠(型式論・層位論・遺構論・遺物論・接合論・・・)を乗り越える/打ち壊すためにも、「時間論」という新たな視点を開拓しなければならない。


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