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新地平4 [考古記録]

シンポジウム 縄文集落研究の新地平4
-竪穴住居・集落調査のリサーチデザイン-
2006年10月14日(土)
セツルメント研究会
駒澤大学(東京都世田谷区)
「縄文時代中期の集落およびその基礎となる竪穴住居跡調査・研究方法について、最近の調査例からのケーススタディを紹介するとともに、近年盛り上がっている盛土研究とか階層性とかを別として、やや停滞気味の縄文集落論・環状集落論にカツをいれ、調査現場からの縄文集落研究を展望する。全点ドット調査・微細遺物回収に代表される遺漏なき情報収集と、同時存在遺構把握なくして明日はなし。」

山梨の前哨戦である。
まぁ、敵情というか現状を視察に出掛けた訳である。

遺構論および考古時間論的観点からは、同時存在遺構の把握の仕方、すなわちどのようにして「同じ時間に存在した穴ぼこであること」を証明するのか、ということが私の個人的な関心点となる。
「同時」という場合に、それはどの程度の同時なのか。
遺構同士の同時と遺物同士の同時、そして遺構と遺物の同時もまた、それぞれ性格が異なってくるだろう。
同じ遺構同士の同時性を問題にするときでも、住居同士の同時と、墓同士の同時、あるいは住居と墓同士の同時、さらには集落と水場に至る道の同時では、それぞれ様相が異なってくるだろう。
例えば、住居跡覆土/埋土と墓穴覆土/埋土から出土した破片同士が接合した場合に、そのことで、二つの<穴ぼこ>が同時に存在したことを実証したことになるだろうか?
そうはいかないだろう。なぜなら、竪穴住居の覆土は住居の使用後・廃絶時に堆積したものであるのに対して、墓穴の覆土は墓の製作時に堆積したものであるからである。その場合、両者の使用時間が重複すること、同時に存在することは有り得ない。

果たして、複数の<穴ぼこ>が同時に存在したことを、考古学的に証明するのに、どのような方策が考えられるだろうか。
1.ポンペイ・黒井峯仮説:ある瞬時に生じた大規模な堆積によって同じように被覆されている場合。
2.245-248事例:ある穴から出た破片とある穴から出た破片が接合した場合。理想的には、構築部材同士の接合(炉石など)。
3.構築部材、例えば炉体土器型式の一致:ある住居跡に構築された土器細別型式が一致している場合。
4.遺構覆土/埋土に含まれる同一紀年銘資料、あるいは年代が一致する測定資料。
5.住居など構築部材の放射性炭素年代の一致、あるいは構築部材に記された同一紀年銘。
6.同一個人が特定された異なる遺構の構築痕跡。

それぞれは、確証の度合いがそれぞれ異なる。そして、全て、レア・ケース、滅多に出くわすことがない事例と言える。私たちが、「同時存在」とみなしているのは、実は、確実に同時ではないとする事例を除外していった残余に対して、状況証拠などを加味しつつなされた、ある意味で「同時と思われる」といった程度の曖昧な「同時存在遺構」なのではないのか。
ということは、一般的には、私たちは真に「同時存在遺構」を確認する普遍的で確実な手法を有していない、ということになる。
ということは、私たちに「明日はない」ということになりはしないか。

考古学的な考え方、私たちが当たり前、当然のこととしている事柄を改めて考えてみよう、というのが、「第2考古学」的精神である。
そこでは、確実に言えることと、可能性として言いうることを峻別しなければならない。
考古資料とは、あるもの同士の関係について、「同じ時間に存在した」=同時存在である、ということを述べるよりも、「異なる時間に存在した」=異時存在である、ということを示すほうがより確実である、より適しているのではないか。

ある<穴ぼこ>に、ある遺物が含まれているとしよう。
<穴ぼこ>を形成する「マイナス面」、<穴ぼこ>を埋めている「プラス面」、そして遺物の3者の時間的関係で、確実に言えることと言えないことを峻別していかなければならない。
<穴ぼこ>を掘らないと<穴ぼこ>は、埋まらない。だから「マイナス面」の後に「プラス面」がくる。マイナス面→プラス面、すなわちTAQ
遺物が埋まって、プラス面が形成される。遺物の廃絶とプラス面の形成は、同時ないしはそれ以降となる、すなわちTPQ
では、遺物とマイナス面、すなわち覆土中遺物と遺構の関係は、どうなるだろうか。
そこが、不確定なのである。

ということを、もう少し詳しく山梨で説明するつもりである。
ということを、元三越迎賓館の格調ある懇親会の席上で少し述べた。


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