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レンフルー&バーン(第4章) [全方位書評]

第4章:いつ ―年代測定法と編年 :121-174.
4 When?  Dating Methods and Chronology

「考古学の年代測定法には、一般に大きな問題が2つあるが、それは技術そのものに関することではない。ひとつはコンテクストの確実性、すなわち年代を測定したコンテクストと試料が間違いなく関連しているかどうかという問題で、もうひとつは、新しい(もしくは古い)物質が付着することによって起きる試料汚染の問題である。」(121.)

本書末尾(578.)を飾る日本列島における幻の前期旧石器は、まさにこの「コンテクストの確実性」に関わる問題であった。様々に行われた年代測定試料とコンテクストである石器群について、確実性が確保されなかったという点に尽きる。

「攪乱を受けていない層から出土した遺物は、単に「それより後の年代(上限年代)」を決定するだけである。つまり、別の言い方をするならば、その層はコインに記された年代よりも古くはならない、すなわち、その年代よりも新しいということである。」(135.)

これだけでは、なんのことやらよく判らない。

Its inclusion within a sealed archaeological deposit establishes simply a terminus post quem ("date after which"): in other words, the deposit can be no earlier than the date on the coin - but it could be later than the date.

なんだ、<TPQ>のことなのか。そして

「年代が明らかなエジプトのコンテクストからその土器が出土したことにより、ギリシアにおけるそのタイプの土器生産についての「それより前の年代(下限年代)」となる。つまりそれは、アマルナのコンテクストよりも新しくはならないということである。」

当然、こちらは<TAQ>だろう。

Its presence in a well-dated Egyptian context establishes a terminus ante quem ("date before which") for the manufacture in Greece of that pottery: it cannot be more recent than the Amarna context.

相対年代法では、層位学(122-124.)、型式学(124-126.)、セリエーション(126-128.)、言語年代法(128-129.)、深海コア(130.)、花粉年代法(131)、動物相年代法(132.)とくる。そして絶対年代法として、暦編年(133-136.)、年縞(136.)、年輪年代法(137-140.)、放射性炭素法(141-148.)、カリウム・アルゴン法(149.)、ウラン系列法(149151.)、フィッション・トラック法(152-153.)、熱ルミネッセンス法(154-156.)、光励起ルミネッセンス法(156-158.)、電子スピン共鳴法(158-159.)、黒曜石水和法(160.)、アミノ酸ラセミ化法(160-161.)、陽イオン比法(161-162.)、塩素36年代法(162.)、考古地磁気法(162-163.)、火山灰編年(164-166.)となる。

ここでしっかりと認識しなくてはならないのは、私たちに馴染み深い、というより編年と言えば即モンテリウス由来の型式学(タイポロジー)となるそれに与えられている割合というのが、「年代測定法と編年」という第4章全体54頁の僅か2頁ほど(セリエーションを入れても4頁弱)に過ぎないということである(更に言えば、時間軸に関わる「年代測定法と編年」に与えられた割合が本書580頁の中の僅か54頁であるということを踏まえた上で)。いいとか悪いとかではなく、レンフルーとバーンの価値判断の中で、編年という考古学的作業のさらに型式という手法が占める比重というのは、その程度であるということを確認することが大切である。
繰り返す。そのことが、いいとか悪いとかではないのである。


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