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レンフルー&バーン(第8章) [全方位書評]

第8章 人はどのように道具を作り使ったのか ―技術 :317-356.
8. How Did They Make and Use Tools?  Technology

「今日では考古学者は特定の道具を編年の指標として過剰に信頼することはないものの、道具は人類が外部世界と関わる基本的な手段であったし、今もそうであり続けていることに変わりはない。 (中略) この章では、より根本的で重要な2つの課題を設定する。すなわち、考古学の遺物がどうやって作られたのか、そしてそれらは何に使用されたのかである。」(317.)

「はたして人工物なのか」という曙石器(エオリス)問題は、日本だけではなく、世界的な問題である(山岡2005【06-06-19】)。アメリカのカリコ・ヒル(20万年)、ブラジルのペドラ・フラーダ(3万年)、パキスタンのポトワール(190万年)といった流れに、岡村リスト【07-10-15】の星野(No.44)、加生沢(No.46)、早水台(No.48)といった名前も連なるだろう。

石器製作技術研究に関連して、シェーン・オペラトワール(製作工程復元)が述べられた後に、以下のように記される。
「この他に石器製作工程を推定する方法として、基本的な2つのアプローチがある。すなわち、石器の復元製作実験と接合研究である。」(327.)

「打ち割り行為によって生じる剥片相互あるいは剥片と石核を接合するという1類接合から読み取れることは、どのような事柄なのか。剥離物の重複である接合個体は何を物語っており、われわれはそれをどのように記述すればよいのか。 (中略) 「もの」(剥片と石核)の相互関係からふたたび「もの」を生じさせた打ち割り行為の時間的前後関係を導き出す際に必要となる基礎的な概念を、「剥片剥離原理」として提示する。」(五十嵐2004e「剥片剥離原理」『石器づくりの実験考古学』:23.)
というのが、学生時代以来細々と続けてきた「石器の復元製作実験と接合研究」の末にたどり着いた結論であった。

そして「接合研究と同様に、使用痕研究の歴史は19世紀にさかのぼる。」(329.)として、セミョーノフ、トリンガム、キーリー、岡崎らの研究が紹介される。

「「使用痕(跡)」という言葉を考えるには、「使用」と「痕跡」および両者の相互関係について考えなければならない。「使用」すなわち「ものを使う」ということを考えるには、「製作」すなわち「ものを作る」ということを考えなければならない。「痕跡」を媒介とした使用(加工具)と製作(被加工物)の連鎖構造を検討した。」(五十嵐2003d「「使用」の位相」『古代』第113号:3.)
というのが、それまでは敬して遠ざかっていた「使用痕跡研究」に踏み込まざるを得なくなった時に、無い知恵を振り絞って考えた「前提的諸問題」であった。

いずれもレンフルー&バーンに、そうした視点に基づく記述は認められない。
そして共に不満なのは、「接合研究」も「使用痕跡研究」も石器という資料に限定された言及に止まっている点である。しかし接合も使用痕跡も石器資料に止まる現象ではない。その他の自然素材である骨・角・貝・皮、あるいは木製品、人工合成物である土器、ガラス、金属などにも該当する<もの>資料全般にわたる普遍的な事象であるはずである。
こうした視点から汲むべき知見は、まだまだ数多いだろう。
ある共通した事象を通じた異素材の特性をあぶり出すこと。
今後の課題である。


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