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回想(総括-2) [捏造問題]

「プラシーボ(placebo)」という薬学用語をご存知だろうか。
日本語では、「偽薬」という訳が与えられている。
新しく開発された薬剤の効力を計るために、実際には効き目がないものが対照剤として計画的に投与され、その結果が統計的に検討される。「飲んだだけで効いてきた気がする」といった心理的な作用を排除するために行われる。
「プラシーボ効果」(placebo effect)とは、実際には薬理効果のない薬(プラシーボ)を効果ある薬と信じて服用し、その結果、実際に病状が改善してしまうことをいう。

被験者のみが「プラシーボ」と知らされずに投与されるのが、「シングル・ブラインド」である。被験者の先入観(プラシーボ効果)を排除するために行われる。
また被験者はおろか観察者に対しても、どれが「プラシーボ」であるか、どの患者が「プラシーボ」を飲んだかを知らせずになされるのが、「ダブル・ブラインド」である。これは観察者の心理的なバイアスをも排除することが目的とされる。

意図せざる大規模な「ダブル・ブラインド」が、20年以上にもわたって行われ、実際に顕著な「プラシーボ効果」が大量に発生してしまった点に、「痛み」がある。

あらゆる場所で、様々な「プラシーボ効果」が認められた。
投与された量は、ほぼ同じにも関わらず、効き目が様々に現われた場合がある。投与された量は、僅かにも関わらず、過敏な反応がみられた場合もある。
薬効がない事例においても、状況は様々である。そもそも最初から投与がなされなかった場合がある。なぜなら、投与対象ではなかったからである。あるいは、実際に薬効はあったにも関わらず、その結果を発表する手段がなかっただけ、発表する時機を逸しただけといった場合もあっただろう。
「あれは、実はプラシーボなんだよ」と明かされて、症状がより悪化してしまった例もある。あるいは明かされた後も、全く変化が認められない場合もある。

誰それがどうであったといった個別事例は、私にとっては、あまり関心がない。それは、結局は本人の体質(モラル/世界観)の問題である。
それよりも、どのような条件下で(ポジションにおいて)、どのような頻度・量で投与された場合に(情報の摂取量)、どのような薬効が発生したのか、あるいは発生しなかったのか、いつの時点からどのような症状の変化が生じたのか、それをどのように認識しているのか、どのように表現したのかが重要である。
さらに事柄が明らかになった時に、どのような対処法がなされたのかという点も。

「騙された」と「プラシーボ」を投与した人物を恨むのもいいだろう。
しかし問題は、効果があるはずもないものを飲んで、ありもしない幻覚を真面目な顔をして語ってきた私たちの生理的体性であり、重要なのはそのメカニズムを明らかにすることだ。

詳細に「プラシーボ効果」を精査しなければ、新たな臨床例に対処できない。
そして、新たな薬剤の開発もできない。

 


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