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考古学性とは(20) [考古記録]

フラグメンタリティ(fragmentality)とは、何か?
それは完全な形のもの(完形品)に視点を据えるのではなく、完全な形の部分である破片を中心に思考を組み立てること、完全な形の部分をなす<破片性>という意味を考えることである。
グローバリゼーション=globalisationに関連してフラグメンテーション=fragmentation=断片性ということが言われるが(例えばWAC2006:S15のセッションサブタイトル!)、フラグメンタリティ=fragmentality=破片性とは次元が異なる。

地中から出てくるもので、完全な形のものが「ごろごろ」出てくるということは、まずない。まずないからこそ、完全な形のものがでたら、「おーすごい」と強烈な印象が植え付けられるぐらいだ。日常的には、破片が、土器の破片(土器片)、石器の破片(石器片? 剥片片?)、瓦や茶碗のかけらが、出てくるのが当たり前である。

なのに、型式論議はいつも完全な形のものばかりを対象に論じている。型式論ばかりではない。考古資料論と呼ばれる議論で<破片性>がまともに論じられたことは未だかつてない。もちろん、ものの形を論じるのだから、部分的な、不完全な形よりも、全体の形状が分かる完全な形が俎上に上がるのも十分理解できる。しかし、全ての考古資料が、完全な形に復元されるものばかりではない。多くの資料は、というよりも殆どの資料は、どんなに時間をかけて接合しても完全な形には復元されず、部分的な形に留まる、ということも否定しがたい事実なのだ。

であるならば、そうした事実、<破片性>ということを基盤にした資料論が構築されなければならないのではないだろうか。

どのように説明したらよいだろう。
例えば、自動車の型式論議をする時に、中古車市場に並んでいる車たちを眺めて、「あれは○○社の××年式だね」と鑑定するのは、多少の知識がある人なら容易いことだろう。しかし、考古学でやっている型式認定という作業は、そういうものではない。それは、解体工場に転がっているフェンダーやテイル・ランプの欠けらを見て(あるいは事故現場でもいい)、同じような鑑定をしなければならない、ということなのだ。


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