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レンフルー&バーン(第9章) [全方位書評]

第9章 人はどのように交流していたのか ―交易と交換 :357-392.
9. What Contact Did They Have?  trade and exchange.

「これまでの世代の研究者たちは、異なる文化の間に見られる類似性を、接触やアイディアの流れや「伝播」の証拠と見なすことにまったく躊躇しなかった。そうした傾向への反動として、一部ではものごとの独自起源が強調され、隣人の間での相互交流の重要性が過小評価される傾向も生まれた。現在は、こうした交流について再考すべき時が熟していると言えよう。」(357.)

交流(contact)、交換(exchange)、交易(trade)の相互関係が述べられる。交換は「すべての人間同士の接触」という「より広い意味」で、交易はその中の「物質的なものや商品」の交換を意味する。
またある社会の内部でなされる「域内交換」に対して、ある社会と別の社会の間でなされる「域外交換」が区別され、後者に対して「交易」という用語が用いられるという(358.)

左手には、エマニュエル・ウォーラーステイン、カール・ポランニー、マルセル・モース、ブロニスロウ・マリノフスキー、ジョージ・ドルトン。
右手には、重鉱物分析、微量元素分析、発光分光分析法(OES)、誘導結合高周波プラズマ原子発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合高周波プラズマ質量分光分析法(ICP-MS)、中性子放射化分析法(NAA)、原子吸光分光分析法(AAS)、蛍光X線分析法(XRF)、電子プロープ微小分析法(SEM)、プロトン誘導X線放射分析法(PIXE)、素粒子誘導ガンマ線放射分析法(PIGME)、同位体比分析法、X線回折分析法、赤外線吸光分光分析法、正極ルミネッセンス法、ラーマン発光分析法、フィッション=トラック年代法、レーザー核融合アルゴン=アルゴン年代法などなど。

これでは、いくら時間があっても足りない。そしてこれらは、ある特殊分野の専門家だけに求められている特殊な知識なのではなく、考古学の入門者全てに求められている最低限の知識なのである。アメリカであろうと、中国であろうと、日本であろうと。
すなわち、考古学という学問に携わっている限り、誰であろうと、たとえ専門領域が、関東南部の縄紋中期末葉の敷石住居であろうと、九州系横穴式石室の伝播であろうと、近世高田徳利の型式変遷であろうと、最低限の知識として弁えておくべき事柄なのである。

「交換システムの解釈には、そこでどのようなメカニズムが働いていたかを考えておく必要がある。それは互酬交換であったか、再分配であったか、それとも市場交換であったのだろうか。あるひとつの完全な相互交流領域のの中で、それぞれの社会は物資とともにアイディアや他の情報を交換していたことも忘れてはならない。」(391.)


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