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<遺跡>問題(その3) [遺跡問題]

<遺跡>とは、何か? この疑問は、考古学の基底を構成している。「遺物や遺構の存在する場所」(小野山1985)というのが、最も一般的な定義であろう。しかし、この尤もらしい答えは、判ったようなそしてよく判らないものである。そもそも「遺物」や「遺構」が、ある意味で曖昧なものなのだから、それもやむを得まい。とにかく、「何かが在る場」が<遺跡>とされている。そして、その「何か」の在り方(存在形態)によって<遺跡>が定義されるとしたら、規定の仕方は幾通りにもなるだろう。ある人は、ある場所を<遺跡>にするし、別の人は<遺跡>にはしない。しかし、そのような曖昧で掴み所のない不確かなものでは、私達は落ち着かない。それどころか、日常の業務に支障が生じる。埋蔵文化財行政という名の日本考古学では、対象とする<遺跡>はある統一性のもとに、何等かの中心(軸・根)があり、そこから区分される区画は須らく等質なものと想定されている。いや、そうでなければならないのだ。ある空間内に秩序正しく配置される遺構群。「埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲を的確に把握し、これに基づき保護の対象となる周知の埋蔵文化財包蔵地を定め、これを資料化して国民への周知の徹底を図ることは、埋蔵文化財の保護上必要な基本的な重要事項である。」(文化庁1998) ここまでは<遺跡>であるが、ここからは<遺跡>ではない。しかし、それは私達が勝手に描く幻想あるいは希望に過ぎない。仮にある存立平面にそうした空間が成立したとしても(条理空間?)、実際の<遺跡>はそのような空間が幾重にも折り重なって成立している(「地層化」!!)。そう、私たちが日々相手にしている<遺跡>は、「モル状」ではなく、「分子状」な多様体、リゾームなのだ。「われわれは、樹木状の多様体とリゾーム状の多様体を区別することによって、これとほとんど同じことをしている。マクロな多様体とミクロな多様体。一方には外延的で分割可能でモル状の、統一可能、全体化可能、組織化可能な、意識的または前意識的な多様体。そして他方には、リビドー的、無意識的、分子的、強度(内包)的な、性質が変化することなしに分割されない粒子からなり、様々な距離からなる多様体。」(ドゥルーズ&ガタリ1994、p50)

ご承知のように、<遺跡>の存在論を見通すのにあたり、D&Gの影響が大きい。というより、<遺跡>を通して見ることで、初めて彼らの言いたいことが見えてきたというべきか。それでも、全体の僅かな部分に過ぎないけど。


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