SSブログ

レンフルー&バーン(第13章) [全方位書評]

第Ⅲ部 考古学の世界 The World of Archaeoloy
第13章 考古学の実践 ―5つの実践 :507-546.
13 Archaeology in Action.

「本書で私たちは、考古学者によって用いられている様々な方法やアイディアについて検討を加えてきた。何度も強調してきたように、考古学の歴史とは未知なるものへのたゆまざる探索の物語であり、その物語が進化してゆく中で、単なるフィールドでの新発見よりも、新たな課題を見出しそれに対して新たな洞察を得ることの方が重要になったのである。考古学が学問として成り立ってゆくためには、興味深く重要な課題を見つけ出し、それに対する最も効果的な解答法を引き出す能力が求められているのである。」(507.)

として、5つのケース・スタディが紹介されている。

1.メキシコ南部・オアハカ渓谷:ザポテカ国家の起源と交流、食性、社会組織と労働の分化、なぜ変化したのか、キャッチメントの領域と交易、彼らは何を考え、どのような人びとであったのか
2.フロリダ南西部・カルーサ文化:複雑化した狩猟採集民社会、古気候と季節性、人びとはどのように交流していたのか、社会組織と信仰
3.オーストラリア北部・カカドゥ国立公園:狩猟採集民の中での研究、幅広い景観の中での描写、環境と経済の変化
4.タイ中央部・コック・パノム・ディ:東南アジアにおける稲作農耕の起源、社会組織、環境、食性、物事はなぜ変化したのか
5.イギリス・ヨーク:市民へ開かれた考古学、踏査、記録、保存、都市発展の各時期、技術と交易、認知的要素、過去は誰のものか

ここで紹介されている5つの事例、そしてこうした事例を採用したレンフルー&バーンが示した指向性と180°全く異なる方向を示す事例がある。

07年 考古学総括 ロマン 時と海越え
金色に輝く青銅器、文字が書かれた歴史の重要史料・木簡の数々、西洋のワインボトル……。今年も全国各地で、興味深い考古学上の発見が相次いだ。奈良県明日香村のキトラ古墳の玄武図公開などもあり、その楽しさが印象付けられた。しかし同時に無念さが一層募った。同村・高松塚古墳の解体などである。皆で率直に事態を直視し、教訓を生かしていく努力が問われている。
「太閤堤」の護岸跡75㍍/呪術用?最古の木製仮面/末盧国王墓を再確認/銅鐸再利用の工房 私の注目 10遺跡 青銅器めぐり迫られる再考 先人の生活見えた「宝石箱」」
(『朝日新聞』2007年12月24日)

たとえレンフルー&バーンで採用された事例と同質の調査が2007年の日本でなされたとしても、「07年 考古学総括」には取り上げられることはないだろう。そしてたとえ「私の注目 10遺跡」がレンフルー&バーンの耳目に入ったとしても、本章の「考古学の実践」に採用されることはないだろう。

繰り返そう。
「単なるフィールドでの新発見よりも、新たな課題を見出しそれに対して新たな洞察を得ることの方が重要になったのである。」

「15世紀の教会を改装した考古学資料センターでは、一般の人々や学校の生徒たちが、考古学者がどのように遺物を分類するのかを知ったり、実際に研究している姿を見ることができる。これは、市民を考古学に巻き込んでいくための、トラストによる革新的なプログラムである」(545.)

身近な「埋蔵文化財センター」という名の日本における事例との温度差に感慨深いものがある。

そして・・・

「いくつかの時代が重なる文化層を発掘している考古学者は、もともとあるひとつの時代に興味をもっていて、それも古い時代の場合が多い。しかしだからといって、十分な記録を残さずに後の時代の文化層をフルドーザーで取り去ってしまう権利はないのである。」(507.)


タグ:発見
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0