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#14:20071017 [セミナー]

「日本考古学の意味機構」と題して、この8月にある論集に投稿した文章(印刷中)を基に発表した。第2考古学という立場に関するある種の総決算のようなものである。

「日本考古学」は、なぜ捏造問題を引き起こしたのか?
それには、「日本考古学」の特質なるものを明らかにしなければならない。
それでは、「日本考古学」に内在する根本的な課題とは何か?

こんなことを、捏造事件が明らかになって以来、少しずつ考えてきた。
最初は、「近現代考古学」と「遺跡問題」そして「埋文制度」との関わり合いについて簡単に記した(五十嵐2000a「近現代考古学」『用語解説 現代考古学の方法と理論Ⅰ』)。さらに「近現代考古学」をいかに認識するかという点から「遺跡問題」と「先史中心」という考え方が「日本考古学」に根強く存在することをやや詳しく論じた(五十嵐2004b「近現代考古学認識論」『時空をこえた対話』)。そこでは「捏造問題」を招いた根本的な原因として、「先史中心」と「発見第一」という2つの考え方が作用していたことを示した。さらに「遺跡問題」に焦点を当てて「先史中心」が「近現代考古学」認識のポイントであり、それは現行の「埋文制度」と不可分のものであることを指摘した(五十嵐2007a「<遺跡>問題」『近世・近現代考古学入門』【07-10-05】参照)。またブログにおける様々な議論を通じて、「編年基盤」という考え方が<もの>に対する密着思考と共に「先史中心」と通底していることも思い知らされた(五十嵐印刷中「日本考古学の意味機構」)。
このようにして、時空間の枠組みを基調とする「第1考古学」は、「先史中心」・「発見第一」・「編年基盤」という強固なトライアングルを形成していることが明らかになってきた。さらに「近現代考古学」と「捏造問題」という一見、何の関係もなさそうに見える両者が、実は「先史中心」を媒介としてあるいは「第1考古学」という伝統的な「日本考古学」が形成するトライアングルを介在して、まるで合わせ鏡のような位置関係にあることも認識できた。こうした事柄のあらゆる場面において関わる中心的な課題が「遺跡問題」であり、これは「埋文制度」と表裏一体の「日本考古学」を維持している致命点でもある、というのがとりあえずの結論である。

こうしたキーワード相互の諸関係を、ああでもない、こうでもないといじくっていたら、こんな「曼陀羅図」が出来上がった。

 

曼陀羅と言えば、南方曼陀羅である。
『太陽』第352号(特集 奇想天外な巨人 南方熊楠、1990年11月号:22-23.)に、同じような「十二支考腹構」が掲載されている。とても及びもつかないけれど。


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五十嵐彰

次回の2AS#15は、11月14日(水)です。日本考古学史の底流、すなわち今まで表面的に語られなかった戦後の動きを、きっちりと語っていただく予定です。皆様の積極的な参加をお待ちしております。
by 五十嵐彰 (2007-10-19 22:15) 

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