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考古学性とは(21) [考古記録]

転がっているボンネットやライトの破片だけから、自動車メーカーから製造年式までが判る、などと考えること自体が無理なのである。
それぞれに、すなわち破片の度合い(破片度)に応じて、判明する度合いも異なるのが普通ではないだろうか。
<もの>の分類体系には、<もの>の破片性に応じた階層があって、然るべきではないか。

例えば、車体の構造が判る程度の破片であれば、車種(ワンボックスかセダンか)までが判るとか。
塗料の破片とかガラスの破片などからは、国産車か外国車といったことまで判るのかも知れない。

ところが、現在なされている考古学分類、型式論議にそうした識別レベルに応じた階層性が考慮されているものが、どれほどあるだろうか?
ということ(かっこよく言えば、階層的分類体系)を常々考えていた。

「動物骨破片の同定においてすべての資料について厳密な骨格部位と生物種が同定可能なわけではなく、小破片については属ないしは科レベルの同定で留まざるを得ない場合が多い。同様に石器の場合にも、細部調整が施されたすべての破片資料について器種が同定されると想定すること自体に無理があり、個別器種の同定が不可能な類別群を設定することで、同定不能な資料に対処する必要がある。製作痕跡によって器種同定がなされる石器群、使用痕跡のみで器種同定がなされる石器群、それ以外の原材料という大区分のもとに、個別器種に応じた階層的な石器分類体系の認識が必要である。」(五十嵐2002c「石器資料の基礎的認識と最小個体数(MNI)」『日本考古学協会第68回総会研究発表要旨』p.31)

石器だけでなく、土器でも木器でも同じである。
「加曾利E3」というレベルまで分けられる資料、「加曾利E]というレベルまでの資料、「中期後半」というレベル、「中期」、そして「縄紋土器」は確かだが、果たして・・・というレベルだってありうるだろう。それを、全て何でもかんでも小破片に至るまで「加曾利E3」レベルまで分けてあるのを見ると、専門外の眼からすれば「ほんとかな~」と思わざるを得ないのである。

こうしたレベルは、単純に対象資料が大きければ大きいほど(完形に近ければ近いほど)細かく、小さければ小さいほど(完形から遠ければ遠いほど)粗くといった「破片度」だけで、分別できるものでもないだろう。
小さくても、特徴的な胎土や器形によって、より上位のレベルまで分類が可能である、といった事例も容易に想定できる。
そして重要なのは、そうした「特徴的な・・・」といった属性の選択にこそ、その資料の分類特性が表出しているという点なのだ。

そして、そこに石器資料と土器資料との決定的な差異が現われている。

 


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