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『史学雑誌』 [総論]

第2考古学において「レヴュー論」という部門は、重要な一角を占めている。今を去ること2年前の初夏、「レヴュー論」について集中的に考察したことがあった。そこでは、「日本考古学三大レヴュー」として「ジャーナル動向」・「史雑回顧と展望」・「協会年報」の三者をあげ【2006-04-10】、特に「ジャーナル動向」については「動向の動向」として変遷とその意味するところを確認した【2006-06-08】~【2006-06-16】。さらに総括の文章を記し【2006-06-20】、私的「ベスト オブ レヴュー」も挙げておいた【2006-06-21】。

そんな中で、『史学雑誌』の「回顧と展望」は、今でも一番気になるレヴューなのである。それは「ジャーナル動向」や「協会年報」よりも文量が多いし、何よりも型にはまっていない、それだけ評者の個性が比較的出やすいといった点にある。
だが今年の「回顧と展望」(2007年の歴史学界)『史学雑誌』第117編 第5号(史学会)において、最も印象に残った文章は、「日本 考古 一 旧石器時代」(安斎正人)でも、「二 縄文時代」(長田友也)でも、「三 弥生時代」(田尻義了)でも、「四 古墳時代」(久住猛雄)でも、「五 歴史時代」(成瀬晃司)でも、はたまた「西アジア・北アフリカ 古代オリエント 一」(門脇誠二)でもなかった。

それは・・・

「この『史学雑誌』の「回顧と展望」号の目次を見てほしい。巻頭の総説と歴史理論の数頁を除けば、あとはすべてが日本、ヨーロッパ、それ以外の「東洋」諸地域に区分され、その多くはさらに時代別に分けられている。地域を縦軸、時代を横軸にとった「グリッド」ごとに研究者の専門領域があることを前提にした構成である。研究者の多くは、グリッドの中でさらに細分化された研究対象について、それまでの長い研究史をふまえて細かい実証論文を書くことになる。このような作業が若い意欲あふれる学生にどれだけ魅力的に映るだろうか。」(「歴史理論」羽田 正:8.)

これは、「日本考古学」のレヴュー論として、「ジャーナル動向」を「時代そして地域タイプ」に、「回顧と展望」を「時代ごとタイプ」に、「協会年報」を「時代・地域並列タイプ」に位置づけ、いづれも「時空間で区切られた枠組みが基調となっている」【2006-04-10】としたエントリー記事と全く「軌を一にしている」と評せざるを得ない。

「グリッド」ごとの第1考古学。
「グリッド」の中の日本考古学。


タグ:レヴュー論
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